竹野内豊「完璧な失敗はありえないから後悔しないように」

竹野内豊

2016.01.07 THU

ロングインタビュー

1971年東京都生まれ。モデルとして活躍し、94年『ボクの就職』(TBS)で俳優デビュー。95年『星の金貨』(日本テレビ)で注目を集め、97年放送の『ビーチボーイズ』(フジテレビ)で人気を確かなものに。今年は映画『シン・ゴジラ』(7月29日公開予定)なども控える。主演の映画『人生の約束』は、ドラマ界の伝説、石橋 冠がメガホンを取り、名だたる名優が共演する必見の作品。富山県射水市新湊の美しい風景を舞台に、かけがえのない人のつながりを描くヒューマンドラマ。1月9日(土)全国東宝系ロードショー
竹野内 豊は、コミカルからシリアスまで、器用に演じ分けられる俳優だ。このたびテレビドラマ演出の大家である石橋 冠が、「生涯1度きりでいいから映画を撮りたい」と渇望した作品、『人生の約束』で、主演を指名された。劇中では、傲岸不遜な辣腕経営者、中原祐馬を演じる。

――どんなお気持ちで引き受けたんですか?

「最初はなぜ自分が…という気持ちでした。石橋さん演出のドラマ『池中玄太80キロ』を見ていましたから、非常にうれしかったですね。そんな石橋さんの長いキャリアのなかで映画監督第1作となる作品にお声をかけていだだき、身が引き締まるのと同時に本当に光栄でした」

かつて志を同じくした親友の死を聞きつけ、祐馬はその地元である富山県新湊に訪れる。人との“つながり”を通して、頑なな態度を次第に氷解させていくというストーリーだ。

――親分肌の漁師、渡辺鉄也を演じる江口洋介さんとは特に共演シーンが多かったわけですが、初共演はいかがでしたか?

「先輩ですから、最初のうちは挨拶させていただくくらいしか会話がなかったんですけど、10日目すぎたころくらいから飲みに行くようになりまして、釣りに誘っていただいたり、どんどん距離が近づいていきました。ご一緒させていただいて、すごくストイックな部分がある一方、懐の深さというか柔軟さというか、勉強させていただきました」

――ほかにも、ビートたけしさんに柄本 明さん、西田敏行さんなど、そうそうたる顔ぶれが集まりました。そのあたりにも大いに刺激を受けたのでは?

「みなさん個性が強くて、芝居へのアプローチに感心しました。特に、たけしさんに『ちょっといいかな』と声をかけられるシーンがあるんです。何気ない一言なのに、ものすごい“意味”を感じるんですよ。刑事役なんですが、その裏にある背景が見えてくるような…。」

――監督からはどんな指導があったんですか?

「よほどのことがない限り、何もおっしゃらないんですよ。すごく自由にやらせてくださる方で。委ねられた側としては、とにかくプレッシャーが大きかったですね。撮影が進むにつれ、空気も和やかになっていきましたが、いい意味でのプレッシャーは全員が共有していたように思います」

――劇中で「40代が人生の踊り場で、過去も未来も見える」という台詞があります。ご自身と重なるところもあるんじゃないですか?

「これまでを振り返ると、昔はがむしゃらにやってきた…という思いはあります。ただ今の世の中って、正直がんばればいいというわけでもないじゃないですか。結果が一番大切ですが、そこに至るまでのプロセスとして、臨機応変であることが大事だと気づいてきましたね」

――そういったことに気づくと、お仕事が面白くなるのではありませんか?

「20代のころは、『こんな仕事でお金もらっていいのか』と悩むことはありましたね。何も知らないくせに、生意気に制作スタッフに疑問を感じることもありました。自分がちゃんと泣きたくならないと、泣けないみたいな。ただそういったプロ意識を持つと、結局つまらない方向に行っちゃう。そこに気がついたときに、楽になりました。何やったっていいじゃないかって思えるくらいになりました」

――それは達観ですね。

「自分のプライドが邪魔をして作品を悪くすると、自分に跳ね返ってきてしまうんですよね。台本を投げたいときとか、ときには燃やしちゃいたいときもあるんですけど(笑)、お客さまには何の罪もないじゃないですか」

――確かに。ただお仕事柄、作品が思うように支持を集められないときもありますよね。失敗についてはどうお考えですか?

「後悔しないようにしているんですよ。携わってきた者の責任として、どこか思い入れがある部分から、作品を好きになるようにしています。すべて丸々、完璧にできないのと同様に、完璧な失敗はありえないと思うんです」

――竹野内さん、仕事は何のためにしていますか? やはり見てくれるお客さんのためでしょうか?

「見てもらってなんぼの仕事ですから、そこは大きいですけど。仕事って人生そのものじゃないですか。『何かのため』って常に意識することはないですよね。だから……仕事は、“仲良く付き合っていくもの”という感覚ですかね」

矢切渡司=取材・文
林和也=撮影

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