魅せ腕時計のイロハ

第10回 腕時計にもエコの波?

2009.11.26 THU

魅せ腕時計のイロハ

約720万個の使い捨て電池を節約!?



腕時計の電池交換をしたことはありますか? 腕時計の場合、電池交換は時計店にお任せの人が多いはず。ただ、これがなかなかおっくう…。気づけば、結局止まったままの状態で何年も家に置きっ放し…なんてことも多いのでは?

と、そんな電池交換のわずらわしさを解決してくれるのが光の力で稼動する腕時計。自動的に日常の光を吸収して発電&充電、稼働してくれるのが、このタイプです。今回は“エコ・ドライブ”の名前で、腕時計の光駆動システムの開発に携わっているシチズン時計 技術開発本部 吉岡憲一さんにお話を伺ってきました! まずは、その歴史から教えてください!
世界初の太陽電池を使った腕時計。文字盤のほとんどを太陽電池が覆っているのが特徴。この時計のデザインをモダンにアレンジしたモデルが、2008年に発売されたこともある
「開発のスタートは70年代初頭。オイルショックの影響などもあり、太陽電池が注目され始めたタイミングで、1974年に太陽電池を使った最初の試作機を発表しました。これは製品にはならなかったのですが、2年後の1976年に、世界初のアナログソーラーウオッチ『クリストロンソーラーセル』を発売しました」

当時の性能は、現在とは大きく異なるんですか?

「光発電システムと充電システムが両輪となって、現在のものは当時に比べてかなり進化しています。光の量に対する発電効率を上げ、さらに充電池の容量を大きくする開発を続けてきたんです」

初めは、太陽などの直射日光が必要だった発電技術は、今では屋内の蛍光灯だけでも充電できるようになり、デスクワーク中心のビジネスマンでも問題なく使えるようになった。さらに充電池の容量が増えたことで、製品化当初にはフル充電でも200時間が限界だった駆動時間は、現在では約6カ月が中心となっているそう。

「駆動時間を延ばすために、腕時計本体の電力消費を抑える取り組みも行われました。現在では4時間の室内光で1日動くというのが、電力消費の目安になっています。省電力化の取り組みのひとつが、“パワーセーブ”と呼ばれるもの。腕時計が暗闇の中に置かれ、一定以上の時間が経過すると、自動的に針を停止させる機能です」

針の動きは止まっても、時計内部では時間のカウントを続け、再び明るい所に出してから少しすると、時刻が自動復帰され、現在の時刻で動き始めるのだそう。画期的なアイデアのようですが、当初は課題もあったのだとか。

「初めの仕様は、できるだけエネルギーを減らさないよう、暗くなってから数十秒で針が止まるような設定にしていました。ただ、これだとシャツの袖で隠れたり、長めのトンネルに入ると、すぐに止まってしまうため、故障したと思われる方もいたようで。その後、設定時間を数時間に延長したのですが、やはり映画館から出た時に止まっていた、という報告があって…(笑)。現在では1週間程度の設定になっています」

あまりに節約しすぎて、止まる頻度が多すぎても使いにくい、と。
今ではめずらしくない太陽電池ですが、これを腕時計に採用するには、いろいろな苦労があったんですね。

ちなみに、廃棄される電池を生み出さないエコ・ドライブ機能付きの腕時計が、2005年から2007年の3年間で出荷された数は約720万個。すなわち、使い捨て電池約720万個の節約に貢献しているわけです。便利なだけでなく、文字通り、エコな腕時計!

「腕時計に使われている使い捨て電池は小さな電池ですが、“ちりも積もれば…”ですごい量になります」

忘れがちな電池交換もいらないし、地球にも自分にも安心ってわけですね!

採光パネルを隠すためのデザインと技術



発電と充電システム、それに加えて本体の低消費電力化によって、室内光でも効率のよい光駆動ができるようになった腕時計。使い捨て電池を使わないことで、実はエコロジーにも貢献しているのだそう。“エコ・ドライブ”の名称で光駆動の腕時計の開発に携わっているシチズン時計 技術開発本部の藤田仁さんに、その開発の歴史を伺ってきました!

「世界初の太陽電池を使った腕時計を発表したのが1976年ですが、この当時は文字盤のほとんどを採光パネルが覆っていました。駆動に多くの光が必要だった技術的な側面もありますが、当時としては斬新な商品だったので、特長を出すために、あえてこうしていた部分もあるんです」

70年代といえば、腕時計が機械式からクオーツ式に切り替わりつつあった時代。「太陽電池を使った腕時計」というのは、画期的なハイテク商品でした。事実、先鋭的なハイテク製品が人気だったドイツで発売された際は、大変な人気を博したそう。しかし、日本やアメリカでは、見た目や機能の斬新さが先行したこの製品に対しては、「もっと高級感のある腕時計でなければ…」という声が多かったのだとか。

「技術的に優れた製品が好まれるドイツとはちがって、腕時計を装飾品としてとらえる傾向の強い日本やアメリカでは、デザインに制約が多くなる太陽電池は搭載できない、といわれてしまったんです。当初は太陽電池部分を前面に出す設計・デザインでしたが、今度はこれをいかに隠すかということがテーマになったんです」

でも、隠してしまうと採光できなくなって発電しにくいのでは?

「そうなんです。光に当ててこその太陽電池ですからね。そこで、光量が少なくても発電・充電できる仕組みの開発が必要になったんです」

腕時計の高級感は、文字盤の美しさによる部分も大きいもの。そこで、文字盤に光を透過する素材を使い、文字盤の裏に採光パネルを隠す設計が採用されました。当初は、平らなプラスチックの板でしたが、射出成型技術により立体感を創出したり、光沢のある金属の質感を出すなどの工夫が続けられているのだとか。

「同時に、太陽電池にも技術革新があって、以前はほとんど透明な文字盤でしたが、現在ではデザイン性の高めるために透明度の低い文字盤を使っても発電を行えるようになりました。光を通す素材の開発にともない、高級感や質感の高いデザインが実現したのです」
最新式のエコ・ドライブ。中の採光部分が透けてしまうため、実現が難しかった文字盤の「白」もきれいに表現され、いわれなければ太陽電池内蔵とは思えない“普通の外観”
その後もさらに改良を進め、今では様々な表現ができるようになり、太陽電池であるかどうかは、パッと見ただけではわからないくらいまでに進化。現在、国内でのシチズン製品は約8割が光駆動(エコ・ドライブ)製品で、もはや標準搭載になりつつあるようです。電池交換がおっくうで、動かなくなった腕時計を何本も眠らせている、なんてことを考えると、エコ・ドライブは腕時計そのものをムダにさせない可能性も秘めているのかも! 光駆動の腕時計、エコ・ドライブの最大のポイントは、基本的に電池交換がいらないこと。
便利なのはもちろんながら、結果的に、廃棄される電池の量を削減し、
エコロジーにも貢献している、というのは新発見!

また、電池部分の改良だけでなく、光を透過する素材の開発も行われていたなんて、まったく知りませんでした!
“最先端の技術”と“普通のデザイン”の融合って、すごく大変なことなんですねえ…。

今後の調査の参考に、腕時計に関する皆さんの疑問や意見を聞かせてください。お待ちしています!

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