新成人に伝えたい、本選びのコツ

福岡伸一氏、20歳からの読書を語る

2014.01.09 THU


福岡さんは生物学者として専門分野で論文を発表しながら、一般向け著作や翻訳にも携わる。読書好きで、斜め読みを含めると年間200冊を読むそう
「若いうちこそ本を読め」――なんてセリフを耳にすることは多い。でも、読書が苦手な場合、どんな本を読んだらよいのか? と頭を抱えてしまうことも…。そもそも、いま社会で活躍している大人たちは20歳のころ、どんな本を読んでいたのだろうか? 読書家で『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)の著者、福岡伸一さんに聞いてみた。

「私が20歳になったのは1970年代末。明るい80年代が幕を上げようとする前夜で、大きく時代が切り替わる風潮を肌で感じていました。ちょうどその頃、村上春樹さんがデビューをし、なにげなく読んでみたのです。『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』と読み進めるうちに、新しい文体や作品に流れる軽やかさ、不思議な非リアリズムに衝撃を受け、あっという間に引き込まれました。以来、彼の作品を同時代の物語として、欠かさず読み続けています」

同じ時代を生きる作家の作品を読み続けることで、福岡さんはどんな気づきがあったのでしょう?

「村上作品の場合、『デタッチメント(関わらないこと)からコミットメント(関わること)への変遷』が大きなテーマでした。その物語を描いている作家が、自分の生きている時代とどう向き合っていこうとしているのか。小説を読むことで、作家自身の問いかけが手に取るようにわかります。それは、そのまま読者である私への問いかけでもあるからです」

なるほど。時代の変化や作家自身の成長は、作品にも表れる。それをリアルタイムで読み継いでいけるって、貴重な経験ですね。最後に、これからの未来を担う新成人に、読書を楽しむアドバイスをお願いします。

「私が村上作品と出合ったように、自分と同じ時代を生き並走してくれる新しい本の書き手を見つけてほしいと思います。その本の書き手の作品を読み続け、ともに成長していくのも読書の醍醐味ではないでしょうか」

戦後最年少で直木賞を受賞した朝井リョウさんや、2012年に第55回群像新人文学賞を受賞した片瀬チヲルさんなど、20代の作家も頭角を現し始めている。同年代の作家の作品を手に取り、お気に入りの作家とともに歳を取っていくのも面白そうだ。 
(南澤悠佳/ノオト)

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