男を磨くカルチャー入門

第6回 落語の“笑い”はハードルが高い?

2009.03.19 THU

男を磨くカルチャー入門

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私も小さい頃から、
謡(うたい)や仕舞(しまい)のお稽古をしてきました。
能はまだまだなじみにくく、今の世の中のありようとは
真逆の方向にある文化だと思います。

でも、だからこそ貴重であり、
接してみる必要があるのではないでしょうか。
謡や仕舞のお稽古は、
自分を磨くためにもいいと思いますよ。
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投稿者:山名騒然さん(京都府/55歳/男性)

ステキなコメント、ありがとうございます!
自分を磨くとは、まさにこのレポートの真髄。
今後もどんどん、なじみのないカルチャーに
体当たりしていきますね!

というわけで今回私が目をつけたのは、
近年静かなブームともいわれている落語。

落語のあの軽妙な話術には、
お笑い芸人とも海外のコメディアンとも違う
匠の匂いが感じられると思うのです。
これは男磨きにピッタリだと思いませんか?

落語=『笑点』?
レベルの知識しかないオオタカですが、
今回もガッチリレポートしていきますよ!
落語芸術協会に所属する、桂歌若さん(真打)の落語の様子。『笑点』でもおなじみ、桂歌丸さんのお弟子さんにあたります

落語の“笑い”は上級者向け?



ここ数年、『しゃべれども しゃべれども』『落語娘』など落語を題材にした映画公開が続き、落語は静かなブームともいわれています。が、いかんせん話が難しそうで、寄席(よせ)に行く決心がつかない私。

粋に寄席で笑いたい! その楽しみ方を知りたい! ということで、『笑点』でもおなじみの桂歌丸さんが会長を務める、落語芸術協会の事務長さんに泣きついてみました。私に落語の基礎を叩き込んでください!

「落語は、最後にオチのある噺(はなし)を身ぶり手ぶりだけで進め、一人何役も演じるのが特徴。笑える噺だけでなく、泣ける人情モノも、怪談もあります。室町時代末期から安土桃山時代にかけ、戦国大名に仕えて話の相手をしたり、世情を伝えたりする御伽衆(おとぎしゅう)と呼ばれる人たちが、現在の噺家(落語家)の起源。江戸時代には、面白い噺を一般の人々に有料で聞かせる人物が登場し、寄席が誕生しました」

そんな長い歴史があるんですね! 噺の内容は昔と同じですか?

「江戸時代から明治時代までに作られた昔ながらの古典落語と、それ以降に作られた新作落語があり、同じくらいの割合で現在も演じられています。古典には、なじみのない時代の単語も出てきますが、それを自然に観客に理解させるのが噺家の腕。噺が難しくて楽しめない、なんて心配はありません」(同)

よかった~。ところで、せっかくだから上手な落語を聴きたいんです。落語の上手・下手って、どこで決まるの?

「落語は小物をほとんど使わず、座ったまま展開するもの。目線や小さな仕草だけでいかに観客の想像力をかきたてて、自分の世界に引き込むかがカギです。笑いは上手・下手より好みの問題なので、まずは寄席に行くことをオススメしますが、噺家の階級は多少参考になるかも。噺家はまず前座見習いから始まり、前座二ツ目真打の順に上がっていきます。前座より真打の噺の方が味があるのは確かでしょうね」(同)

なるほど、そんな階級があるんですね。さて、自分好みの落語を見つけるためにも、寄席に行ってみようと思います! 寄席といえば、和のイメージやっぱり、正式には着物を着ていくのがマナーですか?

「どんな服でもいいですよ。基本的に寄席は年中無休。正午から始まる昼の部と、17時から始まる夜の部があり、入れ替えがないので、一日中落語に浸ることもできます。チケットも3000円前後で、予約制ではないので気軽に寄ってください」(同)

なぁんだ、そんなにハードルの高い場所じゃないんですね。ちなみに寄席では、演目中でも飲食自由。なんと、アルコールOKという場所もあるのだそう。

一応基礎は叩き込んだし、大船に乗ったつもりで聴きに行ってみようっと。
柳亭ち太郎さん(20歳!)。柳亭痴楽師匠のお弟子さんです。現在、落語のレパートリーは25本くらいあるとか

落語の道は険しい?“前座”さんのお仕事とは?



師匠によってその期間はマチマチながら、半年くらいは見習い、という人が多いよう。キツイですねぇ。ところで、前座さんになるとお休みは?

「年の暮れに3~4日休みがもらえます。それ以外は、元旦から稽古と修業の毎日。この生活が4年くらい続いてやっと二ツ目に。二ツ目になれば、寄席での着物も、前座のような着流しでなく、紋付に羽織袴を着られるようになります。楽屋や師匠の家での雑用もなくなり、毎日寄席に行く必要もありません。二ツ目をさらに10年くらい勤めて、やっと真打になれるのが普通。自分も稽古に雑用に精を出して、早くいろんな人に笑ってもらえる噺家になりたいです」(同)

なんて長い道のり! やっぱり、芸の世界は厳しいんですね。

ち太郎さんにとって、寄席のお客さんの笑い声は何よりの励みになるそう。ち太郎さんをはじめ前座さんを応援する意味でも、みなさん、寄席へゴー! 大いに笑わせてもらいましょ。
寄席の楽屋で、先輩の着物をたたむち太郎さん。お茶ひとつをとっても、先輩によって熱さや濃さの好みはバラバラ。さながら新人OLのように好みを把握して、いれ分けていました。お見事!
軽妙な話術で観客を巻き込み、場を笑いで沸かせる落語。最近、落語を題材にした映画やドラマが立て続けに作られ、いまや空前の落語ブームともいわれています。噺家(落語家)を目指す噺家の卵も、さぞや増えたのではないでしょうか。

「噺家になるには、まず落語界の階級で一番上の真打に弟子入りする必要があり、それが叶ってはじめて前座見習いになれます。弟子入りを認められるには、熱意あるのみ。寄席に通って楽屋口で頼み込むのは当たり前。師匠の自宅の玄関で何日も座り続けた、なんて話も聞きます。師匠は弟子が一人前の真打になるまで、芸はもちろん生活面の面倒までみるので、簡単には受け入れません」

こう教えてくれたのは、落語芸術協会の事務長さん。噺家への道はかなり険しいようです。というわけで、前座見習いを経て前座になった柳亭ち太郎さんに、前座さんのお仕事についてお聞きしました!

「寄席で最初に出演するのが、前座。落語の協会に登録しているので一応噺家となり、高座(寄席で噺家が噺を語る舞台のこと)にも立てますが、まだ一人前とは認められていません。普段は師匠の家の雑用をしてから寄席に行き、楽屋の掃除や準備をします。開演30分前になったらお客様に開場を知らせる一番太鼓を打って、5分前には開演を知らせる二番太鼓。その間も楽屋では、師匠を含めた先輩全員のお茶を入れたり、着替えの手伝いをしたりします」(柳亭ち太郎さん)

なかなか大変ですね。前座見習いとはどう違うんですか?

「見習いは、師匠に入門を認められただけ。噺家ではないので、楽屋に入れません。師匠や兄弟子に付いて寄席などの仕事先まで荷物を届けたり、かばん持ちをしたり。落語の稽古はもちろんですが、着物の着方やたたみ方、太鼓の稽古など、前座になるための修業が中心。これができるようになって、やっと師匠から前座と認められるんです」 漫才ならいざ知らず、初心者が落語で笑えるのかしらと、
当初はそもそもの部分で腰が引けていたワタシ。

お話を聞いてみると、
「そんな人間でも笑わせるのがプロの噺家!」
という心強いお言葉をいただけたので、
安心して寄席に行くことができそうです。

後編では、噺家の卵である前座さんにお話を聞き、
芸の道の厳しさを知ることができました。
こういう長い修業期間があってこそ、
どんな人でも笑わせる匠の技が身につくんですね。
いやぁ、納得です。

というわけで、今回も自分としては
王道カルチャーのハードルを下げることに成功した、
と自負しております。
よろしければみなさん、一度寄席に足をお運びくださいませ。

「こんな落語が面白かった」という感想のほか、
「こんなカルチャーが知りたい」というご意見ご要望も、
首を長くしてお待ちしていますよ!

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