SFの世界だけの話じゃなかった…

プリンタで臓器を印刷する!?生体器官印刷の驚くべき技術

2008.02.01 FRI


臓器プリンタによってプリントアウトされ作製されたチューブ。血管構造を模して、2重の筒状に作られている。 写真提供/中村真人准教授
コンピュータ上に描いた人体の設計図をもとにマシンが細胞組織を出力、人体を再生していく…。映画『フィフス・エレメント』 のワンシーンだ。いかにもSF映画らしいシーンだが、実は今、このような技術が架空の話ではなくなるような研究が進められている。 

なんと、インクジェットプリンタで細胞をプリントし、人工臓器を造ってしまおうというのだ。いったいなぜそんなことが可能なのか? プロジェクトを始めた東京医科歯科大学/神奈川科学技術アカデミーの中村真人氏に話を伺った。

「まずコンピュータ上に打ち出すべき生体組織の設計図を描きます。次にそれをインクジェットプリンタへ送る。インクの代わりに細胞を混ぜた液体を入れて特殊な溶液の中に細胞を打ち出すことで、細胞を人間の生体組織通りに配置し、3次元の組織を作り上げるのです」

移植医療に必要な臓器や器官。それらを構成する生体組織は、多種の細胞がミクロの世界で整列し、作られている。同じ構成で細胞を適材適所に配置すれば実際の生体組織が造れるかも知れない。超高速スピードでそれを実現しようと、中村氏はプリンタの活用を思いついた。研究を進めるにつれ、インクジェットに込められた高い技術に驚き、さらなる利点と可能性を感じたという。

「印刷された画像を顕微鏡で見てみると、各色のドットがとても規則正しく打たれていました。しかもドットの直径を測ると、細胞の大きさとほぼ同じ。そこで『これは使える!』 と思ったのです」(同)

この研究は「バイオプリンティング(=生体器官印刷)」 と呼ばれる組織工学の新しいアプローチで、現在、再生医療の分野で注目されているのだとか。機械を使って印刷するため、同じ規格のものをスピード大量生産することができる。現段階では、細胞を使って血管を模した直径1mmのチューブを作製するところまで実現しているらしい。

しかし、ここまで到達するには非常に多くの困難があったのだという。市販のインクジェットプリンタでは、細胞を入れた液がすぐに詰まってしまうこともそのひとつだった。メーカーの協力を仰ごうと、当時まったくつてのなかった中村氏はお客様センターに電話をしたが、多忙な中あまりに突拍子のない話は相手にされなかった。ある日乗り込んだ企業展示発表会で志の高い開発担当者に出会い、ようやく協力を得ることが出来たのだという。

「20年後くらいに、心臓を造ることができればいいですね」(同)

ひとりの研究者の情熱によって、まるでSFのような技術が現実となる日が来るかも知れない。そしてそれは、これまで移植用の臓器を待つしかなかった多くの人々を救うことにもつながる。あらためて、人間の力・科学の力って…すごいんである。

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