1時間早く帰るIT仕事術

第12回 ボクらにとって残業ってなんなの?

2009.05.20 WED

1時間早く帰るIT仕事術

「仕事と私とどっちが大事なのっ!?」
と泣き叫んでくれる彼女こそいない筆者ですが、
もうじき三十路を迎えるお年ごろになって、
残業続きの毎日にやや疲れ気味。

でも、自分だけやらないわけにはいかないし
というシビアな現実の中で最近気になっているのが
近年になって国や企業が提唱し始めた
「ワークライフバランス」というキーワード。

仕事と生活を調和させましょう、
そのためには残業を減らしましょう
なんて一見イイ話っぽいけれど、
現実的にそんなことは可能なんだろうか?

というわけで今回は、
注目されつつある「ワークライフバランス」の視点から、
僕らの新しいワークスタイルを考えてみましたよ。


『キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方』(ダイヤモンド社)小室さんによる『ワークライフバランス』の分かりやすい解説書。タイトルから分かるように女性向けの内容だが、育児や介護の問題など、男性諸氏にとっても働き方の参考になること請け合いの一冊

「残業」をやめると出世できるってホント?



仕事へのモチベーションは人それぞれだけど、好むと好まざるに関わらず、僕らの毎日についてまわるのが「残業」という現実。仕事量が多すぎるから、出世したいから、自分がやらなきゃ誰もやってくれないからというふうに、様々な理由から僕らは残業する。

その一方で、近年の国や企業が「残業を減らせ!」と要求する。仕事が終わらないから帰れないのに無理やり帰れって言われても困るんだけど。この矛盾は一体どうして起こるの?

「端的にいうと、かつての日本と現在では、社会の構造が大きく変わったことが原因です。日本人の人件費が安かった高度成長期にはベストな経営戦略だった社員の長時間労働が、現代では企業の経営を圧迫するコストになってしまっているんですよ」

と語るのは、仕事と生活の相乗効果を提案しているコンサルティング企業「株式会社ワーク・ライフバランス」代表の小室淑恵さん。

「そのために、企業が求める人材像も大きく変化しています。かつて会社員にとっては長時間働けること=美徳だったわけですが、現代ではむしろ短時間で高い成果を上げられることが重要になっているんです」

そりゃ短い時間で仕事がこなせれば最高ですけど、現実的に残業なしで帰れる職場なんて少ないのでは?

「確かに、日本企業の風土として残業の美徳は根強く残っています。ですが、今の経済市場で生き残っていくうえでは、従来からの経営戦略はすでに限界が見えている。そこで注目され始めたのが『ワークライフバランス』の考え方です。企業の残業コストの削減という文脈で語られることが多いのですが、一方で個人が自分のキャリアを形成していくうえでも、今後は欠かせない要素になっていくと考えられているんですよ」

個人のキャリアと残業削減が、どんなふうにかかわってくるの?

「市場が飽和状態にある現代では、ありふれたモノやサービスに消費者は見向きもしません。そこで企業が求めているのは、新しい価値観を提供できるような斬新なアイデアを生み出す発想力の持ち主です。でも、それはいくら職場で残業を頑張っても、身に付けることができないスキルなんですよ。発想力のヒントは、充実した日常生活のなかにこそ潜んでいるもの。職場と自宅を往復するばかりの生活では、市場が求めるアイデアを生み出すことは難しいんです」

確かに、残業続きの毎日だと、新しい情報のインプット量が極端に少なくなる気がします。

「結局、あふれた仕事を残業で処理するというのは、ある意味で一番楽な対処法なんです。ただし、その代償として本来なら様々な人と出会って人脈を築いたり、長期的なスキルアップの勉強をしたりといった学びのチャンスをどんどん失ってしまう。その結果、課題(残業が必要になる理由)を乗り越えるための根本的なスキルや発想力を身に付けられないまま、時間ばかり消費してしまいがちなんです」

長く残業をする=『ライフ(生活)』での刺激を受ける機会が減ってしまうってわけですか。

「現代は、ヒット商品も季節が変われば消えてしまうほど商品サイクルが速い時代です。何かが売れているときに、もう次のアイデアを考えなければいけない。そのためには、職場で目先の仕事ばかりに追われていてはダメなんです。時間に余裕がある20代こそ、あえて残業をせずに『ライフ』の時間を充実させるべきなんですよ」

企業側の視点で考えれば、残業を減らす=人件費の削減&人材のスキルアップにつながるわけで、一石二鳥の経営戦略というわけか。あくまでも「理想論」という気がしないでもないけれど、企業に求められる人材を目指すうえでは、意識しておいて損はないかもしれません。
ワーク・ライフバランス社員のコンサルタント・大塚万紀子さんの平均的な1日のタイムスケジュール。他の社員より1時間早く退社するが、保育園へお子さんを迎えに行って帰宅した後、子どもが寝てから在宅勤務システムを使って1時間ほど業務を行っている。早退できる制度を利用しながら、フルタイムと同じ時間だけ働くことで、職場内で引け目を感じることもないし、評価もフルタイム勤務の人と変わらない

「残業」と「結婚」の微妙な関係って?



連日のように続く「残業」は、基本的に避けたいもの。でも、キャリアアップを目指してバリバリ働いている人のなかには、もっともっとたくさん仕事がしたい! と考える人もいる。

特にR25世代の男性には、既婚と未婚とを問わず「おれが今のうちに出世して、家族を養えるようにならなきゃ!」みたいなプレッシャーもあるようだけど。

「男性のなかには、自分が稼がないと将来的にも家庭をもてない、今のうちに頑張って出世しなきゃ! という焦りをもっている人が多いんですが、実はそれがそもそもの誤解なんですよ」

と語るのは、仕事と生活の相乗効果を提案するコンサルタント会社「ワーク・ライフバランス」代表の小室淑恵さん。

「かつての日本なら、団塊世代の男性一人の収入で子供を3人育てることができたので、一家の大黒柱という言葉にリアリティがありました。しかし、生活コストが増大した現代では、男性一人の平均収入では子供を1.2人までしか育てられないという計算があるんです。つまり、男性がどんなに張り切っても家族を十分に養えない時代になっているんですよ」

うーん、なんだか情けないような。ってことは、今時は結婚するなら「共働き」が当たり前なわけですか?

「男性が一人で年収1000万円を稼ぐのはすごく大変ですけど、夫婦が二人で500万円ずつならそれほど難しくないですよね。日本の女性は教育も十分に受けていて、仕事をするうえでのポテンシャルは非常に高いんです。でも、出産や育児といったイベントに直面すると、仕事を続けることをあきらめてしまうケースが多い。それは社会の制度的な問題に加えて、周囲から影響で自信を失ってしまうことが大きな原因なんです。それでも、夫から『君は仕事の才能があるから、辞めたらもったいないよ!』と励ましてもらえれば、妻は頑張っていけるもの。つまり、今の時代の男性に求められる能力は、バリバリ稼ぐことよりも、むしろ妻が仕事をあきらめないですむだけの励ましを続けられるかどうかなんです」

でも、実際に育児などをしながらそれまでと同じレベルで働くのは難しいのでは?

「ITを活用したテレワークや在宅勤務、時間に融通が利く短時間勤務など、多様な働き方を取り入れた制度は広がってきていますが、大切なのはそれらの仕組みを使って働いている本人が『自分はフルタイムで働いている人間だ』という感覚を持ち続けることなんです。実際のところ、1日1時間くらい業務時間が短くても、仕事の成果はそれほど変わりません。それでも『自分は短時間勤務の人間だから』と職場内で引け目をもってしまうと、仕事にマイナスな影響を与えるんです。組織としても、ひとり意欲の低い人間が混ざっていると、それに引きずられて全体のレベルが落ちてしまう。全員の意識が揃っていることで、仕事へのモチベーションも失わないし、成果のアウトプットも維持できるので、社員も会社もWin-Winの関係でいられるんです」

確かに、自分が定時で帰ってるのに、周囲が残業してると後ろめたいもの。その意識が取り除ければ、いろいろな働き方が受け入れやすくなりそうです。

「これからは、仕事に新しい報酬が求められる時代だ、といわれています。これまでは報酬=お金でしたが、現代では働く時間や場所の柔軟さも報酬になる。時間と場所さえ自由に選べればもっと働けるのに、と考えているのに、環境が伴わず十分に働けない人材は男女問わずたくさんいるんですよ。例えば両親の介護をしている人だって、在宅で親の様子を見守りながら仕事はできます。個人に合わせたオーダーメードの仕事を用意することが求められているんです」

育児や介護といったシチュエーションは、その時になってみないとなかなか想像しづらいけれど、多くの人に訪れることなのも事実。自分と大切な家族を含めたワークライフバランスも、今後は考えていくべきなのかも。 ワークライフバランスの視点から見た
「残業」の問題、いかがだったでしょうか。

もちろん、会社によって社風や制度が違う以上、
誰もが今日からすぐに残業を全部なくせたり、
フレシキブルな働き方を選べるワケじゃありません。

それでも、自分の自由になる時間が多いR25世代のうちに、
「残業する」ことのメリットとデメリット、
そして将来の働き方についてを、
しっかり考えておくべきなんじゃないでしょうか。

というわけで、半年にわたってお届けした
『一時間早く帰るIT仕事術』はこれでひとまず最終回。

連載が進むにしたがってITが関係なくなっていましたが(笑)、
個人的にも、自分の20代の仕事ぶりを振り返りつつ、
将来につなげるためには何が必要なのか?
を考えることができた企画だったと思っています。

この後、筆者は一度人生を見つめなおすべく
しばし放浪の旅へと出発しますが、
無事日本へ帰ってきたあかつきには、
再び皆さんの前にお目見えしたいと思ってます。

それではまた会う日まで、
ごきげんよう!

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