朝井リョウ「リア充はエライと思ってます」

朝井リョウ

2015.12.10 THU

ロングインタビュー

あさいりょう/1989年5月生まれ、岐阜県出身。2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。12年には映画化され、日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、多数受賞。大学卒業後、就職し兼業作家に。社会人1年目に書いた『何者』で第148回直木賞を受賞。23歳での受賞は戦後最年少。直木賞受賞後第1作の『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。15年刊の『武道館』はフジテレビでドラマ化決定。11月には、「シェアハウさない」「リア充裁判」「立て!金次郎」「13.5文字しか集中して読めな」「脇役バトルロワイアル」の5篇からなる『世にも奇妙な君物語』(講談社)を刊行
朝井リョウ、1年7カ月ぶりのR25インタビュー登場である。前回の記事の終盤、彼はこう言った。

「今、息抜きに『世にも奇妙な物語』を書きたいなと思ってるんです」

どうやらこれを『世にも奇妙な物語』プロデューサーが見たらしい。そして今回の、朝井リョウ版『世にも奇妙な物語』である新作『世にも奇妙な君物語』の刊行へとつながったという。

――フジテレビの方から「書きませんか」って言われたんですか。

「いえ、お誘いを受けたわけではないんですよ。記事を喜んでいただいて、お会いすることになって。手ぶらというわけにもいかないので、プロットを4つ持って行ったんです。今回、本になったのでいうと『リア充裁判』と『脇役バトルロワイヤル』が好感触で、見せた4本の中には『シェアハウさない』がありました。あとは万引き犯の話も書いていたんですが、それはボツにしました」

――何か言われたんですか?

「現代風刺とどんでん返し…この2つがしっかり利いている話を求めていると。それでまず、『リア充裁判』を脚本にして、直近の『世にも特別編』でやるかという流れになったんです。でもこのときすでに若い女性が主人公の話が決定していて。本家の『世にも』って主人公の性別と年齢をバラけさせてるんですよね。『リア充裁判』も若い女性が主人公なので、ならば登場事物の性別を逆転させようと。逆転版の脚本もいただいたんですけど、どうもニュアンスが変わるので、結局ダメになったんです」

――オールナイトニッポンでもお話しされてましたけど、朝井さん的には「映像化決定」=「クランクインの日程決定」なんですよね。過去にはエッセイを映像化する話も来たとか。

「企画書を開いたら『朝井リョウ役理想キャスト:福士蒼汰』って書いてあって(笑)。衝撃的でしたよね。しかも朝の情報番組のなかのワンコーナーとしての企画だったんです。言ってみれば『きょうのわんこ』みたいな(註:フジテレビではありません)。今考えたらすごくチャレンジング」

――ともあれ、テレビきっかけで、小説は3月からの連載が決定しました。

「現代風刺色を強めようと“ネットニュースの話”と“幼稚園のクレームの話”を考えたんです。当初は連載中にモノになればいいなと思ってたんですけど、本家『世にも』っては半年に1回の放送なんですよね。その後もなかなか入る余地がなく。一時は深夜の連ドラという話もあったんですが、一息で楽しむことを前提で書いた作品を連ドラ化してもうまくいかなくて。連載中の映像化は難しそうだったので、じゃあこの際小説ならではのことをやろうと、『脇役バトルロワイヤル』を仕掛けました」

――ネタバレになりますが、そこまでの4作品のサブキャラ…を演じた脇役俳優さんたちによる主演争奪戦ですね。しかも実在の俳優さんを完全にイメージさせるネーミングとキャラ付けで。ドラマの“脇役あるある”を紹介していくという。

「本家の『世にも』は1話ごとに脚本家さんが全部違うので、お話を超えた伏線は張れないんです。そこを実現したのが、小説ならでは、です。各話に出てきた脇役を集合させるエピソードなんです」

――そういう制作上の仕組みに基づいたことなんですね。実在の脇役っぽい俳優さんに脇役がいいそうなセリフをあえて言わせたりするところのハードルかと思ってました。

「実際にあの人たちをキャスティングするのも難しいとは思いますけど…(編集の方に)あ、そういえば今日、溝端(淳平)くんからメール来ましたよ。“本届きました、ありがとう!”って」

――『脇役バトルロワイヤル』に、溝端さんっぽい人が出てきてすごく溝端さんっぽい描写されてますけど、いいんですか?

「溝端さんとは2年前に『anan』で対談させていただいて。そのときに“あなたがやるべきドラマはこれだ!”っていう企画を2本、紙芝居形式で本人にプレゼンしていて。そのうちの1本が『脇役バトルロワイヤル』だったんです。すごく笑ってくれたんですよ、当時。だから溝端さんは決め打ち。ほかの“渡辺さん”とか“板谷さん”には嫌がられるかもしれないですね…」

――で、今日ぜひ聞きたかったのは、『リア充裁判』の件なんです。若者のコミュ力を国家が判定する話で、そこで大きな証拠能力を持つのがSNSであると。で、「ウェ〜イ」って言いながらイベントにガンガン参加してバンバン写真アップしてる子と、そんなのは真のコミュニケーションではないと信じる読書好きの子が出てきますよね。朝井さんはどっちですか?

「僕は前者は前者でエライと思ってます。リア充って今や“自分より考えが浅い人への蔑称”みたいになってきてますよね。友達がいるとか恋人がいるとかそういうこととは関係なく、自分より思慮深くないと思っている人のことを括る呼び名というか。一方で読書好きって不当に崇められてる気がするんですよ。本人も“自分は深く物事を考えている”と思い込んでて、リア充をバカにしている。それがすごく傲慢だなと思っていたんです。だから読書好きを脅かす話を書きたかった。って読書好きに支えられている仕事をしているんですが(笑)。でも小説家の仕事だって、作業の要素だけ抽出すると“ストーリーを考える”ってことで。それってエロゲのライターも同じなんですよ。でも社会的な立場は同じではない。本を書く人も読む人も、自分のことスゲエと思ってて、ハロウィンパーティに行く人を“あいつらリア充だからさ~”ってバカにしてる。そういう人たちを脅かしたかった」

――朝井さん自身、大学時代はストリートダンスをやりつつ小説を書いてましたよね。そういうバランスですかね。

「それはありますね。早稲田に通う作家志望の人が一番嫌な形でデビューしてやろうと思っていたんですよ。“自分はこの人たちより上だ”と信じてる人が、その人たちに脅かされたときの顔を見るのが好きなんです。それを小説でやりたかったというか」

――意地悪ですねえ。

「そうかもしれないですけど、ハロウィンパーティをやってる人のほうが単純にすごくないですか。友だちと日程合わせて衣装そろえて場所を押さえて…ってだけでも、家でテレビ見ながら“渋谷の町を汚しやがって”って言ってる人たちよりも脳も体も働かせてるような気がする。そこはちゃんと伝えたかった。最近、体力がある人のことをやけに尊敬してしまうから、その流れもあるのかも」

武田篤典(steam)=取材・文/稲田 平=写真

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