男を磨くカルチャー入門

第8回 お茶の“表”と“裏”の謎

2009.04.16 THU

男を磨くカルチャー入門

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私は大学で落語研究会に所属しているので、
今回の記事はとても興味深かったです。
落語で使う言葉は、ほとんどが江戸か上方のどちらかですが、
鹿児島弁で落語をする噺家さんもいるとか。
方言の落語って、とっても珍しいですよね。
私も一度地元の方言で挑戦してみましたが、難しかったです。
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投稿者:南天さん(長崎県/21歳/女性)

なんと、読者の方の中にも噺家の卵が!
貴重な情報も、ありがとうございます。

うれしかったので、コメントを受けて調べてみました。
南天さんの言う鹿児島弁の噺家さんは、
三遊亭歌之助さんではないかと思います。
鹿児島県のご出身で、
鹿児島弁を使った落語のCDも出されているようです。
斬新な芸風の噺家さんもいるんですねー。

読者の方との交流で、が然やる気がわいてきました!

というわけで、今回は、京風ライター・オオタカが、
茶の湯の世界をしっとりレポートしちゃいます。

というのも私、学生時代は京都にある
「裏千家茶道資料館」のご近所に住んでいたんです!
住んでいただけで、何の知識もないのが不安ですが、
肌がおぼえてるような気がします。

いざ、茶の湯の世界へおいでやす!
写真提供/裏千家 裏千家流宗家の茶室“今日庵”。こちら、重要文化財に指定されています。オオタカは学生時代、かなりご近所に住んでいました!

お茶の世界の“表”と“裏”って一体なに?



日常に潤いを与えるべく、本レポートでは様々なカルチャーに触れてきましたが、実はかなり早い段階から気になっていたことがあるのです。それは、茶の湯の表千家裏千家の存在。どんなカルチャーにもジャンル分けがあり、やり方や主義によって様々な流派があるものですが、名前に表と裏がつくなんて、ちょっと露骨すぎる気が。裏サイト、裏街道、裏ビデオなどなど、裏という単語には何かとイレギュラーなイメージがつきもの。やっぱり表千家が正統派で、裏千家が亜流だったりするのかしら?

「それは間違いです。表と裏は、流派が成立したときの茶室の位置関係を示しているだけ。千宗旦(茶の湯を大成させたといわれる千利休の孫)は、隠居するにあたって自分の息子たちにそれぞれ違う茶室を譲りました。家督とともに三男の宗左に譲ったのが不審菴、四男の宗室に譲ったのが今日庵です。不審菴は京都の寺の内通りから見て表側にあったため表千家となり、今日庵はその裏手にあったため裏千家を名乗るようになりました。ちなみに次男は、同じく京都の武者小路通りに官休庵を建て、武者小路千家を名乗っています」

こう教えてくれたのは、文教大学で日本茶道史を教える中村修也教授。『よくわかる伝統文化の歴史―黄金文化と茶の湯』(淡交社)などの著書を持ち、ご自身も研究の一環として裏千家流の茶の湯をたしなんでいるそう。

なるほど、表と裏に関しては完全に私の邪推だったんですね。ところで、茶の湯を大成させたのが千利休なら、始めたのは誰なの?

「正直、はっきりしないんです。唐から日本にお茶を飲むという文化が伝わったのが8世紀ごろ。その後、鎌倉時代に臨済宗の開祖・栄西が南宋から抹茶を点(た)てて飲む宋代の茶法を持ち帰り、公家や武士など身分の高い人々の高級なたしなみに。やがて町人などにも広まり、室町時代に流行したといわれています。室町時代以降、千利休が登場する戦国~安土桃山時代は、国内の各地で戦が行われていた時代。そんなストレスフルな時代だからこそ、癒やしや静寂を求めた日本人に茶の湯が流行したのかもしれませんね」

利休以前にもそんなに長い歴史が! ちなみに、茶の湯に現在のような複雑なお作法が成立したのは、江戸時代以降のことなのだとか。各流派特有の思想や美意識が育つとともに、抹茶を飲むという簡単なことが難しく、儀式的になっていったそう。「その世界観を楽しむには、お茶以外の道具や書、器に対する造詣も必要」(中村さん)なんですって。

一朝一夕に楽しめるカルチャーではなく、一生かけて探求していく類のものだってことですね。私もアラサーまでには「お茶を少々」なんてカッコいいことが言えるよう、若いうちから取り組んでみようかしら。
甘いお菓子を食べた後、おっかなびっくりで“薄茶”と呼ばれるお茶を飲む私。サントリー美術館の茶室「玄鳥庵」での点茶席(有料)の詳細は、取材協力のリンク先を参照のこと

カフェ感覚で点茶体験!? 普段着で楽しめる“茶の湯”



お出かけすると「ちょっとお茶でも」って気分になりますよね。お茶といえばコーヒーなんかが普通ですが、カルチャーに触れることで日常に潤いを! ともくろむ私としては、わずかな機会も見逃せません。カフェ感覚で、文化的なお茶=茶の湯体験がしたい!!

そんなワガママな私が発見したのは、サントリー美術館内で行われる点茶席(抹茶と季節の和菓子を食べる席)。展覧開会期中で隔週木曜日なら、予約なしで体験できちゃうんです。というわけで、さっそく潜入! ワンピースにストッキングというまったくの普段着ですが、やっぱり着物以外は入室厳禁!?

「洋服で参加できる点茶席もありますよ。ただし、ストッキングや素足はマナー違反。白い清潔なソックスを持参して、会場で履き替えるのがマナーです。また、席入り前にはアクセサリーや時計などもはずします。でも、ここではくつろいでお茶会の雰囲気を味わってもらいたいので、素足でもデニムでも大丈夫です」

教えてくれたのは半東(はんとう)といって、お茶を点(た)てる亭主の補助役の方。お客様に茶器や床の間の飾りつけなどを説明する役目があります。少人数のお席なら亭主が半東も兼ねてお茶会が進行していきますが、人数が増えると説明するお役目の人がいるのだそう。

何から何まで初めてな私。点茶席って、一体何を楽しめばいいんでしょう?

「お菓子とお茶を楽しんだ後に、器やお茶を点てるのに使った道具類、さらに床の間に飾られたお軸、お花、お香などを拝見するのが習わし。初めは何を見ればいいかわからないでしょうが、心に残ったものから勉強していけば、知識が増えて楽しくなるはずですよ」
床の間を“拝見”してみるものの、知識がないので何を見ればいいのやら…。ちなみに取材日は4月初旬だったため、お花見をテーマに飾り付けられていました
なるほど、茶の湯は書道や華道、香道など、いろいろなジャパンカルチャーへの入り口でもあるんですね。でも、お作法や決まりごとが多くて、正式な点茶席は正直大変そう。どうしてわざわざ難しくお茶を飲むんでしょう?

「お茶の世界では一期一会という考えを大切にしているんです。この席での出会いは一度限りのもの。だからこそ心をこめてもてなし、お客もその心遣いを台無しにしないよう気をつけます。いろいろなお作法は、場を気持ちよく楽しむためのもの。難しく考える必要はないんですよ」

複雑なお作法にはそんな意味が! ちなみにこの日の点茶席には、ほかにも数人のお客様が。外国の方が来ることもあるそうですが、お菓子の食べ方やお茶の飲み方も教えていただけるので、ノープロブレムでした。

皆さん、私のトンチンカンな質問や不審な挙動に苦笑しつつも、温かく受け入れてくださって感謝です! お作法的にはメチャクチャでしたが、一期一会の精神だけは実践できた気がします! どうも! 大和撫子・オオタカです。
いつになくしっとりした(?)茶の湯レポート、いかがでしたか?

冒頭でも申し上げたとおり、京都に住んでいたことがあるので、
個人的には前編の裏表の由来がわかってスッキリです。
ご近所さん(裏千家茶道資料館)には、そんな事情があったんですね。

ただし、やはりご近所に住んでいただけでは
何の足しにもならないことが後編で発覚。
私のお作法は、お茶席でも失笑を買っていました。

茶の湯の世界は、勉強あるのみ!
この道を究めるには、
相当なジャパンカルチャーに触れる必要がありそうです。

というわけで次回は、日本映画の草創期について。
日本最古の映画はどんなものなのか、
活弁士ってどんなお仕事なのか、
ガッチリレポートしていきたいと思います。

「実は学生時代、茶道部だった」的な個人的な告白から、
「茶道についてこんな情報持ってるぜ」という頼もしいお便りまで、
みなさまからのご意見・ご感想を楽しみに待っています!

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