途方もなく天文学的な宇宙の不思議 第11回

この宇宙には、7つの“異次元”が隠れている!?

2011.11.02 WED


数学的には、4次元の超立方体も考えられる。線(1次元)は2つの点を端に持ち、面(2次元)は4つの線、立方体(3次元)は6つの面を端に持つ。ということは、4次元空間の超立方体は、8つの立方体を端に持つ形をしているはずなのだ。その形を無理やり2次元で表してみると…こんなかんじ?
「この宇宙は、我々が認識できない10次元空間を漂う“膜”のような存在なんです」

いきなりこんなことを言われたら、どう感じるだろうか。僕なら、口を開けてぽかーんとする。人によっては、こんなことを言う人とは目を合わせないようにしてそそくさと立ち去るだろう。だが、これが今の物理学界でもっとも注目されている新理論だとすれば…?

「宇宙論にも数々の立場があり、それぞれに異なる宇宙観があります。なかでもこの10年ほど注目されているのが、“超ひも理論”から発展した“膜宇宙論”。この理論によると、私たちが生きている宇宙は、空間10次元+時間1次元でできているというんですね」

こう教えてくれたのは、宇宙物理学者の佐藤勝彦さん。「次元」とは空間の広がり方を表すもので、人間は、縦・横・高さの3つの方向を持つ3次元空間に生きている。たとえば、0次元の点を横に動かすと1次元(線)、線を縦に動かすと2次元(平面)、面を上に動かすと3次元(立方体)ができる。だが、立方体を動かして4次元(超立方体)にする方向を、人は知らない。僕らは空間を3次元までしか認識できないのだ。

でも、4次元の方向すら想像もつかないのに、なぜ「10次元」という具体的な数字が出てくるのか? 佐藤さんによると、この数字は物質を構成する要素のうち、それ以上分割できない最小の粒子“素粒子”の研究によって出てきたらしい。現在、素粒子は数十種類も見つかっているが、物質の最小単位としては、数十もの数は多すぎる。そこで、物質の基本要素は素粒子ではなく、超ミクロの“ひも”ではないかと考えたのが、超ひも理論だ。

「超ひも理論によると、1本のバイオリンの弦が振動して様々な音を奏でるように、1種類の“ひも”が様々な方向に振動して、数十種類の素粒子に変化します。そして、この理論に基づけば、ひもが数十種類の素粒子に変化するためには、3次元空間だけでは足りない。計算によると、10とおりの振動の方向、つまり10次元の空間が必要になるんです」

たとえるなら、極小かつ無数の弦の音色が、10次元の奥行きに響きわたって織り成す壮大な音楽。それが、この宇宙の姿だというのだ。次元の数やひもの性質には諸説あるようだが、なかでも有力な理論モデルが、冒頭で触れた“膜宇宙論”。ただし、残念ながら僕らは異次元空間を見ることもワープすることもできないので、この理論を実証することは極めて難しい。実際のところ、世の科学者たちはどれくらいこの理論を信じているんだろう?

「正しさ、という意味では、膜宇宙論はまだ海のものとも山のものともつきません。ただ、宇宙物理学や素粒子という学問分野が目的としているのは、世界を支配している究極の統一理論を見つけること。多くの優秀な研究者たちが膜宇宙論に魅了されるのは、この理論が統一理論になる可能性を持っているからだと思いますね。もちろん、まだ実証可能な範囲で調べるべきことは多いので、物理学が統一理論に近づくためには、多次元の話ばかりでも困るんですが…」

宇宙に“ほかの次元があるらしい”ということはわかってきているものの、今のところは3次元の謎を解き明かすことでしか、異次元に迫る手がかりはないのである。僕が生きているうちにはとても無理だろうけど、一度でいいから10D映画を観てみたい!
(宇野浩志)

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト