もっと楽しく

木梨憲武

2013.12.19 THU

ロングインタビュー


大久保篤志=スタイリング 北 一騎(permanent)=ヘア&メイク 武田篤典(steam)=文 稲…
役作りはしたけれど
ロープーにまかせよう

「『ファインディング・ニモ』のときは1週間かかったんだけど、今回はセリフと口の動きを合わせなくていいので、1日で録れるかなと思ったんですけど、声潰しちゃって。氷に落ちるシーンとか、やたら力の入るところが続いたもんでね」

木梨憲武は映画『ウォーキングwithダイナソー』で主人公のパキリノサウルス、パッチを演じている。

この映画は、『アース』『ライフ』などのネイチャードキュメンタリーのイギリスBBC EARTH フィルムズと『アバター』の20世紀フォックスがタッグを組んだ大作。

BBCの撮った、アシカを海面で捕食するシャチとか、象の大群の行進とかの超キレイな映像がありますよね? いわばアレの恐竜版。CGであのレベルを再現しつつ、きちんとドラマがあるのだ。カラダの小さなパッチが恋をし、成長し、群れの中で立派な“漢”になっていく。ハリウッドの王道青春ドラマのような物語がドキュメンタリータッチと違和感なく展開する。

「セリフと口を合わさない」のはその一環で、画面の中ではごく普通に恐竜たちがエサを食べたり逃げたり戦ったりしているところに、心の声のようにしてセリフが乗るのだ。

で、ノリさん役作りをした。

「この人はどういう声かなって、一応家で考えてね。で、“んボクぅ~、パッチだけどぉォォ~”みたいなのとか、“つぅまんぬぁいなあぁ~。ぅおなかすぅいたなあぁ~”みたいなのとか用意して、声優さんになりきるつもりでスタジオに入ったんですけど、始めて15秒ぐらいで“あ、それ大丈夫ですんで~”って。それで普通にやって、サブに控えたロープーのみなさんの顔色をチラッと窺うと“そうそう、それそれ”と」

“んボクぅ~”は『Gu-Guガンモ』っぽい感じ。“つぅまんぬぁいなあ”の方は『くまのプーさん』風。

「ニモのときもそうだったんですけど、(まだ誰もアフレコしていない段階で)英語のセリフを聞きながら僕だけが日本語でしゃべったんですよ。それが完成したときには、見事にいろんな人の声がクロスして掛け合いになってて。うわうわうわ~助かってる助かってる~って思ったから。ミックスするロープーにまかせておけば、すばらしく仕上げてくれます。楽しみです」

この作品を25歳から34歳男子におすすめしてもらうと…。

「映像もアバターチームのカメラを使用した3D最新作で、その職人さんたちが公開のギリギリまでいじってるということはそりゃもうスゴイでしょう。25歳のアニキたちは、そういうロープーたちが寄ってたかって作った仕事という点で注目してもいいでしょう。それがストーリーとマッチしてまんまとうまくいって、これ木梨いらなくね? 山寺さんのほうがよくね? もしかしたらクリカンが“おーい、俺パッチ”ってやったほうがよくね? ってなると困るけど。最近芸能の方が結構たくさんアニメの声をやってらっしゃいますが、その並びの一員として、何点ぐらいなんだろうってのは仕事として気になりますね。“やっぱり声優さんがよかったんじゃないか”って思われなければいいです」

とても殊勝な姿勢なので「本心ですか?」と尋ねると「うん(笑)」。

「25のときは気にしなかったけど、倍ぐらいの歳になっちゃったんで。とはいっても、“気にしてる”ってほど気にしてないです。全然気にしてないわけではない…っていうアピールですね、自分自身の。なんか年取るごとに、今まで見えなかったものが見えたり脳が働いたりすることになるんでしょうね」

基本誰かに聞いて
あけっぴろげでいく

木梨憲武、現在51歳。

傍目には、めちゃくちゃ楽しそうだ。 以前このコーナーでインタビューした石橋貴明は、とんねるずの面白さは木梨だと言った。自由に動きまわり、予想外のことをやってのけるプレイヤーである、と。

マイケル・ジャクソンのパロディやCHARAの破壊的なモノマネに笑わされた。年を経るたびその破壊力と自由さに磨きがかかった。好きなコトをどんどんやり始めた。絵を描き、個展をやり、ソロライブを開き、『木梨サイクル』でTシャツをデザインし、スタイリスト・大久保篤志氏とのコラボでかなりナイスなボタンダウンシャツをリリース。ハットにワイドめなパンツにタイトなトップスにタイドアップという、独自のスタイルも確立。トータルで木梨憲武、「カッコいい」の域。でも“どや感”はなく、ヘラヘラと楽しんでるように見える。

どうしたら楽しく生きられるのか尋ねると、「大きな質問だ」と笑う。

「…なんていうのかな、ゼロから何かを作るときは、これなんじゃねえかなっていう答えを自分で決定して、それをガチガチに目指していくとパンパンになっちゃう。これじゃなきゃヤダってことは、僕、ひとつもなくてね。…その筋のロープーたちが正解だって言うところに、基本ついていけばまあ間違いがないでしょうと。こういう映画の仕事もそうですよね。そのなかで自分で自信あるところに関してだけ“こっちじゃないの?”って言う。…結構このパターンって何に置き換えても同じなんですよね。テレビもそうだし、テーマ決めて絵を描くときも、違うジャンルの仕事をやるときも、遊んでてもそうだな。まあ僕、そもそも団体好きなんで、このやり方で楽しんで来られたし、結果正しい道に来られた気がしますよね」

「…でもまあ」と続ける。

「こういうときって、字面の威力があるからね。テーマを一言にまとめるでしょ。読んでる人が、大きい字で書いてあるからってそのとおりいこうとするのは、大丈夫かな…」

で、今のいい感じの話をなかったことにするかのように「まあ、あけっぴろげ攻撃ですよ」と言った。

「あけっぴろげ過ぎると、これほど楽なことはないですよ。たとえば今日会った人にいきなりあけっぴろげるのって頭悪そうじゃない?(笑) そんなあけっぴろげ攻撃。仲間が増えると『あけっぴろげフェア』が開かれるね、チューリップ開いたまんまの確変入っちゃった状態で、しばらく垂れ流しっぱなし(笑)」

で、野望を尋ねると…。

「今も大して出てないですけど、やりたくない仕事はやんないでしょうね。よく知ってる人から頼まれたらやりますけど。で、将来的には、やりたくない仕事ですらやっていけるようなデカイ人間になりたい。そこにも入っていくようなやり口を、今後50代で追っかけていければ」

普段から考えてることなのだろうか。あるいは、今聞かれたから?

「まあそれでも面白いなって、ちょっとは思ってました(笑)。今ね“いいよ、そうそう、この感じがいいね”っていうリズムで結構来てるんですけど、これで決定はしないでおこうと。だって、50代半ばから60代の尊敬する先輩たちを見ていると、なんかもっと楽しそうなんで」

取材前日、奥さまの安田成美さんがテレビ東京の『ソロモン流』に出演していた話をすると、「あれ観て“もう俺は成美さんに従っていくしかない”と決定づけられました」。

「成美さん」と呼ぶのだ。彼女もまた何らかのロープーなのか。

「成美さんの場合は、俺だけじゃなくて、家族全員、あと仕事含めた、受け持ち範囲のひろーいロープーですね。俺が自分で考えて“これだろう!”って言ったとき“違うでしょ”“そうですね”っていう…。こっちがとっちらかると修正してくれるのが成美さんです!」

ただ、とんねるずとしてのロープーはたぶん石橋貴明…。

「考えてんじゃないですか、石橋さんは。ちょうど25ぐらいのときですよ。フジテレビの社長の部屋に石橋貴明が勝手に入っていって、“ゴールデンタイムの番組やらせてください”って言ったのは。社長もズカズカ来た青年を見て“おう、視聴率何%取る?”“30です”“じゃあやらせてやる”って。そんなふうに自信とハッタリ持ってものを決められるヤツが、今の25歳のアニキたちのなかにもいれば面白いよね」

そこでお時間。最後にノリさん、こんなことを言ってニッと笑った。

「あとは書く方のロープーにまかせますんで、どうぞよろしく」

1962年、東京生まれ。帝京高校の同級生・石橋貴明ととんねるずを結成。82年NTV『お笑いスター誕生』でグランプリに。『オールナイトフジ』などで一気に若者のカリスマ的な存在に。お笑い芸人の立ち位置を変え、『とんねるずのみなさんのおかげです』『ねるとん紅鯨団』などではカルチャーにも影響を与えてきた。ソロでは、94年から絵画展をスタート。04年から単独ライブも行っている。声優としては前作『ファインディング・ニモ』でマーリンを演じ、作品は超大ヒット。父・木梨作三の自転車店『木梨サイクル』では、素敵なオリジナルアイテムも多数発売中。オフィシャルサイトはwww.kinashi-cycle.com

大久保篤志=スタイリング
北 一騎(permanent)=ヘア&メイク
武田篤典(steam)=文
稲田 平=写真

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