無生物から生物を作り出すことも可能!?

人工細胞の作製で可能になることは?

2012.09.17 MON


生物学の分野と思われがちな人工細胞研究だが、実際には化学や工学など広い分野で応用が考えられている。「さまざまな分野を基礎とする若い方々が参入してくることで、研究分野が豊かになることを期待したいですね」(野村准教授) 写真提供/GettyImages
今年9月5日、菅原正東京大学教授らの研究チームが、化学物質を材料とした、自己増殖する人工細胞を作製したと発表した。これって要するに、無生物から生物を誕生させたってこと?

「いいえ、厳密には生物を生み出したわけではありません。しかし、自己増殖できる細胞を有機化合物などから化学的に作り上げたことは、すごいことなんです」

こう語るのは、東北大学工学研究科の野村慎一郎准教授。う~む、しかしその人工細胞でどんなことが可能になるのかピンとこない。そもそも人工細胞って何なの?

「ひと口に人工細胞といっても、その実態は3タイプに分類できると思います。現存の細胞(人間の細胞など)の機能を試験管内で再現する『リアル細胞型』、有機化合物などの材料を使って、プロトタイプ的な細胞を作り上げる『ありえる生命型』、分子レベルでの特定の目的に特化した細胞を作る『機能特化型』の3つですね」

菅原教授の研究は『ありえる生命型』のもので、この研究が発展すれば、無生物から生物を作り出すことも不可能ではないという。

「例えば、地球以外の惑星にも適応可能な生物など、新しい形の生命も予想されるでしょう。また地球上での生命誕生の起源を探る研究も進むはずです」

極端な話、ドラゴンみたいな空想上の生物を生み出せる可能性だってゼロではないわけだ。もちろんそんなSFのような目的のためだけに研究されているわけではない。人工細胞の研究自体が進めば、医療をはじめとする様々な分野に応用できるという。

「リアル細胞型の研究が進めば、細胞内のパーツを自由に操作可能になると思われます。そうなれば、細胞を原因とする病気の治療に役立つでしょう。また機能特化型の研究が進めば、バイオ材料から作った極小ロボットが実現するかもしれません。人体の特定部位だけに薬剤を届ける技術(ドラッグデリバリーシステム)、人体に安全で美味しい合成肉、皮膚細胞に作用して古傷を消し去る化粧クリームなど、あらゆる分野で役立てることができるはずですよ」

だけど、新たな生命を生み出すなんて少し怖いかも…。

「個人的には、宇宙人の探査と同じように、『新しい友達をつくる』ための研究だと考えています。生命は非常に貴重な存在ですから、その範囲が広がれば暮らしもより豊かになるのではないでしょうか」

科学の発展は日進月歩。見たこともないような新しい生命と出会える日まで、楽しみに待ちたいものだ。
(糸数康文/Office Ti+)

※この記事は2011年10月に取材・掲載した記事です

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