途方もなく天文学的な宇宙の不思議 第10回

光さえも吸い込む“ブラックホール”の作り方

2011.10.26 WED


「シュワルツシルト半径」は、1916年にドイツの物理学者・シュワルツシルトが一般性相対性理論の方程式を解いて導き出したもの。ある質量のものを圧縮すればするほど、時空の曲がりが大きくなって重力は強くなる。この極限がブラックホールなのだ ビジュアル/坂井大輔
現在、スイスのジュネーブ郊外に設置されたLHC(大型ハドロン衝突型加速器)を使って、世界一大がかりな素粒子実験が行われている。この実験にまつわる話で気になったのが、「ブラックホールが生まれるかもしれない」といわれていることだ。ブラックホールといえば、あらゆるものを吸い込んでしまう穴みたいなものだと認識しているが、そんなものが地球上に生まれたら台風どころの騒ぎじゃないはず。下手すると、地球が丸ごと吸い込まれてしまうんじゃないのか?

宇宙物理学者の佐藤勝彦さんに聞くと、「心配ありません」とのことで一安心。だが、その理由は、「LHCで生まれる可能性のあるブラックホールは極小サイズで、生まれたとしてもすぐに蒸発して消えてしまうから」。…えっ、可能性あり!? ブラックホールは人工的に作れるってことですか?

「ええ、少なくとも作り方はわかっています。ブラックホールを作るには、物質を一定の半径(シュワルツシルト半径)内に圧縮すればいいんです。この半径は質量に応じて決まりますが、太陽の質量であれば半径3km以内、地球の質量であれば半径9mm以内まで押しつぶすと、極端に大きくなった重力によって物体が際限なくつぶれていき、ブラックホールができあがります。厳密にいうと、ブラックホールは穴ではありません。極めて密度が高く質量が大きいため、光さえも脱出できないくらい強い重力を持つ“物体”なのです」

いまいちピンとこなければ、「パチンコ玉程度の大きさで地球くらい重いもの」をイメージしてみよう。この状態までものを圧縮できれば、あとは勝手につぶれてブラックホールになるってわけだ。もちろん、人工的に太陽や地球を押しつぶすことはできないが、ミクロの粒子であれば加速器という装置を使って圧縮できる。そして、その加速器のなかでもケタはずれの力を持つものが、LHCなのだ。

「LHCでは、限りなく光速に近い速さまで加速させた素粒子同士を正面衝突させる実験が行われます。従来の重力理論である一般相対性理論に基づくなら、このエネルギーでさえ素粒子をシュワルツシルト半径に押し込むのは不可能です。ただし、我々の宇宙が多次元空間に浮かぶ膜だとする“膜宇宙論”では可能かもしれません。話が長くなるので説明を省きますが、鍵になるのは“余剰次元の広がり方”。もしもLHCの能力でブラックホールが生まれた場合、それは人類が初めて目に見えないブラックホールの存在を確認することになると同時に、人間が知覚できる三次元空間(縦・横・高さ)以外の“別の次元”の存在を証明することにもなるのです」

なんだか話がオカルトじみてきたが、ブラックホールを作れるくらいなら、四次元ポケットがあったとしても不思議じゃないような気もする。僕らが知らないうちに、科学の最先端は別の次元に踏み出そうとしているのかもしれない。
(宇野浩志)

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