途方もなく天文学的な宇宙の不思議 最終回

宇宙論の第一人者が語る、もっとも根源的な宇宙の謎とは?

2011.11.09 WED


佐藤さんの言葉で印象的だったのが、「物理学者は実験が理論の実証に成功するよりも、失敗したときの方がわくわくする」。理論が証明されることには意外性がない。ひとつ証明されると同時に新しい謎が見つかるから、物理学が前に進んでいくんだとか 写真/NASA/Jason Ware
宇宙物理学者の佐藤勝彦さんは、「物理学は、ミクロな素粒子からマクロな宇宙までをひとつの方程式で解き明かす、究極の統一理論を目指している」という。でも正直なところ、宇宙のすべてが解明されてしまうというのは、なんだか残念な気がしないでもない。もちろん知りたい気持ちはあるんだけど、宇宙は謎に満ちているからこそ面白い、とも思えるのだ。

これまで宇宙についての様々な知見を紹介してきたこの連載だが、最後となる今回は、宇宙にはどんな「謎」が残されているのか。そして、宇宙論の第一人者である佐藤さんにとって、今もっとも解き明かしてみたい「謎」とはどんなものなのかを聞いてみた。

「うーん、私にとって宇宙はまだまだ謎だらけですよ。なにしろ、宇宙全体の構成要素のうち、私たちが知っている原子が占める割合は4%に過ぎません。残りの23%は“ダークマター”と呼ばれる正体不明の物質、73%は“ダークエネルギー”と呼ばれる正体不明のエネルギーなんですから」

え? つまり宇宙の96%は、どんな素材でできているかさえわかっていないってこと?

「そのとおりです。目に見える物質なんて、宇宙全体のなかではほんの一部。私たちには“空っぽの空間”に関する認識がまだまだ足りない。“真空”とは何かということを知らなすぎるんです。とくにダークエネルギーの正体を突きとめることは、単に宇宙論だけの問題にとどまらず、物理学の根底にかかわる問題だと思いますね」

宇宙が何でできているかを知らないことには、究極の統一理論も完成しないわけですね。もし仮にその理論が完成したら、物理学にとっての謎はなくなると思いますか?

「私は、人間の“自由意思”についての疑問が残ると考えています。つまり、あらゆる事象が決定論的な物理法則に従うとすると、初期状態さえ決まれば、結果は予言できることになる。私たちが今こうしていることも、宇宙が生まれた瞬間に決まっていたことになるでしょう? だけど、なぜか私たちは、少なくとも自分にかかわるような未来は自分の意思で決めていると思えるわけです。いかに量子論が確率的な予言しかできないとはいえ、そう思えていることがもっとも大きな“謎”ですよ」

人間は自由なのか不自由なのか…って、これまた哲学的な話になってきましたね。

「哲学的な話にもつながりますが、私にはこれもやはり物理学の問題だと思えるんです。それも、統一理論をつくることと同じくらい重要な、21世紀の物理学が抱える課題なのではないかと。物理学と脳科学の分野をあわせて議論できれば、ひょっとすると何かヒントが得られるんじゃないかと思うんですけどねぇ…」

佐藤さんにとって宇宙論とは、「自分が住んでいるこの世界はどんなところなのか?」という疑問を、根源的かつ本質的に明らかにしていく学問だとか。いってみれば、究極の“自分探し”みたいなもの。このジャンルの謎は、未来永劫尽きることがないだろうな。
(宇野浩志)

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