サイエンスライター内田麻理香に聞くリケジョへの道

東大「理系女子」動機はガンダム?

2015.03.31 TUE


(写真提供/内田麻理香)
内田麻理香さんは、科学系記事の執筆から子供向けの講演まで、サイエンスの魅力を一般にわかりやすく伝えることを仕事にしている。その活動と同じくらい、そこに至る経緯は、ユニークで面白い。

「中学2年生のときに機動戦士ガンダムの映画に魅せられ、人が宇宙に住むなんて素晴らしいと思って理系の道に進んだんです。宇宙開発みたいな国家事業に携わるためには、やっぱり東大の理Ⅰを出ないといけないのかなと思って、高校時代は必死になって勉強しました」

その一念で本当に東大理科Ⅰ類に合格したのだから、ガンダムはすごい。いや、内田さんがすごいのか…。

「いい先生に巡り合えたこともあり、高校では化学や物理の魅力に目覚めました。化学の先生はちょっと変わっていて、教科書を使わず自作のプリントを用意して、すべて実験室で手を動かしながら教えてくれたんです。その授業は楽しかったですね」

もっとも、内田さんは根っからの理系女子だったわけではない。もともと読書が好きで、実は理系よりも文系科目の方が得意だった。幼い頃からピアノやバイオリンを習い、音楽にも興味があった。要は、好奇心がめちゃくちゃ旺盛だったのだ。高校時代の自分に伝えたいことがあるとすれば、その雑多な興味を受験と両立させて育んでほしい、ということ。

「受験勉強を気にしすぎて、ピアノやバイオリンをやめてしまったことが一番の後悔ですね。今でも練習すればピアノを弾けるとは思うんですが、楽器を人生の傍らに置いて、聴く側だけでなく、演奏者として楽しめたらよかったなあ、と思います。読書にしても、受験勉強の合間に軽い推理小説を読んだりはしていたけれど、頭がやわらかいうちにもっと幅広い本を読めばよかった。こんなふうに、雑食でひとつのことを突き詰めるのが苦手だったために、研究者になれなかったんですけど」

内田さんは大学院で修士課程を修了したのち、結婚を機に博士課程を中退する。その後、身のまわりの雑多な科学ネタを面白おかしく紹介するHP「カソウケン(家庭科学総合研究所)」を立ち上げ、今に至るのだ。

「ライターや講演をやっていると、サイエンスの魅力を理解したり伝えたりするためには、サイエンスの知識だけじゃだめだってことがよくわかります。いわゆる“教養”といわれるような基礎の部分。それこそ、政治でも経済でも歴史でもいいし、音楽や漫画にハマってもいいんですけど、もっと貪欲に、雑多な文化を取り込んでおけばよかったなと思います。私は今、そういう知識を一生懸命取り戻そうとしているんです」

最後に、自分が文系か理系かと迷い続けて天職に至った内田さんから、高校生に向けたアドバイスを。

「私が得意科目で進路を決めていたら、文系に進んで今の自分はなかったはず。もし進路に迷っているのであれば、結局は『好き』という気持ちを貫いた方が、後々面白いことが待っていますよ。あと、とくに理系が苦手な人に伝えたいのは、教科書や参考書から面白さが伝わってこないときは、身のまわりをよく眺めてみてほしいということ。私は一度科学の道から退いたときに気づいたんですが、家事や料理のように身近なところにも、科学は隠れているんです。そのことに気づくと、勉強が面白くなってくると思います」



●内田麻理香(うちだ・まりか)
1974年生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院工学系研究科修士課程修了。2002年に苦手な家事を科学的に解説するサイト「カソウケン」を立ち上げ、ニフティHPグランプリ特別賞を受賞。「ほぼ日刊イトイ新聞」で「主婦と科学。」の連載を開始する。現在は、執筆や講演など、幅広く活躍している。

(宇野浩志=取材・文)

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