魔法びんメーカーの真空技術で、音響はどう変わるのか…?

サーモスがスピーカーを作った理由

2015.03.09 MON



『VECLOS(ヴェクロス) 真空ワイヤレスポータブルスピーカー SSA-40M/SSA-40S』サーモスが高真空技術を用いて展開するVECLOSブランドの第1弾。スマホやPCとBluetoothで接続でき、クリアーな高音質を楽しめる。カラーは、ブラック/ホワイト/レッド/ブルーの4色で展開
サーモスといえば、ご存じのとおり水筒やタンブラー、フードコンテナなどの断熱容器で知られる、世界シェアトップクラスの魔法びんメーカーだ。ところが、3月6日に同社から発売されたのは、これまでの製品ラインナップとはまったく毛色の違う“ポータブルスピーカー”。いったいなぜ、魔法びんメーカーが音響機器を作ることになったのか? 

「当社はもともと、工業ガスメーカーの日本酸素(現・大陽日酸)が家庭用品事業を分社化してできた会社です。日本酸素がやっていたのは、液体状態の酸素や窒素をメーカーの工場にパイプで送ったり、タンクを使って販売したりといった、企業相手の事業。ただ、経済が低成長に移行していくなかで一般消費者向けの新規事業を模索して、1978年に世界初の高真空ステンレス製魔法びんを開発したんです」(サーモス マーケティング部・竹脇一郎さん)

医療機関や工場などで大量の液化ガスを保管するために、日本酸素は特殊な溶接技術を用いて真空タンクを作っていた。それをギュギューっと小さくすることで、今やおなじみのステンレス製魔法びんが生まれたのだという。つまり、高真空状態を実現する金属加工技術こそが、ほかには真似のできないサーモスの強みというわけ。でも、真空状態がスピーカーにどうかかわってくるのか? サーモスが発売した「VECLOS(ヴェクロス)真空ワイヤレスポータブルスピーカー」の開発担当者に聞いてみよう。

「最初に真空技術をスピーカーに使えるかもしれないと思ったのは、5年前に新規事業開発プロジェクトが発足し、工場を見て回ったとき。当社のボトル工場では最終の品質検査のとき、真空のものと真空でないものを識別するために、叩いて音の違いを聴き比べるんです。これをヒントに様々なアイデアを出した結果、スピーカーに応用できないかということで開発が始まりました」(サーモス マーケティング部・山田瑞生さん)

山田さんは、同社の水筒をベースに試作を重ね、音響の変化を確かめた。

「一般的なスピーカーは素材によって音が壁面を通じて漏れてしまうため、濁って聴こえてしまう場合があるんですが、真空容器は熱と同じように音を漏らさず閉じ込めます。結果的に音の繊細な部分を濁していたノイズが減少し、正面から音が鮮明に聴こえるので、指向性のあるクリアーな音質を実現しました。真空技術だけでなく、魔法びん容器で培ってきた密閉技術もスピーカーの振動を減らし、ノイズを抑える効果を高めています」(山田さん)

実際に製品を見せてもらったところ、まず手にしてみて驚いたのはその軽さだ。一般的に、高音質を追求するスピーカーは壁面を遮音して振動を減らすため、ある程度のサイズと重量が必要になる。ところが、このスピーカーは壁面がステンレス製の真空二重構造なので、軽く剛性も高い。その遮音性の高さからかなりの小型化に成功している。

もちろん音質も特徴的だ。真空のスピーカーと真空でないスピーカーで川辺の自然音を聴き比べると、耳に入ってくる音の数が違う。ノイズが除去されているせいか、VECLOSから出る音を正面で聴くと、川のせせらぎや木の葉の擦れる音が浮かび上がってくるのだ。ボーカル曲の声色も細部まで表現され、音がまっすぐこちらに伸びてくる感じ。これが「世界初の真空サウンド」か…。

「この製品は“小さくてもいい音を”というコンセプトで開発したので、出張などにも持ち運んで音楽を聴いてもらいたいですね。今興味があるのは、この真空技術を使って大小様々なサイズのスピーカーを作ったらどんな音が鳴るのかということですね」(山田さん)

VECLOSブランドはまだ始まったばかり。今後の展開にも期待大だ。

  • 従来のスピーカーでは、筐体壁面の振動を通して音が四方八方に広がり、ノイズになる。その結果、濁りのあるぼんやりした音になってしまう
  • VECLOSの壁面は魔法びんと同じ真空二重構造になっており、音や振動を遮断する。これにより、輪郭のはっきりしたクリアーな音が、まっすぐに届くのだ

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