この秋~冬はゾンビ映画が続々公開

LIVING・DEAD映画にひそむ深い思想と禁断の悦楽とは?

2007.10.25 THU

カナダ版ゾンビ映画『ゾンビーノ』や超立体映像『ゾンビ3D』など、この秋から冬にかけてゾンビ映画が続々公開される。

ゾンビがスクリーンに登場したのは1932年の『ホワイト・ゾンビ』から。もともとゾンビとは、ハイチに伝わるブードゥー教の死体を甦えらせる〈呪術・死体〉を意味する言葉で当時の映画では、痛覚もなく動きも緩慢で、人畜無害な存在だ。

「いわゆる“ゾンビ”は、アメリカでは〈生きている死体〉と呼ばれる」とは、アメリカ在住の映画評論家・町山智浩さん。

「リビング・デッドというジャンルはジョージ・A・ロメロという監督が1人で確立していて、その周りに似たような作品があるという図式です」(町山さん)

人肉を食べるカニバリズムや伝染性、脳が弱点などの特徴をゾンビに与え、現在のリビング・デッド映画の原点を築いたのがロメロ監督なのだ。

「ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が作られた60年代は、人種暴動と学生運動とヒッピームーブメントで世の中全体が騒然としていました。そこで人々がモンスターへとどんどん姿を変え、理性を持った人間たちがマイノリティになっていく恐怖として描いたんです」(同)

ロメロ監督は消費社会への警鐘や戦争反対など、その後発表する作品においても一貫して政治的な問題をテーマに据えている。アメリカでリビング・デッド映画がヒットするのは、社会批判映画だからなの?

「最近アメリカで“ゾンビ”というとゲームが主流なんですが、ゾンビモノには〈ギルティ・プレジャー〉というイケナイ快楽を享受するという楽しみ方があります。リビング・デッドの首を切ろうが頭を吹き飛ばそうが罪にならないわけで、殺人を正当化できますから。ただ、それだけの映画はすぐ消えていきますが(笑)」(同)

ホラー映画は世相を映し出すエンタメだ。その時代背景をしっかり理解した上でスリルを楽しむ映画なのだ。


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