契約社員で生活にも困窮してた!?

世知辛い今だからこそ読みたい松本清張ってどんな作家?

2009.02.12 THU



写真提供/時事通信社
松本清張。文学に詳しくない読者でも名前くらいは聞いたことがあるだろう。しかし、R25世代にはどんな作家だったのかピンとこない人が多いかもしれない。『砂の器』や『点と線』などが有名なので、推理小説作家だと思っている読者もいるだろうが、それは清張の一面にすぎない。江戸時代を舞台にした歴史小説も書けば、邪馬台国や飛鳥文化など古代史もテーマにした。戦後の占領時代の暗部に迫った大ベストセラー『日本の黒い霧』や昭和初期から二・二六事件までを追った『昭和史発掘』などのノンフィクションでは、今に続く社会派作家というジャンルを築き上げたといってもいいだろう。生涯に上梓した作品は、長編、短編あわせて実に1000編以上。デビューは42歳と遅かったが、82歳で没すその時まで連載を抱えていた。生誕100年になる今年は、原作のドラマ化や映画化が多数企画されている。清張が支持される理由とはなんなのか? 松本清張を研究する立教大学文学部の石川巧教授に聞いた。

「清張の文学は動機に重きを置いています。人間がもつ弱さやずるさ、コンプレックスといった単純に善悪では割り切れない部分です。そして、人間のもつこれらの感情を肯定していました。デビュー前に貧困で苦労したこともあり、弱者からの目線を忘れなかったからでしょう。これらは時代によって変わるものではない。普遍的だからこそ今の世でも受け入れられるのだと思います」

また、史料に基づき綿密な検証を行う昭和史や古代史の著作には、清張自身のコンプレックスが見て取れるという。

「清張は学歴がなかったからこそ、在野からアカデミズムに挑戦していたのだと思います。だからこそ、学者では発想し得ない角度から興味深い提案ができたのでしょう」

デビュー前、朝日新聞の契約社員で生活に不安を感じていた清張は、常に市井の目線を忘れなかった。だからこそ、今の時代に生きるR25世代が読んでも共感できるのではないだろうか。


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