昭和初期の作家・小林多喜二の小説

『蟹工船』を読みつつプロレタリアートを考えてみた

2008.06.26 THU

小説『蟹工船』が売れている。これまでは年に5000部程度の売り上げだったのが、今年はすでに35万部以上を増刷し「異例の売り上げ」(新潮社・文庫営業担当・本間隆雅さん)を叩き出しているとか。過酷な労働の様子や、労働者が資本家に虐げられる内容が読者の共感を呼んでいるそうだ。国語や歴史の授業で「プロレタリア文学」の代表として習ったから、なんとなく題名ぐらいは知っているものの、内容についてはよく知らない。いったいどんな小説なんだろう。実際に読んでみた。

「おい、地獄さ行くんだで!」という強烈な書き出しからはじまる本作。ざっくり内容を説明すると、「過酷な環境の蟹工船(カニを捕まえてその場で缶詰に加工する船)で働く労働者たちが団結し、労働環境改善を求めて立ち上がる」という話。登場人物たちは冒頭の言葉どおり「地獄」のような環境の蟹工船で働かされる。雪が降り、波の高い、危険なオホーツク海で漁夫たちは作業を続ける。漁は過酷を極め、遭難や懲罰(暴行)で死人も出るほどだ。しかし漁の監督は「お前らの命より、川崎(作業用の小船)一艘の方が大事だ」と言う。漁夫たちは十分な栄養も摂れず、逃げ出せない閉鎖環境のなかで、栄養不足から脚気にかかり、次第に追い詰められていく。仕事を怠けようものなら、厳しい罰が与えられ、徹底的に働かされる。その様子が実に悲惨なのだ。働いても働いても、自分たちは決して楽にならず、監督や船長の利益が増えるだけ。79年前の小説ながら、確かに現代のワーキングプアに通じるものがある。

「プロレタリア文学」っていうと難しく感じるけど、作中の人物が言うには、「あなた方、貧乏。だからあなた方、プロレタリアート」ということになるそう。

つまり「プロレタリア文学」とは、言いかえると「貧乏文学」ってことになるのかも。そんな小説が売れちゃうのが今の社会か。でもなんだかなぁ、やるせない。


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