あの大隈重信も愛好家だった!

変わりダネ園芸品種「変化朝顔」

2014.07.16 WED


采咲の系統で「糸柳」と呼ばれる変化朝顔。変化朝顔には、獅子、采咲、縮緬のほかにも、石畳、渦小人、しだれなど、様々な種類があるという 画像提供:変化朝顔研究会
夏の風物詩といえば朝顔。その朝顔に「変化朝顔」と呼ばれるものがあるのをご存じだろうか?

「“朝顔”とひと口にいいますが、実は一般に流通しているものだけをとっても木立朝顔、つばめ朝顔、桔梗(ききょう)朝顔など、さまざまな品種があります。朝顔の世界は奥深く、さらに商業ベースに乗ることのない『変化朝顔』という特殊な品種が趣味家の間で愛でられているんですよ」

そう教えてくれたのは、変化朝顔を研究している日本で唯一の民間団体、変化朝顔研究会副会長の伊藤重和さん。

「変化朝顔は、突然変異によって花びらや葉っぱが通常ではない形に変化したもの。いくつか系統があるのですが、花だけでみれば、ライオンのたてがみのような『獅子(しし)』、武将が持つ采配のように花びらが細かく分かれた『采咲(さいざき)』、葉に細かいしわがある『縮緬(ちりめん)』の3系統に大きく分かれます」(伊藤さん)

現代人にはなじみのない変化朝顔だが、実は200年以上も日本で親しまれてきた文化なのだそう。

「これまでに3度、ブームがあったといわれています。1番初めは文化文政の頃。将軍から、蘭学者、大商人、武士、一般庶民に至るまで、栽培を楽しんでいたそうです」(同)

その後、大火や幕府からの締め付けなどによりブームは下火になるものの、安政の時代に第2次ブームが起こる。

「江戸っ子は変わったもの、目新しいものを好む気質がありますから、変化朝顔は人気だったのでしょう。当時は朝顔師という仕事があって、展示会を開いて種子を売ったり、変化朝顔の“番付”まで作っていました。浮世絵のモチーフになるくらい人気の商売だったんですよ」(同)

第3次ブームは明治から昭和初期にかけて。当時の文献によると、大隈重信をはじめ、政界の中心人物にも親しまれていたという。

「変化朝顔の面白さは、突然変異した株の交配を繰り返していくことで、自分が思い浮かべた朝顔を現実に育てられるところです。必要なものは、根気だけ。交配にはピンセットが必要ですが、小学校の理科の知識があれば十分ですから、私たちの研究会には小学生の会員もいるんですよ」(同)

ちなみに、変化朝顔を購入するとなると、お値段はどのくらい?

「現在は営利目的の栽培がされておらず、値段というものが存在しません。文献に残っている中で一番高価な変化朝顔は、幕末の頃の47両です。1両はお米1石分(約150kg)ですから、約7トンのお米が買える金額です。仮に「5kg=2000円」としたら、280万円ということ。それでも東洋蘭などの古典園芸植物の中では安価なほうだったといわれています」(同)

残念ながら現在では、、一般の人が変化朝顔を目にする機会は限られてしまっている。そんななか、変化朝顔研究会は、毎年7月28日から8月3日までの間と、8月最終週の金・土・日曜日に、東京の日比谷公園で展示会を行っているという。江戸から続く園芸文化に触れてみてはいかが?
(成田敏史/verb)

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