「セルフパブリッシュ」でKindle UK 売上トップに

自費出版からベストセラー誕生

2013.04.21 SUN


自分の文章を世に問いたい方に注目なのがKindle Direct Publishingだ。実際に買ってもらえるかどうかは内容次第だが、誰でも“作家”になるチャンスは開かれている Naomina / PIXTA(pixta.jp)
「あなたの原稿を本にします」こんな宣伝文句を、どこかで見たことはないだろうか?
それって自費出版? ぶっちゃけ売れるの?――そんなところが、R25世代の自然な感想だろう。

これは共同出版や書店流通型自費出版とも呼ばれ、作者が費用負担をすることで刊行した本を商業出版の流通ルートに乗せることを売りとするサービスだ。アマチュア創作家が作品を世に問う貴重な機会になっており、良心的な業者も存在する一方で、謳い文句と違って「大手書店には一冊も並ばないじゃないか」「費用負担が大きすぎないか」といった苦情が相次いでいることもまた事実だ。
 
そんなイメージをぶち破るニュースがイギリスから飛び込んできた。「セルフパブリッシュ」で、しかも既刊が一冊もない新人作家が、UK版Kindleストアの売上トップになったというのだ。作者はKerry Wilkinson。その処女作となるクライムノベル『Locked In』が、2011年第4四半期のKindle UKベストセラーに輝いた。

Self Publish(ing)を和訳すると、たしかに「自費出版」にはなる。しかし、Wilkinsonさんのケースには、われわれの想像する自費出版とは大きく異なる事情がある。

最大の違いは、紙の本ではなくe-book、つまり電子書籍で作品をリリースしたことだ。おかげで、印刷や配本にかかるコストが不要となるのはもちろん、実質的に費用負担ゼロで自作をリリースできる。
 
Wilkinsonさんが利用したのは、Kindle Direct PublishingというAmazonが提供するサービスだ。これは、作品のデジタルデータさえ事前に用意しておけば、ブログ作成のような一定の手順を踏むことで、電子書籍をKindleストアにアップできるというもの。書籍の販売価格も一定の範囲内で作者が決めることができ、著者印税は70%に設定されている(高額書籍の場合は35%)。

そう聞くと夢のようなサービスだが、現実のKindleストアには定評ある既存作家の作品が2.99ドルといった安値で並んでいる。そんなところに無名の新人が作品を売り出したら、たとえ0.99ドルでも売れるだろうか?――っていうか、あなたなら買いますか?

ならばWilkinsonさんの作品はなぜ売れたのか?

実はWilkinsonさんは決して特別なことをしたわけではない。彼は根っからのクライムノベル愛好家で、既存シリーズに飽き足らず、自分が読みたいものを書いただけだという。

「主人公のJessicaは意志の強い女性で、探偵=おっさんというステレオタイプなイメージとは違うし、かと言って、最後には愛が勝つといういかにも女性受けを狙ったストーリーでもない」と、インタビューで彼は語る。

クライムノベルはジャンル小説で、根強い固定ファンに支えられている。こうしたジャンルでは、ネームバリューのある大作家ならずとも、内容に目新しさがあれば固定ファンにアピールすることもある。Wilkinsonさんのケースでいえば、「こんな作品、ありそうでなかったよな」とファンサークルで口コミが広がるような作品を発表し、独自に起ち上げたウェブサイト(kerrywilkinson.com)でアピールに努めたことが、彼の成功につながったようだ。

Kindle Direct Publishingは残念ながら日本ではまだ利用できないが、日本語版Kindleの上陸も間近とささやかれるいま、日本版のローンチも時間の問題かもしれない。 これであなたもベストセラー作家になれる!?
(待兼音二郎)

※この記事は2012年4月に取材・掲載した記事です

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