朝井リョウ、次作はバレーボールの4部作?

朝井リョウ

2015.12.17 THU

ロングインタビュー

1989年5月生まれ、岐阜県出身。2009年『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。12年には映画化され、日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、多数受賞。大学卒業後、就職し兼業作家に。社会人1年目に書いた『何者』で第148回直木賞を受賞。23歳での受賞は戦後最年少。直木賞受賞後第1作の『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。15 年刊の『武道館』はフジテレビでドラマ化決定。15年4月に新卒で入った会社をやめ、現在専業作家。専業第1作が『世にも奇妙な君物語』(講談社)。ちなみに文中の『世にも』に引っ張られたという、より『世にも』らしい短編は、来春刊行予定の新刊に収録されている短編「レンタル世界」。現在の息抜きはバレーボール。
『世にも奇妙な君物語』はとても奇妙な本だ。これまでにないきっかけから執筆がスタートし、これまでにない書き方をした。朝井リョウ作品としては異質と言っていいだろう。編集者というよりは、テレビ制作者の声を聞きながら書いたからだ。だからその分この作品は、『世にも奇妙な物語』としては非常に端正にできている。どうすればより『世にも奇妙な物語』になるか、どうすればあのドラマの一篇として採用されるのかを、かなり真摯に追求したという。

――ちなみに『小説現代』連載時のタイトルは『いつか、世にも奇妙な物語』。

「僕の書いたもののなかではもっとも現代の社会風刺が入っていますし、どんでん返しを意識した起承転結になっている。それだけじゃなくて、ここまで、いわゆる物語の質みたいなところから外れたほうに寄せる書き方をした作品はなかったですね。『世にも奇妙な物語』って、全体の構成にもある程度傾向があるんです。1話目にストレートに怖い話が来て、2話目と3話目には日本に変な法律ができた、みたいなハチャメチャ物語が来て、最後にはコントみたいな何でもありな話が来ることが多い。そのセオリーに則って、2時間の放送枠を意識して書きました。そうやって、物語の質みたいなところとは関係のないパッケージに寄せて書いたのも初めてでしたね」

――現代の社会風刺といえば、4話目の「13.5文字しか集中して読めな」なんて非常に身につまされました。また「脇役バトルロワイアル」はすごいですよね。物語の書き手としては危ういところに触れているというか…。

「そうなんですよ。物語を進めるのに便利なものをだいぶ指摘しましたからね(笑)。【逆説しゃべり始め説明】とか。自分の逃げ場を潰した感じというか、今後こういうセリフ書けないなと」

――【だけど○○だよね、まさか××が△△なんて】的な。脇役に割り振られた役割をひもとくという。もう今後使えなくてもいいや! っていう覚悟はあったんですか?

「覚悟ってほどではなく、ニヤニヤしながら書いてました(笑)。それに今後もたぶん普通に全然使うと思いますね。これはこれ、それはそれ、というか。あれは脇役礼賛のお話ですから!(笑)」

――今回、この作品を書いてみていかがでした?

「結構引っ張られちゃいました。他の作品も『世にも』っぽくなっちゃって、とくに全部書き終えた後に文藝春秋の『オール讀物』に書いた短編が、今回掲載分の5編も含めたなかでいちばん『世にも』っぽい話になっちゃったんです(笑)。執筆中に身についた『世にも』のセオリーがそこでいちばん発揮されちゃいました。ただ、すごくデトックスになったので、『君物語』の『君』の部分を変えてシリーズのようにしたら、新たな読者の開拓になりますし、また自分も息抜きできると思うので、そういう場所になるといいなあと思っています」

――ところで、今年の4月で会社を辞められたそうですね。

「そうなんです。取材のために移住をする予定があったからなのですが……」

――はい、いろんなインタビューで拝見しました。

「でも、つい2カ月ほど前、そのお話が企画ごとなくなってしまったんです。版元から連絡を受けました」

――あら、なくなったんですか!?

「今、スケジュール的にも精神的にもぽっかり空いた穴を埋めようとしています。今となっては、会社を辞める必要はなかったんですよね。でも辞めてしまったので、もともと予定していた仕事と同じぐらいカロリーを消費するテーマを見つけて、気持ちを持ち直そうとしてるところなんです」

――大変でしたね。朝ドラのヒロインが転機を迎えるみたいな心境っておっしゃってたのに。で、カロリーの高いものっていうのは…。

「僕、いつかバレーボールの長編を書きたいと思っていたんですが、それを前倒しでやろうかなと思っています。書き始めるのは来年からですが、取材は今年から始める予定です。12月の天皇杯や、来年1月の春高バレーとか、ちょうど大きな大会もたくさんある季節ですし。どうせやるなら1冊では終わらない大長編にしたいです。野望としては、1カ月ごととかに単行本を出して、その作品で本屋大賞を狙えたら最高です。東京五輪の時期に文庫化、ということを夢見ています」

――期せずして専業作家になられましたけど、将来のこととか考えたりします?

「数年先のことは考えますが数十年先のことは考えていません。考えてもしょうがないかな、と。出版業界自体がどうあるかわからないので。小説書いて単行本にして文庫化するっていうビジネスモデルもいつまで続くかわからない。僕の人生よりそのビジネスモデルが先に廃れると思いますし」

――朝井さん、つねづね兼業がいいっておっしゃってますよね。

「はい。僕は兼業に向いてるほうだと思います。せっかくなら、朝井リョウじゃない自分としての仕事もしていきたいんです。体は疲れるけど精神的にはバランスが取れるし、きちんと就職しているほうがまともな人に見られる(笑)。ただ、総合職とか正社員は会社に対する責任感が大きいので、次は抜いていいジェンガみたいな存在でありたい…ってそんな仕事この世にないですよね(笑)」

――ところで、朝井さん、男泣きってどう思います? …というのは、実はこのインタビューには「男泣き」というテーマが設定されているんです。

「素敵だと思います。そういう機会のある人生そのものが素敵。感情が大きく振れる瞬間があるということですもんね。大人になればなるほどどんどんそのタイミングは減っていくと思うので。僕『チア男子!!』という作品のなかで、“悔し泣きができるときって、もしかすると、人生の中でもほんの一瞬なのかもしれない”って書いたんですけど、絶対泣ける回数が多い人生のほうがいいと思います」

――泣かないほうですか?

「バレー見てると泣きます。普通に全日本の試合を見ていて泣きますし、高校バレーなんて相当余力がある時じゃないと無理ですね。見られない。つらいんです。僕はもう高校生にもバレー選手にも一生なれないんだ…という絶望で泣く(笑)。男泣きでもなんでもないですよね(笑)」

武田篤典(steam)=取材・文/稲田 平=写真

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