量が質を超えていく瞬間がある。 ― 園子温、多忙な日々とパンチラを語る

園 子温

2015.08.27 THU

ロングインタビュー


吉州正行=文 稲田 平=写真 武田篤典(steam)=編集
深夜ドラマを映画にしたら
童貞の妄想力が全開になった

園子温監督作品の『映画 みんな!エスパーだよ!』は、もともとテレビ東京の深夜に放送されていた、同名コミックのドラマ化作品だ。童貞たち(と一部の処女)が超能力を授かり、その能力をエロいことに悪用したり、正義のために活用したりする、いってみればしょうもない物語。ドラマは人類を脅かす「●×△の襲来」というウルトラCの展開を見せ、若干の含みを持たせながら終了した。

―けど、映画版は続きにしなかったんですね。

「一見さんお断りの映画にするのは抵抗があったんですよ。ドラマを観ていない人でも、すんなり馴染めた方がいいでしょ。同時にこの作品の場合はドラマの続きをなぞるとテーマが変わって、スピンオフ作品になっちゃう。だから作品の頭にさかのぼって、さらにさかのぼって主人公の胎児時代からスタートしてみました。そこから始まって“懲りない(染谷将太演じる主人公)嘉郎”という決着の付け方が、『エスパー』のシメには面白いと思ったんです」

―それを全部撮り直したのは…。

「要所要所をすべて撮り下ろして、たたみかけるような1時間半のストーリーにして、リズミカルに再構築していく。以前観たときといかに違う印象を与えていくかを考えながら撮るのは、やっていて楽しかったですよ」

―すると、ヒロインの平野美由紀役に今回は池田エライザさんを起用したこともその一環ですか?

「これは大成功したと思っていて。冒頭にある衝撃の“ベッドのシーン”でガツンとつかめました。うちの男性スタッフの勃起率を調査したところ、79.9%でしたからね。まあもちろんウソですけど、とにかく今回はエロに振り切ろうと考えていたんです」

―確かにいろいろ振り切れてました。ドラマ版に比べて女子が増えているし、商店街は半裸のお姉ちゃんでごった返すし、みんな水着か下着になりますもんね。

「刑事や新聞記者があんなにセクシーであるわけがないんですよね! そこは男子の欲望をそのまま映像化したかったので、ありえない設定も大胆に取り入れたんです。現場でどんどん直しました。板野友美をLINEで呼んで、急遽役を作ったり、関根勤さんにも急遽出ていただくことになって、演じるキャラクターは台本上存在しなかったのですが、エロ親父を演ってもらったり。日々台本を検証してどんどん直すわけです」

―撮影期間は潤沢でしたか?

「1カ月くらいで、台本通りに撮っていれば毎晩お酒が飲めるスケジュールだったのが、台本を200%よくしたいという僕の気持ちのせいで、毎晩深夜になってみんなヘトヘトになって帰って。憧れの楽しい地方ロケの生活は、見るも無惨に崩れ落ちました。『よりよい』っていうといい話に聞こえるけど、結局はいいおっぱいが撮れるかということなんですけどね」

―パンチラの見せ方にもこだわりが詰まっていましたよ。

「パンチラひとつでも撮るのは難しいんですよ。(吹き替えではなく)本人のパンチラを見せたいし、それだとわかってもらうため、カットは割れません。引きの絵から下半身の寄りになったときに、三塁ベースに飛び込むように助監督がズサーッ!っと扇風機を持ってスカートの下に滑り込む! そんな離れ業も。勝手知ったるエスパーチームのスキルが、ここぞとばかりにスパークするわけですよ」

―ロケ地、地元の愛知ですよね。故郷にスケベな錦を飾るようなお気持ちがあったのでは?

「高校時代は僕も嘉郎と同じ童貞で。通学路を悶々としていたわけですよ。嘉郎も同じ通学路を歩くわけですから、これ以上ないシンクロ具合。だからある意味で僕の自叙伝に近い内容になったと思うんですよね。ただまぁ、わりかしキレイな女子に関心を抱かれてしまうのは僕の妄想。あの暗い童貞時代がこんなふうになったらという夢でもあるんです」

―確かに嘉郎は女子の注目の的になったりと、童貞にあるまじき、おいしい目に遭ってました。

「結局僕も童貞が長かったので、妄想力が発達したんです。現場で関根さんともずいぶん童貞談議に花が咲きましたけどね。撮影は夜を徹しちゃったけど、夜道を帰っているときに、撮影で疲れた女優さんたちが『園さん、私とどっか行かない?』って事態が起きるんじゃないかと思っていたりする。この直らない童貞妄想力をフルにみなぎらせました」

―結果、ドラマも映画も、原作からずいぶん離れちゃいました。

「前半はかなり丹念に原作をなぞりましたが、最後までかわいい話にしたかったので。『女性を愛してる!』『みんな俺の女なんだよ!』という男性の本音をやりたかったんです。若干ウソをついたのは、実際のオナニーはそんなに激しくないということです」

―ドラマのときには放送コードやCMの都合など様々なしがらみがあって、いらだちを感じてらっしゃるようでしたが、その点、自由な映画だと、鬱憤を晴らせたんじゃないですか?

「う~ん、それは、『ドラマではマキタスポーツ(演じる永野輝光)の股間が映せない』とか、そんなレベルの話ですから。だから今回“しっかりやれた”のはおっさんの股間の話です。ゆえに『それでいいのか?』と自問自答しながらの作業ではありました」

これで今年4本目の映画。
忙しいのは望むところ!

今年に入って園監督の公開作品は相次いでいる。『ラブ&ピース』『新宿スワン』『リアル鬼ごっこ』と続き、本作でなんと4本目を数える!

―お忙しいですね。

「確かに声がかかるようになりましたが、貧乏時代が長くていつ金がなくなるかという恐怖感があるんです。基本的に仕事は断らず、稼げるときに稼ぐという芸人的な考え方ですね。ただ、忙しい方が頭が切れるんですよ。この撮影中にも角川から出す、詩集とエッセイを組み合わせた『受け入れない』を書いていた。撮影中にやればてっとり早いし、ハードな日常で書く文章はキレがいい。1日24時間しかないけど、どんどん詰め込んで、日曜日だったらさらに飲み会もやっちゃう。忙しいのは望むところ。先月なんかはもう本当にひどくて、個展を2つ同時に開催して、そのインスタレーションを作りつつの、『エスパー』の編集をしていました」

―体壊しません?

「大丈夫ですよ。泣きそうになることもあるけど、その瞬間がやっぱり一番面白いから」

―ただ、同時並行でやると仕事ひとつひとつのクオリティを担保することは難しくなりませんか?

「左脳しか使わないで達成する完璧さって意外とちっこいんですよ。無防備で未完成で荒削りなものがあるほうが絶対面白い。自分が考える完成度は端から見て高い完成度ではないという気もするんです。むしろ余裕のあるなかで納得いくまで作るより、めちゃくちゃ忙しいなかで作る方が、すごいものができると思うんですよね。漫画家でも忙しくて何本も抱えている方が、面白い作品が生まれることがあるでしょ。休日ではたいしたもの作れない。深作欣二の一番いいのは、年に5~6本撮ってたとき。質より量だと思うんですよ。量が質を超えていく瞬間があるから、詰め込むんですよ」

―裏を返せば、“質を超えない”失敗作もあるということですか?

「本とかだと確かにクオリティが下がることがありますけどね。監督って、役者と違って3本同時に撮影なんてことはないし、まあ腐っても監督は本職だし、映画に関してはクオリティを保てていると思います」

―今が人生で一番忙しい。

「一番忙しいですね。神様のいたずらで、なんで50歳過ぎて忙しくしてくれたんだろうって。体力がね。全部ズラして41歳ぐらいからにしてほしかったと思いますよね。だから去年から年齢を23歳だって言うようにしていますよ」

―映画以外のアウトプットにはどんなスタンスなんでしょう?

「去年の話なんですけど、監督やめようかなと思って芸人とかいろいろ手を出してみたんだけど、あまりうまく気持ちが行かなかったんですよね。絵や絵本や詩集も作ったけど、結局映画をキチンとしようと考えて。だからバラエティも、今は宣伝以外は出ないんですが、それらをやった経験は台本や演出にも生きてくると思うので、よかったと思いますよ」

―そんな期間を経て、今はどんなものを撮りたいですか?

「う~ん、テーマというより、あるとしたら撮りたいタッチですかね。来年からの新作を見て、これまでと違いすぎて度肝を抜かれるかもしれない。それでファンが全員消えてしまっても構わないし、そうなったらそうなったで、ほかのものを断ち切って映画が作れる楽しみがあるからね。自分がこだわって突き詰めたい映画が撮れたら、それでいいかな」

―美学ですね。あ、聞き忘れたんですけど、なぜ白いパンティがお好きなんですか? 『エスパー』のほか、園映画にはこれでもかと出てきます。これもこだわりが?

「白いパンティはとても重要ですね。服がなくて下着だけの姿になった場合、これは黒でも悪くはないと思いますが、見え隠れするパンツに関しては白がいいと思うんです。美しいでしょ。やはりこれは美学の問題で、答えはないと思いますよ。黒のTバックとか紫とか、無数の答えがあると思いますよ。ただこれもうちの調査によりますと、89.9%の男性が、風にひらめくスカートの中身は『白がいい』と答えていますけどね」

1961年、愛知県生まれ。17歳で詩人として活躍し、85年に撮影した映画『俺は園子温だ!』がぴあフィルムフェスティバルに入選。90年『自転車吐息』がベルリン国際映画祭で正式招待作品映画に。映画を撮るかたわら90年代には路上パフォーマンス集団「東京ガガガ」を主宰。インディーズでの映画製作を経て、近年では『愛のむきだし』(2008年)や『冷たい熱帯魚』(2011年)、『TOKYO TRIBE』(2014年)など、話題作を多数手がける

吉州正行=文
稲田 平=写真
武田篤典(steam)=編集

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