ネットの常識・非常識

第12回 将来、電子メールは使えなくなる?

2009.05.27 WED

ネットの常識・非常識


1日数通から、多い人では数千通も届く迷惑メール。今でこそ馴れてしまいましたが、初めて迷惑メールが届いた時は思わず「マジで地元のおばさんが抱けるのか!」とクリックしてしまった人も少なくないはずです(笑)

全世界のメールのうち7割以上がスパム!10年後は誰もメールを使わなくなる?



パソコンで扱う電子メールに限ると、今では世界中の電子メールの7割以上がスパムメール、という調査があります。このため、2000年ごろにはネットワーク専門家から「近い将来、電子メールが破たんして、SNSやSkypeのようなメッセンジャーなどクローズドな通信が主流になるのでは」という意見も出ていたとか。

世界中の人とメールアドレスひとつで自由につながれるのが、電子メールのウリだったような気もするんですが、クローズドなメール環境ってなんだか退化ですよね。なぜこんなことに? 通信ビジネスのコンサルティングや通信政策のアドバイザーをつとめる株式会社企(くわだて)のクロサカタツヤさんにうかがいました。

「インターネットの開発時点では、ここまで多くのユーザーに様々な使われ方をするとは想定していなかったため、完全なセキュリティを実現するのは難しいからです。だから、現在のように10億もの人が使うようになり、その中に悪意あるユーザーがいて悪意ある行為をしても簡単にはそれを止めることができません。ネットには、ビジネスを始めたり情報発信したりするコストを非常に安く抑えられるメリットがある反面、悪いことをするコストも安いという問題もあるんです」

例えば、紙のダイレクトメールを郵便で送ると紙代や印刷代に送料がかさむけれど、電子メールならばタダ同然で済みます。当然、その電子のダイレクトメールは詐欺や悪徳商法にも使えちゃう、と。ならば、悪いデータだけより分ければいいのでは?

「インターネットは公共の道路みたいなもので、そこを走っている車=データを検閲するような仕組みにはなっていないんです。それに、日本では法律で『通信の秘密』が守られているので、事業者が勝手にメールなど通信の中身を見ることができません。そのせいもあって、今は普通の車より違法車両の方が圧倒的に多い状態なんです」

これじゃあメールがスパムだらけになるのも、納得。

「ただ、Gmailなどで使われているユーザー側でスパムをより分ける技術が進んだことで、電子メールの寿命がずいぶん伸びましたね。スパムフィルターは、たまに大事なメールも振り分けちゃいますけど、スパムをひとつひとつ削除する手間から多くの人を解放しました」

ええ、今ではもうスパムフィルターなしなんて考えられませんよね。

「ところが、何の知識もないユーザーがいきなり丸裸にされちゃったのが、携帯電話の迷惑メールでした。多く人たちにとってパソコンは会社で使う仕事の道具ですが、ケータイの場合は大人から子どもまでプライベートなコミュニケーションに使うことが多いですよね」

「みなさんにも経験があると思うんですが、メールにせよブログにせよ、自分のアカウントが広く世間に公開されて、どこから何が来るかわからない『むき出しのコミュニケーション』って、一般の人にはけっこうキツイんですよね。R25世代なら迷惑メールをやり過ごせても、同じ対応を年配の方や子供に期待するのは無理でしょう?」

確かに。ごくごく限られた人だけに自分の連絡先を教えている方が望ましいかも。

ただ、自分だけを囲っても相変わらずネット上のスパムは減らないし、いくら回線を太くしたところでサーバーや中継地点の処理が追いつかなくなるのも目に見えています。

うーん、この先ネットってどうなるんでしょう? 利用を規制するしかないような気もするんですが、それも一筋縄ではいかないみたいだし、みなさんはどう思います?
現在SNSの中には、会員同士メールアドレス交換を、URLやアドレスの記載を自動的に判別して送信できなくしているサイトや、同意のもと全会員のメール内容をチェックしているサイトもある

ユーザーを守る規制は諸刃の剣もうすぐ自由なネット社会が終わる?



毎日ガンガン届く迷惑メール。筆者の周りにも、1日3000通近く届く迷惑メールから必要なメールを探し出すだけで午前の業務が終わるという人がいます。

昨今はスパムフィルターが高性能になったとはいえ、たまに重要な連絡が迷惑メールフォルダに振り分けられたりもするから、うかうかしていられません。

迷惑メールだけではなく、いまやネット上の全データトラフィックのうち、迷惑メールやウイルスメール、サーバーを攻撃するDDoSやワームなどがトラフィックに占める割合は、非常に大きいといわれています。

「現在のネットはデータを流す土管でしかないんですよ。端っこ同士の人が話している糸電話と同じ理屈で、データのコントロールはネットの両端につながったコンピュータが処理します。だから、ネットワークを形作るサーバーやルーターなどの機械の処理能力を超えるデータが流れるとパンクするんです」(通信ビジネスのコンサルティングや通信政策のアドバイザーをつとめる株式会社企〈くわだて〉のクロサカタツヤさん)

なんとなく、素人目にも早晩ネットが破たんしそうな気がしてきました。

「そうですね。従来はデータの通信量が増えたら、その分回線を太くして、サーバーの処理能力も大きくしてという拡大路線で乗り切ってきたわけですが、それだとイタチごっこなわけです。なのでそれを解決するインフラとして注目されているのがNGNという次世代のネットワークです。これはデータの優先度を回線が判断してスムーズに交通整理をしようとする技術なんです」

つまり、道路に交通整理のおまわりさんを備えちゃおうと?

「はい。ただし、データの優先度をどのようにつけるか、それがどのように保証されるのか、といった問題はあります。それに、すべての利用者を平等に扱うという、もともとのインターネットの原則とは対立した考え方が前提となっています。まだまだ課題は多いですね」

なるほど。データの規制って郵便局の集配場で手紙を一通一通チェックするくらいナンセンスな行為なんですね。

「ところが現実では、悪意のあるデータ、すなわちフィッシングメールによる詐欺、出会い系サイトやSNSが舞台となった事件などが起きているわけです。特に後者は深刻で、最近ではSNSを規制しようという動きが活発になっています。これが進むと、例えばSNSからメッセージ機能がなくなる可能性も出てくるんです」

ええー、それじゃあSNSの意味がないですよね。やりすぎじゃないんですか?

「もっと極端な場合は、SNSのメッセージ機能だけでなく、SNSそのものが悪い、として規制されたり、またそもそも電子メールが悪いといったより過激な規制に進む可能性だって、もはやないとはいえません。インターネットは、海外からSNSをはじめとする新しいものを持ち込んできては事件を起こす、けしからんところだと考える人たちもいるんですよ」

となると最悪の場合、ネットってどんな状態になるんでしょうか?

「いろいろな選択肢はありますが、一番極端な未来はパソコンでのネットの世界をガチガチに規制して、全部ケータイに統合した世界ですね。日本ならではの事情ですが、ケータイなら事業者が居場所や決済、趣味志向まで個人情報を全部握っているので非常に監視しやすい。しかも実はパソコンにこだわっているユーザーってR25世代周辺だけかもしれなくて、おじいちゃんおばあちゃんや主婦層、若者なんかはケータイだけの生活で十分だと考えている人が多いですよね」

いやあ、ネットがなくなったら嫌ですよ! でもいまやパソコンは、ケータイのおまけとして100円で買えちゃうような存在だったりするからなあ。

ま、パソコンの存亡はともかく、いくらスパムや犯罪利用を減らす目的とはいえ、ネットの自由を大幅に減らしてまで規制をかけるのはいかがなものなんでしょう。ネットで自由に発言ができない社会や、ネットに出てくる情報が新聞やテレビのようなフィルタリングされた情報ばかりでいいのですかね。

うーん、これまた、みなさんはどう思いますか? 今回もっとも象徴的だったのは、迷惑メールについて
「ネットでは知らない人からメールが来るのは常識、
でも世間では知らない人から手紙が来るのは非常識」
というごくごく当たり前の事実でした。

でも、これを把握しているかいないかで、
ひいては、ネットを
「危険で悪いもの」ととらえるか
「自由で良いもの」ととらえるかが
人によって変わってくるのかもしれないな、と悟った次第です。

ちょうど日本で、高速ブロードバンドや
携帯電話でのインターネットが始まって10年。
いまや筆者の生活には欠かせないものとなりました。

でも、実はそう思っているのって、全体から見ると
ごく一部だったりする、という疑いももたなくてはいけません。
なかにはネットなんかなくっても全く困らない、
そんな人たちも大勢いるのです。

今後もネットにまつわる動向に注目していないと、いつのまにか
ネットが規制だらけのメディアになるおそれもあるでしょう。


と、以上をもちまして、「ネットの常識・非常識」はいったん終了。
半年以上にもわたる長い間、ありがとうございました。

次回からは、
以前好評だった「」のスピンアウト版
新連載「男・34歳。ネット婚活ってアリ? ナシ?(仮)」が
スタートいたします。

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