50万円で宇宙に行きた~い!

第4回 次世代宇宙食は「蚕(カイコ)」!?

2009.05.19 TUE

50万円で宇宙に行きた~い!


宇宙食ラーメンはしょうゆ味とカレー味、シーフード味がある。パッケージの上から70~80℃のお湯を入れて軽く振り、5分間待って完成。

宇宙に行くと味覚が変化するの!?



みなさんは宇宙では味覚が変化するってご存じでした? 実は、宇宙では地球よりも「刺激の強い味」を求める傾向があるらしく、宇宙食もそれに合わせて若干濃い味になっているとか。現在、日本ではカレーやラーメンなど、28品目が「宇宙日本食」として認定されています。そこで、どれほど味が濃いのか試してみたい。宇宙日本食の多くは一般には手に入らないけれど、「スペースカレー」と「YOHKAN(ようかん)」は市販されている。カレーはレトルト、ようかんは固形物なので、あまり特別な加工をしなくても、宇宙食として持っていけるのだ。さっそく筑波宇宙センターで購入して試食してみましたよ。

まずは「スペースカレー」、オマエだ。宇宙食用の特殊なパウチを使っているらしいけど、見た目は普段僕たちが食べているものと変わりなし。味はというとうん、ピリリとスパイシーでフツーに美味しいよ、コレ!

あくまで宇宙飛行士の感想レベルにとどまっているが、土井宇宙飛行士がスペースカレーを宇宙へ持ち込んだときは、試食した宇宙飛行士たちから「もっとスパイシーに!」という声が挙がったとか。ちなみに辛さはメーカー基準で5段階の4と、確かになかなか辛い設定なのだ。

実は「なぜ宇宙で濃い味を求めるのか」についてはNASAでも研究を行っているが、結論は出ていない。一説によると無重力状態では血液を含めた体液が上半身に上昇し、鼻が詰まったような状態になるからではないかといわれている。なるほど、風邪をひいた状態を想像すれば、この説にうなずける。

ちなみに味とは関係ないが、無重力状態の宇宙ではカルシウムが骨に定着しにくいため、骨密度が低下するといわれている。それを補うため、スペースカレーにはカルシウムなどが通常より多めに含まれているとのこと。

さて、お次は「YOHKAN」。こちらもパッケージにポリエチレンフィルムやアルミ箔などで構成した特殊なフィルムを使っているが、中身は一般的なものと同じ。うん、食後のようかん、さわやかな甘みが五臓六腑に染み渡りますなぁ。ただ、ようかんはもともと甘さが強いから、味はあまり変わりないかな。

さらに海外の宇宙飛行士にも人気という、カップヌードルをベースに開発された「宇宙食ラーメン」にもトライしたい。一般には市販されていないこのお宝をぜひ試食させてもらうべく、日清食品にお邪魔した。
日清さん、宇宙食ラーメンくださーい。

「大変申し訳ありませんが、宇宙食ラーメンはすべて手作りで非常に希少なので、取材でも試食はお断りしているんです」(日清食品ホールディングス 広報部・山下真莉乃さん)

なんと、お宝ゲットならず!
超レアなインスタントラーメンとなれば、余計興味が湧いてきました。ところで、見たところ僕らが知っているインスタントラーメンとは全然違いますね。

「無重力空間では麺が周囲に広がってしまうので、俵状の一口サイズにしています。スープは飛び散らないようにとろみを付けています。それから、宇宙では味覚が変わるようなので、味を若干濃くしています。普通のカップヌードルの味付けとは少し違いますね」

ほらっ、ラーメンもやっぱり濃い味なのねのど渇きそうだけど。
ちなみに、日清食品では宇宙食ラーメンのほかに、宇宙食用の「うどん」や「焼き鳥」、「いなり寿司」「お好み焼き」なども開発中。残念ながら、これらはJAXAの認定を受けていないので、まだ宇宙日本食には入っていないが、やはりすべてやや濃い味だとか。

体液が上昇したり、骨が溶けやすくなったりと、宇宙では様々な体の変化が起こる。
精神的なストレスが溜まる宇宙飛行士にとって、毎日の食は非常に重要な問題。
ささいなことのようだけど、「味付け」だっておろそかにはできないのだ。
個人的には宇宙日本食が増えることを期待します!
こちらが蚕の粉末入りクッキー。見た目、普通のクッキーだが、動物性たんぱく質が豊富なのだ。

日本や中国で研究が進む宇宙食用「蚕(カイコ)」とは?



スペースカレーに宇宙食ラーメンなど「宇宙日本食」が誕生した一方、未来に向けて新たな宇宙食も研究されている。将来、火星やさらに遠くの星へ行くことになった場合、従来の宇宙食を大量に宇宙船に持ち込むことは現実的に不可能(火星でも往復で約3年かかるといわれている)になる。そこで、いま研究が進められているのが船内や火星などでの「自給自足」についてだ。生き物を同乗させて、飼育しながら食料にしちゃえばいいじゃん、というのだ。もちろん、牛や豚ではない。低コストで飼育ができて場所もとらず、栄養価が高いと評判の、ある生き物。ずばり「蚕(カイコ)」である。ウゲー! 蚕食いたくねー! などと言ってはいけない。日本をはじめ、中国でも研究されている蚕宇宙食、実はスゴイらしい。

『ほっとする、楽しくおいしい宇宙食』を研究する「宇宙農業サロン」のメンバーであり、名古屋女子大学家政学部の片山直美先生に話を伺った。蚕ってあのムニュっとしてて、口から糸吐いて繭つくって、最終的には蛾になる、あの蚕ですよね。間違いなく。

「もちろんです。昔から中国や韓国では蚕は絹を取るだけでなく、蚕自体を食べる習慣がありました。漢方の資料には、蚕は糖尿病に有効という効能が記されていますし、古くから蚕が健康によいことが知られています。蚕は肉や魚と同じ動物性たんぱく質を豊富に含んでいますし、宇宙に出発するときは小さな卵でも、育つと体重は1万倍に増えて大量に採集できます。しかもほとんど動かないから、宇宙船の中でも飼育がしやすい」

これまでの研究では、将来的に月面や火星に植物工場を作った場合、玄米や青菜などを生産することができるといわれている。しかし、仮に植物性たんぱく質は摂れたとしても、動物性たんぱく質をどう摂るのかが課題だった。となると、蚕の宇宙食は非常に合理的かも。

「それだけではありません。繭からは絹糸をとって衣服を作ることができますし、その衣服も使用後にパウダー状にすることで、コンタクトレンズや人工皮膚などの医療品にも再利用することができるんです」

むぅ、身も繭も、加工後の服ですら利用できるなんて、まさに捨てるところなし。蚕、恐るべし。でも、やっぱ蚕食うのはちょっとなぁ。ムニュっていうのがちょっとなぁ。

「そのまま食べる必要はありません。粉末にしてご飯やクッキーにまぜれば見た目は気になりませんし、味はエビやロブスターに似ているんです」

なるほど、パウダー状になるならちょっと安心。
でも、できれば入ってることは言わないでほしいっス。

もちろん、蚕の自給自足については現在研究中のひとつの事例にすぎないわけで、今後も様々な宇宙食の可能性が試されていくはず。日本の研究者の皆さん、僕が50万円で宇宙に行くまでに、できればもうちょっと食べやすそうなものを開発してくれればなによりなんですが。
間違っても、蚕寿司とか絶対ナシですからね! 現在、国際宇宙ステーション(ISS)で食べる宇宙食を開発しているのは、
アメリカの約100食、ロシアの約100食、
さらに日本の約28食と、3カ国のみ。
ならば、もっと種類を増やしてロシアが開発した約100食を追い越し、
メイド・イン・ジャパンの宇宙食をアピールしてほしいものです。

ちなみに、宇宙から帰還した日本の宇宙飛行士は、
ソバやラーメンなどの汁ものを食べたくなるらしいです。
無重力の宇宙では麺類をすすれないですもんね。

これからも宇宙の不思議に体当たりで挑みます。
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