隣の理系がワカラナイ

第11回 「ロボコン」に熱くなる人々とは?

2009.05.01 FRI

隣の理系がワカラナイ

はじめまして。私は分子生物学の修士号を持つ、理系女子です。何で理系と文系って分かれたのかなーとか考えてみると、中学・高校で数学ができたかできないかだったりしませんか?私は、「難問」って書いてある問題を30分くらいかけてノートを真っ黒にしながら解いて、それが正解だったときなんてこの上ない喜びを感じたものなのですが、大学の時バイトで文系の子の数学の家庭教師をしていたとき、数学が嫌いだっていうからその喜びを分かち合おうと思ったのに、「問題が解けてうれしい」という感覚がないって言われました。(中略)分からないことを分かるようにする学問って文系にもたくさんありますよね!?

投稿者:「きちゃ」さん(神奈川県/25歳/女性)

「数学の難問を解くよろこび」など、私は感じたことはありませんし、
感じたいと思ったこともありません。
(世の中にそんな人がいることも知りませんでした)

でも、この連載をやってきたお陰で、今は興味があります。
「難問を解くよろこび」は無理だとしても、
「理系の人が熱中しているもの」に触れることくらいはできないでしょうか?

そんなわけで(少々強引ではありますが)、
今回は理系の甲子園ともいわれる
「ロボコン」にフォーカスしてみました。
ロボコンならば、私も熱くなれそうなんですが。
今年4月から隔月刊の定期雑誌として独立創刊された『ロボコンマガジン』(それまではムック扱いでした)。各種ロボコンレポートのほか、最新ロボット技術の紹介、ロボットの作り方など、ロボットに関する様々な情報が掲載されています。編集長が若い女性なのもビックリしました。

理系的甲子園「ロボコン」の魅力とは?



皆さんは、ロボコンって見たことあります? といっても、赤くてダメなロボットではなく、ロボットコンテストのほう。実は、私は結構好きなんですよ。数年前、たまたまテレビでやっていたのを見てハマりまして、密かに注目しているのです(2003年には長澤まさみちゃん主演で映画にもなってますよね)。

私でも楽しめるところを見ると、ロボコンは理系でない人にもとっつきやすい理系イベントなのかもしれません。そこで改めて、文系でも楽しめるロボコンの魅力を『ロボコンマガジン』の竹西素子編集長に聞いてきました。

「まず確認したいんですが、今ウシジマさんがおっしゃったのは、NHK主催の高専ロボコンのことですよね? 高専ロボコンのほかに大学ロボコンがありますし、ロボットがサッカーを行うロボカップ、ロボット相撲など、ロボコンといってもいろいろな種類があるので、一概にはお答えできないんですよ」

おっと、失礼しました。私がテレビで見たり、映画の舞台になっているのは「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(通称:高専ロボコン)」で、たくさんあるロボコンの一つに過ぎないのですね。

先に竹西編集長が挙げてくれたもののほかにも、企業や自治体、教育機関などが主催する様々な大会があり、参加資格もバラバラ(最近低年齢化が進んでいて、小学生が参加できる大会も増えているとか)。ロボットにしても、無線などで人が操縦するタイプや自律型、二足歩行ロボットやタイヤで動くマシンなど、操縦法やスタイルは大会ごとに異なります。中には「ジャパンマイコンカーラリー」なんていう大会があり、これに参加しているマシンはどう見ても「車」なんですけど、これも「ロボット」なんですか。

「ロボットの定義は大会によって違います。そもそも、ロボットを定義するのはとても難しいことです。ヒューマノイドを見たらみなさんロボットだと答えるでしょう。でも、一見よくある田植え機でも、完全に無人で田植え作業ができるなら田植えロボットというロボットです。また、自ら危険を察知してブレーキをかけられる今の自動車などは、ロボットと呼んでいい機能が備わっています。なので、各大会ではそれぞれの解釈でルールを作り、テクノロジーを競い合っているのです」

とにかく競技は多種多様。大会が多く行われるハイシーズンは11~1月なんだそうです(学校が始まる4月から準備を始められるように)。さらに楽しみ方の一つとして竹西編集長がオススメしてくれたのは、自分の趣味と関連する大会を観戦すること。

「格闘技好きならかわさきロボット競技大会やロボット相撲大会のようなバトル系、スポーツ好きならロボカップやロボットアメリカンフットボールというように、もともと好きな分野ならなじみやすいですよね。でも、究極はロボットを自作して自分で参加すること。高度な知識や技術がなくても作れるロボット・キットも売られていますし、個人で参加できる大会も結構ありますから、チャレンジしてはどうですか?」

これを読んで少しでも「おっ」と思った人は、今年の秋に向けて、今から準備をはじめてみては?
昨年出場した高尾山ケーブルカー型多足マシンと天狗型二足歩行マシン。学校が高尾山に近いということもあり、地域色を生かしたデザインです。どちらもかなりスムーズに歩きます(しかも、なんだか笑ってしまうほほえましい動き)。

ロボコンに青春をかける高専の学生とは?



今回は、かねてから私も注目していた「ロボコン」がテーマ。となれば、高専に行かねばならないでしょう! ロボコンといったらやっぱり「高専ロボコン(正式名称はアイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト)」ですからね。早速行ってきましたよ!

お邪魔させてもらったのは、国立東京工業高等専門学校(東京高専)。東京高専では学校主導の課外活動としてロボコンに参加する「ロボコンゼミ」があり、91年に全国優勝、05年にはロボコン大賞を受賞しているそうです。

まずは顧問の松林勝志先生から高専について教えてもらいました。

「高専は、5年間一貫教育によって技術者養成を行う高等教育機関で、全国に63校(国立55校、公立5校、私立3校)あります。5年間で、高校3年間と大学4年間にあたる一般科目と専門科目を学ぶわけですからかなりハードです。でも、中学卒業の段階で『技術者になりたい』という高い目的意識を持って入学してくる子たちですから、すごく勉強しますよ。特にロボコンゼミの学生は、成績が悪いとロボコンができなくなってしまうので、厳しいスケジュールのなか、よく勉強しています」
左から、藤本君、会田君、青木君。3人に持ってもらっているのは、2006年大会に出場した「雷門(ライト)兄弟」。約10kgのマシンながら、垂直に高くジャンプして縄跳びの三重跳びをします。実際に見せてもらいましたが、マジで跳んでました(ビビッた!)。
高専ロボコンは各校2チームが出場し、10月に地区大会、11月に全国大会が行われます。その年のテーマやルールが発表されるのがゴールデンウィークの少し前。秋の大会に間に合わせるためには、7月には1号機ができていないといけないのだそうです。もちろん、マシンはすべて自作。小さな部品も3D-CADで設計し、学校内の機械工場で加工して作っています。

特に苦労したのはどの辺か、学生さんたちに聞いてみました。

「競技とルールが発表されたら、アイデアシートや仕様書などの書類を20枚くらい書いて提出するのですが、最近は技術力を発揮するのは当たり前で、デザイン性やパフォーマンスも重視されているのでアイデア出しも難しいんですよ」(OB・専攻科1年・藤本裕史君)

「材料費、重量などはもちろん、昨年の大会ではエコもテーマになり、バッテリ容量が厳しく制限されてしまいました。それでいて多足歩行から二足歩行に進化させ、早くゴールしなければならない。技術的にとても難しい課題でした」(電子工学科3年・会田尚史君)

夏以降はひたすら改良を繰り返す毎日のようです。それに加えて学校の勉強もありますから、結構ヘビーだと思いますが、それを苦にしている様子はありません。そもそも「ロボコンに出たくて高専に入学しました!」という3人です。機械工学科4年・青木彬君も「それでも、自分で作ったマシンが思った通りに動くのを見ると、純粋にうれしいんです」と笑顔で話してくれました。

4、5年生はインターンシップや卒論で忙しく、中心的に活動するのは3年生なのだそうですが、高専3年生といえばまだ18歳。それでいて二足歩行ロボットを作ってしまうんですから、大したもんです。きっと、ここから将来の技術立国を背負って立つような技術者が生まれるんでしょう。残念ながら昨年は結果が出せなかったそうですが、今年秋の全国大会を楽しみにしていますよ! 今回は、ロボコンという世界を取り上げてみましたが、
いかがでしたか?

取材する前は「理系的甲子園」などと思っていましたが、
ロボコンの中には、最新ロボット研究の発表のために行われている
かなり学術的な大会があったり、大規模な世界大会があったり、
「甲子園」どころか「WBC」クラスの大会もあるのだと知りました。

そして、そんなロボコンにかける高専生たちのレベルの高さ。
白状すると、高専ロボコンをテレビで見ながら、
「ショボいマシンだねぇ。もっとかっこいいボディにすればいいのに」
なんて失礼なヤジをとばしていました。
でも、直接話を聞いてみて、彼らの努力と技術力には驚きました。
これからは、もっと温かい目で応援しようと思います。

さて、ご好評いただいている「隣の理系がワカラナイ」も
残念ながら次回で最終回です。
最終回は、多くの理系の人からご意見をいただいていた
「隣の文系こそワカラナイ」を掲載する予定です。
「最後に一言言ってやりたい!」という方々からのご意見をお待ちしております!

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