あの時の話、聞かせてください!

第9回 ダンディ坂野の一発屋と呼ばれて

2009.06.10 WED

あの時の話、聞かせてください!


じつは、お笑いの世界に入ったのは26歳と遅めだったというダンディさん。最初はコンビも組んでいたが、年齢を考えてピンで活動するようになったとか

はじめからわかっていた「ゲッツ!」ブームの終焉



生き馬の目を抜く芸能界。去年、売れていた芸人が、今年見なくなったというのはよくある話。
「ゲッツ!」で一世を風靡したダンディ坂野さんも、しばらくテレビで見かけなくなった一人だ。

しかし、人生山あり谷あり。ここ1年ほどのあいだに、ダンディさんをお茶の間で見る機会が急速に増えた。

昨年末には、書籍『こんなに元気です。』(エンターブレイン)も出版。 一発屋というイメージを逆手にとっているかのようだ。

「ゲッツ!」での大ブレイクから6年。ダンディさんは何を見たのか。

「芸人さんって下積み時代がつらいってよくいわれますけど、今振り返ると楽しかったですね。ずっとファストフード店でバイトしてて、若い人が多いので和気あいあいと。つらかったのはテレビに出始めてから(笑)。『爆笑オンエアバトル』という番組がきっかけとして大きかったと思うんですけど、審査形式で得点が良かった芸人が放送されるんです。連敗続きだったので、正直きつかった。準優勝はとったものの、5連敗しまして。スタッフも心配してくれたのか、5連敗後に勝ったとき、焼肉に連れていってもらったんですよ。そこで、『ダンディさんは記録よりも記憶に残るスタイルだし、オンエアされた時の反響も大きいので、勝ってほしい』みたいなことをいわれて。がんばれっていわれても、どうしていいかわからないんですけどね。まあ、本当はありがたい話で、『爆笑オンエアバトル』のおかげでようやく認知されるようになりました」

『爆笑オンエアバトル』には、22回チャレンジしてトータル7勝、勝率は約3割。ハッキリ言って成績は良くない。だが、ダンディさんの異色のスタイルは視聴者の記憶に刻み込まれていた。
某イベントで「ゲッツ!」をキメるダンディさん。この日は、尻を向けてキメる「ケッツ!」なども披露。自虐トークも、なかなかウケていた
「番組でDVDを出してくれたんですよ。勝率3割しかない芸人でDVDが出たのは僕だけらしいですね。アンジャッシュとかアンタッチャブルは、勝率8割とか9割なんです。思わず、僕のだけ値段が安いんですかって聞きましたよ(笑)。その後、僕のDVDがダントツで売れてるって言われまして。うれしかったですね。マツモトキヨシさんのCMの効果も大きかったと思います。オーディションがあるって聞いて行ったら、もう黄色いスーツが置いてあったんですよ。ドッキリかなと思ったんですけど(笑)。そのCMで知名度が上がったから売れたというのもあるでしょうね」

2003年、ダンディさんの人気はピークを迎える。全国では「ゲッツ!」を真似する小学生が大量発生。野球選手のラミレスまで「ゲッツ!」を披露していた。

「じつはブレイクしてた時期もつらかった。1回目はいいんですよ。『ゲッツ!』が見られたって喜んでくれるんですけど、1周したら終わりじゃないですか。ブームが続かないというのは、ブレイクした夏からわかってたんです。ただ、スケジュールは埋まってて、その後どうしようっていう手立てもないままに走ってました。2003年は年末まで休みがなかったですね。全然寝る時間もなくて、ノイローゼじゃないですけど、とにかく疲れて。あと、ワイドショーとか雑誌が、すぐ終わるみたいなことを言い始めてたんですよ。まあ、芸人なんで言われるのはしょうがないんですけど、別にそんなこと言わなくても。ちょっと、そのころマスコミに不信感が生まれましたね(笑)。当時のことを考えると、もっとがんばれたんじゃないかって思う反面、今はもう無理だなと思います。僕、もう42歳なんですよ(苦笑)」

いろいろな原因はあったにせよ、結果的にブームは長く続かなかった。
ダンディさんは一発屋の代名詞的存在になった。
この派手なタキシードスタイルは、80年代のアイドルをイメージしているらしい。お気に入りのアイドルは田原俊彦さんだったそうだ

タキシードは脱がない!目標は現状維持!



2003年、「ゲッツ!」でピークを迎えたダンディ坂野さんの人気も、翌年には下降。
すっかり、テレビで見かけなくなっていった。ものすごい勢いで燃え上がっただけに、鎮火するのも早かった。
テレビからほとんど消えた数年間、ダンディさんは何をしていたのか。

「何してたと思いますか。営業? じゃあそれでいいです(笑)。ほかに何があると思いますか。ドラマにも出てた? じゃあそれで(笑)。いや、実際そんなもんですよ。バイトするわけにもいかないですし。僕的には休み時間もできて、結構いい日々でしたね。休んで休んで、仕事してという感じで週3~4日ぐらい働いて。ただ、ブレイクが終わった直後は、やりにくかったです(笑)。ネタ番組が増えてきたころだったんですけど、見飽きたという扱いになってたんで。出てないと思われるのも困るし、逆に出ても損してるんだったら痛々しいだけじゃないですか。風当たりは厳しかったですね。営業は、知名度も上がって、かなりお客さんも集まってくれたので、よく行ってました。正直ブレイクした年より、収入の面では良かったように思います。でも、テレビでの扱いはしんどかった」

出演が激減したとはいえ、まったくテレビから消えていたというわけではない。2006年までは『3つのとびら』というNHKの教育番組のレギュラーも持っていたし、バラエティのゲスト、地方CMなどにも細々と顔を出していた。しかし、転機になったのは、昨年からの『クイズ! ヘキサゴンII』への出演だろう。

「小島よしおが出始めたころに、紳助さんが『クイズ! ヘキサゴンII』で、『お前のところのダンディ、何しとんねん。一回、呼んだれや!』って言ってくださったんですよね。それで、『お前なんかが普通の点をとってもアカンやろ。世間なんてかわいそうな目でお前を見てる。だったら勉強して、そこそこ4位くらいはとって1位を目指せや!』って出させてもらったんです。その通りだなと思って。僕、高卒であんまり勉強してなかったんで、収録前にはいつも勉強してるんですよ。おかげで、そこそこ仕事が入るようになりました。仕事が多いというと、またなんか叩かれそうだなあ。会社のFAXとかコピー機のレンタル分ぐらいは貢献してると思うんですけどね(笑)。ちょくちょくテレビで見かけるくらいにはがんばりたい。現状維持が目標です。この世界だと、今よりプラスでやっていかなければ現状維持ができないんですよ。普通に出てたら、また急降下しますから(笑)」
渾身の勢いでカメラに向かって「ゲッツ!」をキメてくれました。指の角度、力の入り具合、表情ともにパーフェクトな100%の「ゲッツ!」です!
人気商売は、つくづく厳しい世界だ。浮上してくる若手はいくらでもいる。そのなかで自分をアピールしていかなければならない。

「同じことをやってても飽きられますけど、キャラは変えられないんですよね。僕が、このタキシードを脱いだら、また一からやり直しですよ(笑)。変えるとしたら、じつは子煩悩なんですとか、これでスポーツ万能なんですとか、付加価値をつけるしかないんじゃないかと。黄色いタキシードでゲッツやってるけど、料理を作るのが得意ですとか。目指すべきところはそっちかなと。こんなことを言うと、すごく考えてますね、とか言われそうで嫌なんですけど(笑)」

じつは、ダンディさんは映画やドラマなど、俳優業もこなしていたりする。今年の夏には、ミュージカル『アルプスの少女ハイジ』にも出演する予定だ。

「僕みたいな人間が俳優をやるというのも面白いと思うんですよね。基本的に滑舌が悪いので、オファーされたら努力しますという姿勢でやってますが(笑)。役が近い人の演技を見て真似したりしてます。今は、きた仕事を精一杯やるだけですね。一発屋芸人として呼ばれたら、それで出るし。僕が一発屋を代表しなきゃという気持ちもあります。再ブレイクしてるかといえば、してないわけで。再ブレイクしたいですかって聞かれて、したくないって言うのも生意気だし、したいですって言うのも妙に本気っぽくて引くじゃないですか(笑)。自分の技量に合うポジションで、地道にやっていければいいんですけどね。好きで目指した芸能界ですから」

終始、抑制の利いた口調でダンディさんは語った。
自分のキャラをしっかりわきまえているのだ。
売れようが、売れまいが、「ゲッツ!」とポーズをキメるダンディさんはすがすがしい。 インタビューを行う前、某イベントにゲスト出演したダンディさんを見た。
往時とまったく変わらぬスタイルで、「ゲッツ!」でしっかり笑いをとっていた。

これはなかなかスゴイことだと思う。
そもそもダンディさんの芸風はスベリ芸である。
これほど安定したスベリ芸はめったにお目にかかれない。

やっとフラットな目で、ダンディさんの芸を見ることができるようになったのだろう。
生涯、「ゲッツ!」を続けてほしい。

この企画では、毎回インタビューの感想やご意見を受けつけています。気楽にメールくださいませ。さて次回は、80年代後半から90年代初頭にかけて、社会現象になるほど爆発的人気を誇った光GENJIの諸星和巳さんが登場します! ご期待ください。

ではでは、また!

■ダンディ坂野プロフィール
1967年生まれ、石川県出身。1996年、ダンディ坂野として活動開始。ハリウッド仕込み(?)の粋なジョークを巧みに使い、「ゲッツ!」のキメゼリフで、注目を浴びる。その個性的な芸風から「超天然紳士」の異名をとる。バラエティ番組を中心に、映画、ドラマ出演など幅広く活動している。

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