『闇金ウシジマくん』フィナーレに臨んだ人気俳優の”本音”

山田孝之「ウシジマは“完成した自信のある状態”」

2016.10.08 SAT

ロングインタビュー

やまだ・たかゆき 1983年10月20日生まれ。99年、ドラマ『サイコメトラーEIJI2』で俳優デビュー。2001年NHKの朝ドラ『ちゅらさん』に古波蔵恵達役で出演。03年『WATER BOYS』で初主演。05年『電車男』で映画初主演。『クローズZERO』シリーズや『荒川アンダー ザ ブリッジ』など、印象的な出演作多数。公開待機作に『何者』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』など。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズは最新作の『~導かれし七人』が現在放送中。映画『闇金ウシジマくんPart3』は上映中。『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』は10月22日(土)より公開。

役を完成させるということ


「Part2をやった時に完成したんで」と山田孝之はいう。

丑嶋 馨(うしじまかおる)のことだ。真鍋昌平原作で2004年から『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載されている『闇金ウシジマくん』の主人公である。2010年10月にドラマ化され、2年後に映画化された。山田さんの言う「Part2」とは、2014年に公開された劇場版第2弾のこと。その後、ドラマはSeason3まで作られ、今年9月に劇場版第3弾の「Part3」が公開、そして今月、打ち止めになる『ザ・ファイナル』が封切られる。

ちょっと整理すると、山田さん、足掛け6年でドラマ版3本、劇場版4本で丑嶋馨を演じてきたことになる。

丑嶋は、10日ごとに5割の利子で金を貸し付けるアウトローの金融屋「カウカウファイナンス」の社長。物語の主人公ではあるけれど、実際には彼の元に金を借りにくる人々の生態や日常を描くことが中心にある。

一流企業に勤めながらカード破産し風俗で働く(で、会社にバレる)OLや、読モ目指して洋服を買い漁って首が回らなくなるフリーター、ホストクラブにはまってネグレクトに陥るシングルマザー、多重債務者の息子に老後の資金を渡し株で全部溶かされたその母親、日銭を稼ぐために10代の娘に援交を持ちかける無職のアラフォー女性などなど、そりゃもうひどい客たちが次々と現れる。原作はそうした社会の底辺に棲息する人々の生態を舐めるように描いていく。

「原作の最初のほうでは丑嶋は結構出てきて闇金のシステムを説明したり、怒鳴ったり動いたりするんですけど、それが少しずつ出てこなくなるんですよね」

この辺り、ドラマもマンガもご存じのみなさんには蛇足かもしれないが、要は債務者の日常や考え方をみっちり描くために、丑嶋自身は狂言回し的な扱いになっていくのである。

「丑嶋ってそういうほうがいいなと思ってたんです。最初のドラマシリーズと映画のPart1の頃までは、(企画と監督の)山口(雅俊)さんに“思い切り目に力を入れて睨んでくれ”とか“もっと怒鳴って”って言われてたんですが、僕としては、そうじゃないほうがよくないですか? って言ってんです。でもまあ最初は作品もキャラクターも一般的に知られていなかったので…」

山田さんのやりたかったのは、何を考えているか一切わからない男。原作の真鍋昌平氏は、ドラマのSeason1が終わった時、山田さんとの対談で「虫みたいな存在」と語ったという。

「普通セリフをしゃべったり、演技で動いたりする時って、その人の気持ちを考えるんです。なぜそれを言ったのか、なぜそこにいてそうしたのか。でも丑嶋の場合はそこを一切無しにしたかったんです。疑問とか理由を持たずに、ただセリフを覚えて発する。その演技の際には、僕という人間を通してないから、そこに特別な解釈がない。結果どんな人間がわかりにくくてつかみどころもない。それがカリスマ性とか怖さとか、見た人によって違う印象になってくると思うんです。ただしあくまでも外側の“型”だけはガッチガチのルールを作りました。表情を変えたり感情を表に出さないのはもちろん、息をしている時に肩が一切動かないとか、顎の角度はこうとか」

これ、ある意味、歌舞伎に近いような営みである。歌舞伎の場合は、師匠や先達から手取り足取り動きやセリフの言い方を仕込まれる。気の遠くなるような反復練習でまずそれを身につけるところから始まる。“型”自体は自分で作り上げたものだが、山田=丑嶋もまた、それを「紙やすりで磨くように」少しずつ丹念に理想形に近づけていったという。

「実際、中身を作らないとブレやすいんですよね。キャラクターがあると、“その人ならそういうことするよね”“こう言うよね”って、柱があって見せやすい。でもどんな時でも相手が誰でも何を考えてるかわからないのが丑嶋だから。その役を完成させたくて、それを多くの人に知ってもらいたくて、僕はこの長い間、丑嶋をやってきたんだと思います。その“完成したという自信のある状態”で最後はやりたい、と思ったから今回の映画をやろうということになったんです」

完成させた役を崩す、それを見る楽しみ。


山田さんによると、劇場版Part3は「完成した状態を見せる」作品、そしてザ・ファイナルは「完成したものを少し崩してみる」作品。

「理想としては続けて最後まで。映画のPart1とPart2を見て、3を劇場で見てからザ・ファイナルを見てもらいたいです。Part1では未完成、2で完成させ、3では完成形で演じ、ザ・ファイナルではそれを崩しにかかるという一連の動きはすごく面白いと思うので」

ちなみに劇場版2本と、テレビドラマ版3シーズン分はdTVとNetflixで全話見られるそうだ。

山田さん、実は原作は4巻ぐらいまでしか読んでいないらしい。原作は非常に重い。人間のしょうもない部分に、これでもか! とスポットを当てて提示してくる。ダメ人間の部類に属する人なら、きっと自分のダメさをあげつらわれているような気になるのではないだろうか。

「読んでてしんどかったのもあるし、そこで十分丑嶋馨っていうキャラクターと、この作品で何を伝えるべきかっていうことがつかめたので。その後は読まずに、最新刊が出ると買うことを続けてきました。で、ドラマのSeason2を撮ってた時にやべきょうすけさんが、『鰐戸3兄弟っていうのが出てくる話があるんだけど、すげえ面白いよ』って。それが丑嶋馨の学生時代を描く話だというのが決め手でしたね。そこはやんなきゃいけないなと思ってたんです」

『ザ・ファイナル』は、山田孝之がガッチガチに、かつ丹念に作り上げてきた丑嶋馨の、意外なシーンで幕を閉じる。原作では、今回の主要キャラである竹本との再会シーンで丑嶋は思わず相好を崩す。そんな話をすると山田さん、原作読んでなくてよかった、と笑った。

「小説ならまだしも、漫画って絵もありますから意識しちゃうんですよね。まったく同じにするべきか変えるべきか…でもこの考え方自体がものづくりとしては間違ってて。寄せるか離すかじゃなくて、その状況に置かれた時、ウシジマがどういう行動をとるかっていうことが、その人を演じる人が考えるべきことなんだけど、そこに“原作がこうだったからこうするべき、こうしないべき”って考えるのは、そもそも作り方としておかしいんですよね。だから原作を読んでると、台本とかで違う描写が出てきて違和感を覚えたりするだろうから、見なくてよかったなあ(笑)」

(後編はこちら

武田篤典(steam)=取材・文/稲田 平=撮影

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト