エロはある意味、最先端ですから…

『エロの敵』はメディア産業の未来を予見している?

2006.11.16 THU

この世の中、手に入りづらいものは値段が高くて、誰でも手に入るものはタダ同然になる。それが資本主義社会の理ってやつだ。しかし、あるモノが希少かどうかは、時代によって変わっていく。その格好のケーススタディとなっているのが、ネットでも注目を集めた『エロの敵』なる一冊だ。

エロ雑誌の黎明期からAV誕生、ヘアヌード革命を経て現在に至るまで、アダルトメディアの変遷を丹念にたどったこの本は、エロ業界という一分野を超えて、メディア産業の未来を見通す書としても有効だ。かつてエロはその希少性ゆえに、不況にも強い無敵のビジネスだった。「裏本に1万5000円という途方もない値段がついていても、先を争って買ったし、初期のAVはレンタル料が定価の1割で1本1500円もしたが、それでも借りた」(本書より)。

ところがインターネットの出現によって、エロの価値は一気に下落した。いまや、画像も動画もちょっとしたリテラシーがあれば、無料で拝み放題。「エロはタダ」の時代が訪れてしまったのだ。そんな時代の趨勢にあらがうべく、手間ヒマかけて格安DVD雑誌を作る試みや「エロさ」を新発見する新時代のAV監督なども本書では紹介されているが、おそらくエロデフレの勢いが止まることはないだろう。

これは決して他人事じゃない。情報ビジネスもまた、「エロ」と同じ道をたどっているはずだ。すでに「エロはタダ」と同様に「情報はタダ」という意識が、若い人ほど浸透してはいないだろうか。ネットで情報はいくらだって手に入るのだから、価値下落は必然なのだ。

あとがきでは、規制こそがエロの価値を高めるという話が紹介されている。うーん、でもそれはユーザーにとってはおいしくない話なわけで。「じゃあ、こんな儲け方が…」なんて考えると、ビジネス発想力の訓練にもなるかも。だって、エロはいつも時代の先頭を走ってたんだもの。


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