隣の理系がワカラナイ

第6回 理系なのに小説家ってどういうコト?

2009.02.20 FRI

隣の理系がワカラナイ

理系でよかったなっと思うこと。物事を感情に左右されず、データを見て客観的に決めることができたことかな? 逆にそれがゆえに学生時代は国語(特に古文の歌とか)に苦労しましたし、今では恋愛が全くできません理系男子がオクテなのもよくわかるな。相手の考えがわからないんだもん。実験の予測はできても、相手の気持ちなんて知りません!きっとKYと言われた人も理系が多いんだろな

投稿者:「おれっち」さん(大阪府/20歳/女性)

おれっちさんも書いている通り、
私も「理系は理数系が得意で、国語とか歴史は苦手」だと
ずーと思っていました。

でも、必ずしもそうではないようで。
ベストセラーとなっている小説の作者には理系出身の人が少なくないのです!
理系なのに、文章までうまいとはどういうワケなんでしょう?
そこで今回は、いわゆる「理系作家」と呼ばれる人たちについて、
検証してみたいと思います。
最近の理系作家たちの作品。『容疑者Xの献身』は物理学者、『チーム・バチスタの栄光』は医者、『すべてがFになる』は工学部の准教授と、それぞれ作者の専門領域に近い主人公たちが登場します。しかも、どれも映画化されるほどの人気作品(『すべてがFになる』は映像化されていませんが、森作品では『スカイ・クロラ』が押井守監督のアニメ映画になっています)

意外なあの人も実は…!?理系出身の人気作家とは?



知っている人もたくさんいると思いますが、『白夜行』や『探偵ガリレオ』シリーズで知られる作家の東野圭吾さんは理系の人です。大学は工学部電気工学科で、卒業後はエンジニアとして勤務しながら執筆活動。ドラマ化・映画化された作品は数知れず、今や直木賞作家です。

文系の領域だと思っていた小説の世界で、理系でありながらトップを走っているなんて、ライター稼業の私から見ればちょっと悔しい(作品は好きだけど)。悔しまぎれに、もっと理系出身の作家はいないかと探したところ、結構いることが判明しました(「こんな作家も理系だよ」と教えてくれた読者の皆さんに感謝!)。

瀬名秀明(『パラサイト・イヴ』薬学部・薬学博士)
森博嗣(『すべてがFになる』工学部建築学科・工学博士)
海堂尊(『チーム・バチスタの栄光』医学部・医学博士)
星新一(『きまぐれロボット』農学部)
北杜夫(『楡家の人びと』医学部・医学博士)
中村航(『100回泣くこと』工学部工業経営学科)
谷村志穂(『結婚しないかもしれない症候群』農学部応用動物学)

こうして並べてみると、ベストセラー作家の中には理系出身者が多いんですねぇ。しかも、サイエンスの人たちだけあって、SF(サイエンス・フィクション)やミステリー作品が目立ちますね。その辺の事情を含めた理系作家の今について、『文学賞メッタ斬り』(パルコ出版・豊崎由美との共著)の著者で、評論家・翻訳家の大森望さんに聞いてみました。

「アメリカでは、アイザック・アシモフ、マイクル・クライトンなど、科学者、技術者出身の作家は珍しくありません。アーサー・C・クラークは、通信衛星を静止軌道で使うアイデアを世界で最初に発表したくらいですからね。NASAに勤務する現役エンジニアが書いた小説なんかも結構あります。そういった作品は技術描写や科学考証がリアルで人気があるんですが、日本ではそこまでハードな作品はあまり一般的な人気がなかった。それが『パラサイト・イヴ』の大ヒットをきっかけに、ハードな科学描写があっても日本でベストセラーになることが証明され、広く受け入れられるようになったんです」

理系作家がウケるのには、科学的な内容の他に文章的な特徴もあるような気がしますが、そこのところはどうでしょう? 理系ならではの論理的思考が作品のなかでも活きているのでしょうか。

「書き方は人それぞれだとは思いますが、小説を書くときに、全体の構造から考えて断片的に書くようなやり方は理系的だと思います。一般的には頭から書いていくものですが、彼らはまず設計図を作っておくので、どこからでも書けるのだそうです。そもそも、科学者は頻繁に論文などを書いているので、文章を書くことは慣れているのですよ」

最後に、理系作家の作品を楽しむときのポイントを教えてもらいました。

「SFの世界では『ウソはいいけど、間違いはダメ』と言われていて、物語を面白くするためのフィクションならOKだとされています。でも、間違った科学知識を与えるような作品もありますから、小説に書かれている話を鵜呑みにしないこと。今はネットですぐ調べられるので、眉唾と思ったらチェックしてみるのもいいでしょう。まあしかし、小説ですから楽しむのが一番。わからないところはばんばん飛ばして、わかるところを読めばいいんです。もちろん、瀬名秀明やグレッグ・イーガンの作品をきっかけに科学の面白さに開眼することもありますから、科学が苦手だという人ほど、理系作家の小説の読み甲斐があるかもしれません」

専門書や論文など到底読みこなせませんが、小説というスタイルなら最新科学のことも頭に入りやすそう。フィクションだとしても、キーワードを知ることには役立つはずですし。今回紹介した理系作家の作品は文庫化されている人気作ばかりですから、どんどん読んでみたいと思います!
瀬名秀明(せな・ひであき) 東北大学大学院薬学研究科(博士課程)修了・薬学博士。大学院在学中に書いた『パラサイト・イヴ』で第2回日本ホラー小説大賞を受賞。1997年からは大学講師として勤務しながら執筆活動を続け、『BRAIN VALLEY』『八月の博物館』『あしたのロボット』など数々の小説・エッセイなどを世に送り出してきた。2006年1月、東北大学機械系特任教授に就任し、ロボット研究に携わる。(撮影/佐藤久)

『パラサイト・イヴ』の瀬名秀明さんに科学と小説について聞いてきた!



理系作家と呼ばれる人は何人かいますが、私の場合、真っ先に思い浮かぶのは瀬名秀明さん。理系アレルギー気味だった私にサイエンスの面白さを教えてくれたのが、『パラサイト・イヴ』『BRAIN VALLEY』だったからです。

瀬名さんは大学院薬学研究科の博士課程在学中に『パラサイト・イヴ』を執筆し、その後も大学講師をしながら作家活動。現在は東北大学機械系特任教授という肩書きでロボット関連の研究に携わる作家です。「理系作家」としてお話を聞くならベストなわけですが、ご本人に「理系作家」という自覚はありませんよね。

「どんな作家さんでも自分の専門とか得意分野を扱った小説を書くことはあるはずで、僕の場合はそれが生命科学だったというだけですから。科学を扱った小説を書いていますけれど、小説を書くときはただの小説家です」

そういえば、事件記者出身の作家が警察小説を書いたり、元銀行員が金融小説を書いたりしていますね。それと同じことですか。でも、理系の人は特別に見えてしまいますね。

「それだけマイナーなのでしょう。特に『パラサイト・イヴ』が出版された95年頃はとても珍しかったらしく、取材の際、研究室でもないのに白衣を着させられたりしましたね。本の内容もバイオサイエンスをベースにしたホラーでしたから、マスコミはマッドサイエンティストに仕立て上げたかったようです」
歴代の瀬名作品。一番手前は最新刊『ロボットのおへそ』(丸善ライブラリー/稲邑哲也・瀬名秀明・池谷瑠絵著) 気鋭のロボット研究者である稲邑先生の研究を紹介することで、ロボット研究の今と未来が誰にでも分かる内容。瀬名さんは稲邑先生との対談部分で登場。ロボットアニメの話で盛り上がるなど、読み物としてかなり楽しい。
サイエンティストとして、小説のなかとはいえ、現実には起こりえないことを書くことに抵抗はなかったですか? 私のような素人読者は「全部ホントなの?」ってビビリまくってしまいましたが。

「『パラサイト・イヴ』は現実ではあり得ない怪物が襲ってくるわけですから、『科学者が非科学的なことを書くなんてけしからん!』という人も当時はいました。でも、自分としては、小説として面白くなるなら実際のサイエンスと違ったことを書いてもいいと思っています。しっかりした基礎を前提にしたうえで、想像の飛躍を楽しんでほしい。ただし科学者であるからこそ、時期によって書く内容は気をつけるべきでしょう。たとえば、今インフルエンザの爆発的流行を本当のことのように書くと、シャレにならなくなってしまいますよね。そういう時期にあまりにも事実と異なる描写をしていたずらに恐怖をあおるのは、人々を混乱させるので慎重であった方がいいと思います」

小説の書き方に「理系らしさ」ってあると思いますか?

「小説を書くときでも、論文を書くときと同じような構成をしているところはあるかもしれない。最初に全体の構成を決めてしまうので、作品によっては最初から書かずに、いきなり途中から書き出すとか。デビュー当時、この話を選考委員の先生にしたら、すごく驚かれましたけど」

逆に、小説を書くことが研究に役立つこともあるんでしょうか。

「いろんな分野の研究者と知り合いになれたことは、小説家になって良かったことの1つですね。分野は違っても、才能ある研究者と話すことはすごく刺激になります」

作家として、今一番興味がある科学トピックはどんなことですか?

「生命科学とロボットですね。この2つは一見関係ないように見えますが、人間そっくりなロボットを作ることは、生命とは何か、自己とは何かを追求することにつながります。僕がいつも目指すのは、たとえば脳科学を扱うなら小説全体で脳の面白さを伝えるような書き方。小説のテーマとして脳科学を扱うだけでなく、小説の構成が脳そのものの機能を表現しているような構成にできないかといつも思案しています」

小説の構成自体が脳のような小説だなんて(よく分からないけど、面白そう)。こんな発想が出てくるなんて、小説家・瀬名秀明は、やっぱり科学者なんだなぁと改めて思いました。 瀬名秀明さんをはじめ、今回名前が挙がった理系作家の代表作と
呼ばれる作品はこれまでにほとんど読んでいました。
気づけば、どれも好きな作家ばかりでした。
(瀬名さんにも会えてうれしかったです!)

物語として面白いというのはもちろんですが、
私の場合、小説という形でサイエンスに触れられるのがうれしいようで。
大森さんも言っていたとおり、そこに書かれていることを
科学的事実として鵜呑みにするのは危険ですが、
「こんな世界があるなんて面白いなぁ」と感じる分には、
理系作家の作品はとてもいいと思います。

これからも理系作家さんたちが誕生すると思いますが、
今までの私には想像もつかないような、
新しいサイエンスの世界を知るきっかけになればいいですね。

さて、次回は、満を持して「理系女子」を
フィーチャーする予定です。
理系女子の皆さん、または「理系女子のこんなところがワカラナイ」
とお悩みの皆さんからのコメントをお待ちしています!

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