高所恐怖症からスピーチ恐怖症まで…

○▲恐怖症はバーチャル療法で克服

2013.06.30 SUN


高所恐怖症は、体当たりで慣れようと思っても逆効果。いきなりハイレベルなものに挑戦するのではなく、少しずつ段階的に慣れることが克服の鍵だ
高さ634メートルの東京スカイツリー。話題のスポットで、世界一の高さを体験してみたいという人も多いはず! 一方、高所からの景色を楽しみたくても楽しめないのが“高所恐怖症”の人たちだ。なかには、「エレベーターに乗ることすら怖い」という人も少なくない。ところで、“高所”のほかにも“閉所”や“暗所”、はたまた“対人”まで、「〇〇恐怖症」と名のつくものは様々な種類が存在する。こうした恐怖症は、なぜ発症するんだろうか?

「まず恐怖症とは、特別な対象や状況に対し不合理な恐怖感を抱いている状態を指します。恐怖症は大きく4パターンに分けられ、高所や閉所などの『状況型』のほか、蛇やクモなどを恐れる『動物型』、人体に対する恐怖の『血液・注射・外傷型』、雷や嵐などを怖がる『自然環境型』があります」

とは、パニック障害やうつ病などの診療を専門とする、赤坂クリニック理事長の貝谷久宣先生。恐怖症発症のメカニズムは明確に解明されていないものの、生まれつき遺伝子に組み込まれているケースが多いと考えられているのだとか。とはいえ、なんとか克服する方法を知りたいところ。

「恐怖症は、行動療法(暴露療法)での治療が基本です。これは、恐怖の度合いの低いものから高いものへ、徐々に慣れさせていく方法。例えば高所恐怖症の場合は、実際にビルの窓から外をのぞいてみたり、エレベーターに乗ってみたり…というように、少しずつ恐怖の原因となる環境を克服していくのです。また、犬恐怖症の人であれば、まずは犬のイラストを見ることから始まり、次はぬいぐるみ、その次は写真や動画…と徐々に本物に近づけていきます。いずれにしても、大切なのは段階的に治療を行うこと。自分にとってもっとも怖いものにいきなり挑戦するのではなく、『怖かったけれど、大丈夫だった』という小さな成功体験を重ねることが重要です。恐怖の段階を飛び越えて体当たりでスカイツリーに登っても、ますます恐怖症が悪化するだけ。最初は誰かと一緒でもいいですし、手をつないでもらいながらでも構わないので、『大丈夫だった体験』をすることが肝心です」

ちなみにこのような行動療法は、バーチャルで体験することも可能だという。専用のヘルメットを装着し、3Dで構築された仮想空間で段階的に恐怖を体感・克服していくのだ。高所恐怖症のほか、飛行機恐怖症、雷恐怖症、スピーチ恐怖症にまで対応しており、1回の所要時間は50分または90分とのこと。

「個人差もありますが、単一恐怖症はうつ病などの合併症がない限り、スムーズに治る人がほとんどです。多くの人がバーチャル療法を2、3回受けたあとに本番に臨み、無事恐怖症を克服しています。また、不安感や恐怖は10~15分待てば自然と落ち着いてくるということも研究で分かっています。自分で行動療法を実践する場合でも、時間経過を待って『ドキドキしたけれど、我を忘れるほどではなかった』ということを体感することが大事です」

生活に支障をきたさない程度ならいいものの、仕事の都合で「どうしても克服しなければならない」状況に立たされた人は、試してみる価値がありそうだ。
池田香織(verb) 

※この記事は2012年6月に取材・掲載した記事です

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