魅せ腕時計のイロハ

第7回 最新腕時計はどれだけ水に耐えられる?

2009.10.15 THU

魅せ腕時計のイロハ

「生活防水」と「潜水防水」の違いに注意が必要!



腕時計をしたまま手を洗ってしまったり、はたまた外出中に突然の雨に降られたり…なんていうのは、日常にありがちな話。こんなトラブルから腕時計を守っている大切な機能が、防水機能。地味なポイントなので、普段は見落としがちですが、この機能があるおかげで、ボクらは水まわりや雨の中で腕時計を着けたり外したりと面倒な思いをしなくてすんでいるわけですね。

そこで今回は腕時計の“防水機能”に注目。少し調べてみたところ、防水機能は、その目的によって「生活防水」と「潜水防水」の2つに分けられることがわかりました。前者は、前述のようないわゆる日常の“プチ水難”から腕時計を守ってくれるもの。後者は、ダイバーズウオッチなどに使われている本格的な防水仕様のこと。パッと見、潜水防水タイプであるダイバーズウオッチの方が、頑丈そうな作りであるのはなんとなくわかるものの、具体的な機能性の違いまではちょっと…。そこで、シチズン時計技術開発本部の松村修さんに、腕時計の防水機能についてお話を聞いてみました。生活防水タイプと潜水防水タイプってどこがどう違うんですか?

「まず、それぞれの防水手段が違います。生活防水タイプの中で薄型が要求されるデザインのものは、接着防水といって、文字通り接着剤によって防水されています。紫外線を当てたり、温度を上げたりすることで固まる特殊な接着剤なのですが、日常生活では、さほど高い水圧に耐える必要がないので、ダイバーズウオッチのような厚みを出すことなく、コンパクトな防水構造とすることができます」

日常よく使われる薄型タイプの腕時計は、この接着防水構造が多く使われているんですね。では、ダイバーズウオッチは、もっと本格的?

「こちらは直接圧入方式といって、腕時計本体のケースとガラス、裏蓋の間にパッキンとして合成樹脂リングをはめ込むことで、水の浸入を防ぐ方法を採用している構造が主流ですね。この場合“テフロン”という合成樹脂を主に使います。正確に言うとテフロンは商品名で、“ポリテトラフルオロエチレン”が正式名称なんですが。ほら、フライパンの表面コートに使われているでしょ? 熱や調味料などの侵食にも強いし、現在発見されている物質の中で最も摩擦が低い。摩擦が低いということは、本体とガラスの間に挟んで強い圧力を加えてもうまく組み込める、という利点があるんです」

なるほど。本体とガラスを強い力でぎゅっと閉じることで、接着剤で閉じるよりも、水が入りにくくなるんですね。他にも潜水防水で特別なことってあるんですか?

「潜水防水の場合、水の浸入を防ぐだけではなく、水圧も考慮しないといけません。たとえば、1000m防水という深海でも使えるタイプの風防(ガラス)には、サファイアガラスを使っています。これは地球上でダイヤモンドの次に硬い物質。カッターで削ろうとしても傷がつきません。仮に傷が入ってしまうと、水圧がかかった時にヒビや割れの原因になるので、より傷のつきにくい硬い物質が望ましいのです」

水深1000m用の腕時計があるんですか!? スゴイですね!
水に入ると自動的に水深計測を始めるダイバーズウオッチなど、最新の防水腕時計ではオプション機能の進化も著しい
「実は、防水の性能をさらに詳細に分類すると、4段階の仕様があるんです。一番シンプルなのは“日常生活用防水”といって、洗顔や洗い物時の濡れや雨に対応できるレベル。この上が“日常生活用強化防水”といって水上スポーツに対応できるもの。その上が水深200mから300m程度までの“潜水防水”、水深1000mまでの“飽和潜水用防水”というものが最高レベルになります。さすがに、これはプロダイバー用ですから一般の方が使う機会は少ないと思いますが」

いえいえ! そんなタフな腕時計を身に着けたら、なんとなーく自分も強くなったような気分になれそうで、本格的なダイバーズウオッチも欲しくなってきました! 確かに水深1000mまで潜るなんて機会は永遠になさそうですが…。そういえば、ボクの周りのダイバーズウオッチ愛用者にも、この夏はプールにすら行かなかった…、なんて人もいたなぁ。やっぱりオトコは“強さ”に憧れてしまう生き物なのかもしれませんね!

防水機能開発のため、太平洋に腕時計を放流!?



普段なにげなく使っていて、あらためて意識する機会の少ない腕時計の防水機能。実は、雨や洗い物など日常の水濡れに対応できる程度のものから、水深1000m対応のものまで、防水のレベルにもいろいろあるそう。

水深1000mの世界なんて想像つきませんが、そんな深海でも使える腕時計が、一朝一夕にできたはずがありません! きっと腕時計内部の機構と同じくらい、その進化には長い開発の歴史があったに違いない!

そこで今回はそんな腕時計の防水機能の発展の歴史に焦点を当て、シチズン時計技術開発本部の松村修さんにお話を聞いてきました。そもそも腕時計の防水機能って、いつごろから始まったものなんでしょうか?

「第一次大戦前後には、防水ケースに時計を入れて、それごと腕に着ける、というタイプがあったようです。ダイバーズウオッチが普及するのは第二次大戦後になりますが、もちろん初めは海外での話。日本国内では、昭和34年(1959年)にシチズンが発売した『パラウオーター』という製品が、国産の防水腕時計第1号になります」

国内初ということは、その開発や実験にもかなり力を入れたのでは?

「パラウオーターでは、昭和38年(1963年)の6月9日、時の記念日にあわせて、房総半島から『太平洋横断テスト』が実施されました。専用ブイに腕時計をつけて、黒潮の海に投入し、その防水性能を実証したんです。この結果、国内で28個、アメリカとカナダでも1個ずつが回収されました。さらにその後、数年にわたって時の記念日に同様の実験調査を行っています」

うーん、愛するわが子のような自社製品でも、その防水性を確かめるためなら、迷わず海に放り込んでしまうとは! なんてスパルタ! 腕時計の防水機能は、ハードな実験と開発を重ねることで鍛え上げられてきた歴史があるんですね! そう考えると、当時と今では防水の仕組みは格段に進化してそう!

「基本的な仕組みは変わっていませんが、素材の改良により、当時よりも深い水深まで耐えられるようになりました。が、一方で、水に濡れると電池や電子回路がすぐにショートしてしまうクオーツが主流の現在では、浸水のリスクはより大きくなっています。水圧への耐久性がより重要度を増しているわけです。なので、水圧耐久の実験は力を入れて実施していますよ。たとえば、一般的な直径32mmのガラスを使った腕時計の場合、潜水時のガラスにかかる荷重は水深200mで160kg、水深1000mだと800kgにもなります。耐久テストの際には、これらのさらに1.25倍の圧力を加え、1時間耐えられるかどうかを実験するんですよ。どれだけ頑丈にできているか、わかるでしょう?」
これが国産初の防水時計。現在ではそれほどめずらしくない腕時計の生活防水機能も、当時の精密機器としては画期的だったのだとか
す、すごい! 防水は、「水が入らない」というだけじゃなく、水圧に耐えうる頑丈さも大事なんですね。海に放り込まれたり、ものすごい圧力を加えられたり…とてもじゃないけどボクには耐えられそうにありません。そんな過酷な試練を乗り越えて完成した腕時計なんて、それだけでなんだかすごく頼りがいのある感じがしますね。ダイバーズウオッチをしている人がオトコらしく見えるのは、この腕時計が持っているそんなたくましさが感じられるからなのかも!? 腕時計といえば、これまでの連載で紹介してきたような「クロノグラフ」や
「ムーンフェイズ」といった、デザイン面やオプション機能面にばかり目が行きがち。

なかなか注目されにくい防水機能ですが、実はすごく考えられていて、
今日の腕時計の発展への寄与も大きかったんですね!

特にダイバーズウオッチをはじめとする“潜水防水”機能は素材の改良とともに、今も進化し続けているよう。
これからも未知の世界をダイバーとともに切り開いてほしいです!

今後の調査の参考に、腕時計に関する皆さんの疑問や意見を聞かせてください。お待ちしています!

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