テレビゲーム文化考

第9回 ゲーム音楽はどうやって作られるの?

2009.10.29 THU

テレビゲーム文化考


1本10~20万円ほどするというPC作曲用のソフト「ビエナ」シリーズ。ソフトは楽器の種類ごとに分かれ、オーケストラをすべて揃えると200万円くらいかかるとか…

ゲーム音楽ってどうやって作ってるの?



テレビゲームの大切な要素音楽。

ゲーム内の街に入ると和やかな曲が流れたり、ボス戦ではハラハラさせる緊迫感のある曲が流れたり、気分を盛り上げてくれます。聞き慣れると、ついついその曲を口ずさんでしまったりなんてこともありますよね。

そんなゲーム音楽って、どうやって作っているんでしょう? やっぱり全部PCで打ちこんで作っているんでしょうか? PS3の『龍が如く3』やWiiの『428 ~封鎖された渋谷で~』など、多くのゲーム音楽制作を手掛けるノイジークロークの坂本英城さんに聞きました。

「基本的にはPCでの打ちこみですね。作曲の際には、PCと接続した鍵盤を使い、演奏しながら打ちこんでいく人もいれば、マウスで楽譜をポチポチ書いていく人もいます」

PCで作曲する場合、作曲を行うためのシーケンサーと呼ばれるソフトの他に、ピアノや弦楽器、管楽器など様々なソフトウェア音源を追加することで、クオリティの高い音を生み出せるそう。例えばピアノのソフトウェア音源の中には、あたかも生で弾いているかのような自然な強弱や演奏の揺らぎが表現できたり、ヤマハやスタインウェイなど、メーカーによって違う様々なピアノの音を再現できるものもあるのだとか。

「最近はゲーム機本体の性能が上がっていますから、音楽もよりハイクオリティなものが求められます。実際に楽器を演奏して、スタジオで録音することもありますよ。その場合、お金がかなりかかってしまいますが(笑)。実際にPSPの『勇者のくせになまいきだ。』というソフトでは、リコーダーやピアニカなどの楽器を演奏し、すべてスタジオで録音を行いました」
坂本さんの作曲環境。PCにはキーボード(鍵盤)が接続され、このキーボードからも入力できるようになっている
『勇者のくせになまいきだ。』シリーズの音楽は、ゲームのグラフィックに合わせ、懐かしさを演出するために、小学校の授業で使う楽器だけで演奏されているそう。録音した生音がそのまま使えるなんて、昔の単調なゲーム音楽に比べて、ずいぶんと進化しているんですね。でも、逆に考えれば、限られた音数で印象深いゲーム音楽を作らなければならなかった昔のクリエイターも、ずいぶん大変だったんでしょうね。

「そうですね。ファミコンなんかは一度に4音までしか出せず、その制限の中で効果音も発音しますので、作曲においては工夫が必要でした。そんな厳しい制約の中で多くの心に残る曲を生みだした『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』シリーズはすごいと思いますね」

今でも続いているシリーズでも、メインテーマはファミコンのころに生み出されたものがたくさんあるそう。

「例えば『ゼルダの伝説』のテッテテー テッテレレレレー♪という、フィールドで流れるBGMもファミコンのころからあります。今でも『ゼルダの伝説』のあの音楽といえば、あのメロディーを思い出しますよね。音楽はゲームの印象を決定づける重要な要素だと思いますよ」

なるほど。今度ゲームを遊ぶ時は背後に流れるBGMも意識してプレイしてみますね!
世の中の様々な音が収められた「音素材集」。分厚い目次には「タクシーのトランクを開ける音・閉める音」などがズラリ

ゲーム音楽と一般音楽の違いとは?“効果音”収録の過酷な舞台裏



テレビゲームの大切な要素であるゲーム音楽。かつては「ピー」とか「プー」とか鳴るコンピュータ音で作られていましたが、最近ではハード性能の進化もあり、スタジオで録音される場合もあるそう。

そうなると、J-POPなどいわゆる一般的な楽曲の制作環境とあまり変わらないですよね。ゲーム音楽ならではの工夫や苦労などはあるのでしょうか? ゲーム音楽制作会社・ノイジークロークの坂本英城さんに聞きました。

「聞く立場からすると、ゲーム音楽は何度もループして聞くことになる音楽なので、聞き飽きない、耳障りじゃない曲が望ましいと思います。作る立場からすると、音楽ファイルの容量を小さく抑えつつ、高い音質をキープしなければならないという難しさがあります。逆に、そこがゲーム作曲家の腕の見せ所でもありますね」

最近の高性能なハードでは作り出す音の制約は少なくなってきているものの、ゲームハードである以上、容量の問題はどうしても残ってしまうそう。携帯ゲーム機では、現在でも同時に発音できる音数の少ないものがあり、より制約は厳しくなるのだとか。

ゲームハードの進化によって、ゲーム音楽の制作面で変わった部分はありますか?

「特に効果音の部分では変わりました。最新のゲーム機のリアルな映像に合わせるために、効果音もよりリアルなものが求められるようになりました。例えばコップひとつ置く時の音にしても、ジョッキを木のテーブルに置く場合と、ワイングラスをアルミのテーブルに置く場合では全然違う音になるんです。そういった材質や、重さの違いまでも効果音で表現しなければならなくなりましたね」
取材にご協力いただいたノイジークロークの皆さん。右から坂本英城さん、作曲家のいとうけいすけさん、ビンタ音の収録のために実際にビンタされたという湯川 強さん。「闘魂を注入されました」と湯川さん
効果音を作る場合、実際に物の音を鳴らして録音するほか、「音素材集」と呼ばれる様々な音が収録されたCDを利用して作ることもあるそう。

「例えばこの『OPEN&CLOSE』というCDには、世の中のありとあらゆるものを開けたり閉めたりする音がひたすら入っています。ドアとか、車のトランクとか、ペンケースとか。しかし音素材集にも、どうしても入っていない音があり、そういった時は自分たちで録音した方が手っ取り早いですね」

どういった音を自分たちで録音するんですか?

「例えば物を食べる音です。『龍が如く3』では、鳥肉を食べるイベントシーンの音を録るために、社員がケンタッキーのフライドチキンを山ほど買ってきて、骨までかみ砕き、飲み込む音を口元にマイクを寄せて録音したりしました。他に、平手で人を殴りつけるイベントシーンでは、実際に私がうちの社員の頬をビンタして録音したのですが、終わった後から『これ、手と手をたたくのでも同じ音が出たね(笑)』と気付いて社員に謝ったり、いろいろありました(笑)。この他にも、様々な工夫をして録音をしています」

そ、壮絶ですね。今度からは効果音の裏側も想像しながらプレイします! ゲームをプレイすると、どんな場面でも流れているゲーム音楽。

効果音ひとつとっても、
その裏には、少しでも高いクオリティを求める
クリエイターさんがいるんですねぇ。

普段はあまり気にすることはありませんが、
今度プレイする時には音楽・効果音にも思いをはせながら遊びたいと思います!

さて、このコーナーでは、
皆様のゲームにまつわる疑問・不思議なことなど、
様々な意見を広く募集しています。

「ゲームソフトの価格ってどうやって決まってるの?」
「芸能人の名前がついたゲームって売れるものなの?」
「『シェンムー』の続編はどうしても出ないの?」
などなど、疑問や意見がございましたら、
からぜひお便りください!

ひょっとしたらあなたの意見から生まれた企画がR25.jpに掲載されるかもしれませんよ!

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