魅せ腕時計のイロハ

第9回 カレンダー表示機能の不思議

2009.11.12 THU

魅せ腕時計のイロハ

クオーツ式で普及したパーペチュアルカレンダー



1日24時間を繰り返す時刻表示とは違い、カレンダー表示は日数が不規則。腕時計でカレンダーをきちんと表示するには、何か複雑な仕組みが必要なのでは?
そこで、シチズン時計・マーケティング本部の木﨑信尚さんに腕時計のカレンダー機能について聞いてきました。
そもそも腕時計のカレンダー機能はいつごろからあるんですか?

「記録上では200年以上前にヨーロッパで作られたようです。ただ、腕時計ではなく、携帯時計として。シチズンでは昭和27年に『シチズンカレンダー』という商品を発売したのが最初。これは“3機能型”といって日・曜日に加えて月も表示していました」

ここで、シチズン初のカレンダー付き腕時計の実物を確認。現在主流になっている日窓表示ではなく、クロノグラフのように小さい針が日・曜日を示し、文字盤を囲んで刻まれた12の月数を秒針のような針が指す仕組みになっています。

「現在のような日窓表示になったのは昭和37年に発売した『ホーマーデート』という商品から。日と曜日の書かれた歯車を回し、窓枠に表示させています。ただ、月末には手動で調整する必要がありました」

やっぱりカレンダーの月末の誤差は、手動で直すものだったんですね。

「一般的な腕時計では、まだ手動のものもありますが、今では調整の必要がない機能のものが主流になりつつあります。パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)といわれる、うるう年の調整まで行ってくれるカレンダー機能なのですが、これを機械式の腕時計で実現するためには、非常に複雑な内部機構が必要となるため、一般の人には手が届きにくい高価なものでした。ただ、現在では、クオーツ式が主流になり、イレギュラーな動きもプログラムしてIC制御できるようになったので、パーペチュアルカレンダーも比較的安価に実現できるようになっています。現在では、100年先のデータまで入っているものもありますよ」

と、ここで、そのパーペチュアルカレンダー機能付きの腕時計を見せてもらいました(写真参照)。時刻に加え、年・月・日・曜日が針で表示されています。
200年分のカレンダーデータが入った腕時計。文字盤の上部にらせん状の年表示スケールが付いた文字盤のデザインが独特です。ちなみに使われている針は8本!
「現在からおおよそ100年前後、1900年から2100年までのデータが入っています。1900年3月1日から2100年2月28日までの200年間なら、自分が生まれた日が何曜日だったか、というのもわかります。1900年より後に生まれた人に限りますが(笑)」

側面に「未来ボタン」と「過去ボタン」があり、それぞれを押すことで任意の年代に飛ぶことができる。うるう年に関しては内蔵データを参照し、反映されるようになっているそう。
機械式からクオーツ式へ、という腕時計の技術進化は、カレンダー表示機能の進化にも深く関わっていたんですね! せっかくカレンダー付きの腕時計をするなら、こんな時計で「100年前の今日」に思いを馳せる余裕のある大人になるのもいいかもしれません!

技術も! デザインも! カレンダー機能の工夫の数々



腕時計のカレンダー機能は、月によって日数が異なるため、かつては月末に手動で修正するのが当たり前でした。が、クオーツ式でIC制御が可能になって以降、修正の必要ないパーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)が多くの腕時計で採用されるようになったそうです。

「さらに最近では、カレンダーの調整も電波で正確に行える電波時計が普及してきています」

そう語ってくれたのはシチズン時計・デザイン研究室の蒲谷晴通さん。カレンダー機能も、ハイテク技術の革新で、どんどん正確に、手軽になっているんですねえ…。

「ただ、カレンダー機能の改良とは、実はハイテクに頼ったものだけではありません。アナログ面でも改良を重ねているんです。たとえば、日窓に表示される数字に注目してみてください。同じ“2”でも“20”と“21”では形が違うんです」
腕時計に内蔵されている日車。同じ数字でも、日によって、かなり形の違うものがあることがわかる
ここで、日窓部分の日板を見せてもらったところ、確かに“21”の方が“2”の字が大きい(※画像参照)! これはいったいなぜ?

「できるだけ視認性を向上させるためです。たとえば、“20”と“21”の1の位の数字を見比べて見ると、“0”より“1”の方が幅が小さいので、“21”は“20”に比べ、その分、10の位の数字を大きくすることができるんです。このように、各数字をできるだけ大きく見せるため、数字のボリューム調整をそれぞれ行っています」

以前のカレンダー機能付き腕時計には、日窓部分のガラスにレンズが付いているものがありましたが、これも日にちの数字を見やすくするための工夫だったとか。

「他にも、“8”と“9”は形や大きさが似ていて間違えやすいので、いずれかの頭をわざと小さくしたり、持ち上がりを落としたりするなどの工夫もしています。カレンダーの数字は、日窓でその日の分だけしか表示されませんから、統一する必要がないんです。前の日の数字の形なんて、いちいち覚えていないでしょう?」

また、最近ではユニバーサルデザインが叫ばれ、だれにでも均等に使いやすく、というデザイン的な要求もあったよう。
200年分のカレンダープログラムや、電波時計による制御なんていうハイテク進化もすごいですが、こんな細かいところに気がつく洞察力もすごいですね。モノ作りってやはり最終的には人間の目と手と頭なんだなあ、と今回の取材で改めて思った次第です! 腕時計のカレンダー機能は、クオーツや電波時計など、
技術の進化によって、手軽さや正確さが増してきたことがわかりました。
が、今回驚いたのは、日付表示の書体の改良!
腕時計は、アナログで職人的な心意気も込められたアイテムだったんですね!

今後の調査の参考に、腕時計に関する皆さんの疑問や意見を聞かせてください。お待ちしています!

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