半径3メートルの身近なデジタル

第4回 リモコンはデジタルのシーラカンス?

2009.07.22 WED

半径3メートルの身近なデジタル


部屋を暗くした状態でリモコンを操作。それを、携帯電話のカメラ越しに見るとボヤーっと光って見えます

なぜこのリモコンだけが反応しない!そんな素朴な謎を解明してみた



私事で恐縮だが、わが家のテレビリモコンは、寝っ転がった状態でもボタンを押せばすぐに反応する。しかしDVDは天井に向けて操作しなければ反応してくれない。

同じ場所にある機器に対して使用しているのに、DVD用のリモコンだけが、天井反射式(そんな方式はないと思うけれど)なのだろうか? 気になる。

まずは、そもそもなぜリモコンは、離れていても機器を操作できるのかをざっくりと調べてみた。

答えてくれたのは国内家電メーカーでトップレベルのリモコンラインアップを誇るソニー。リモコン開発に携わる木原雅之さんに話を聞いた。

「すごく簡単に説明をすると、電源オン、音量を上げる、チャンネルを変えるなどの情報は0と1を組み合わせたデジタル信号として、それぞれのボタンごとに登録されています。その信号がリモコンから赤外線として発信され、機器類の受光部が受信。受光部側で信号を解析して、機器が作動するんです」

なるほど、数字8ボタンを押す8ボタンに割り当てられた0と1からなるデジタル信号が赤外線として発射赤外線が機器の受光部に命中機器が0と1からなるデジタル信号の内容を解析チャンネルを8に変更という一連の動作が、リモコンのボタンを押してから1秒以下で行われているってことか。すごいな。

と、ここで本題。なぜに感度のいいリモコンと悪いリモコンが存在するのだろうか?

「最も考えられるのは、受光部の前面に障害物があるケース。これだと、赤外線が遮られてうまく機能しません。もう一つはノイズ。インバーター蛍光灯や太陽光などは、リモコンの赤外線と周波数が近いのでノイズになります。ノイズが多いと、受光部は誤作動防止のために自動的に受信感度を下げるんですね。そうなると、リモコンの効きが悪く感じるということがあります」

なるほど、そういえば家のDVDプレーヤーは窓際で、バッチリ太陽光が入る。しかも前面にはゲームプレーヤーが鎮座。あれが、障害物になっている可能性が高い気がするぞ。でも、天井に向けると反応するのはどういうことだろう? もしかして、ビリヤードの原理と同じ。

「それは勘違いですね。例えば、暗い部屋でLED懐中電灯を点けると、前面だけでなくて背面も明るくなりますよね。赤外線も光の一種なので、前面に向けた赤外線は、壁で反射して拡散します。その拡散した光を受光部が感知するんです。ビリヤードの軌道のように、赤外線が一直線に飛んでいるだけではありません」

最近では赤外線を出すLEDを3個搭載した強力広角赤外線発光タイプも登場している。これならば部屋全体に赤外線が反射して、反応感度がかなり上がるのだとか。

「弊社にはLEDが4個3方向に向いて付いているリモコンもあるんです。これは、キッチンに置いたままの状態で操作ができるような形状と、部屋中に赤外線を反射させるLEDの数の多さが特徴です。ちなみに、濡れた手で触っても大丈夫な生活防水設定。家事をしながら気軽に扱えるように考えてあります」

話を聞いたあと、早速LED3個タイプの学習リモコンを入手してDVDを操作すると、おー、寝っ転がったままで見事反応。赤外線を使用するという部分は30年間変わっていなくても、使い勝手の面ではいろいろと進化しているようです。
初めて「おき楽リモコン」を使う人は、ほとんどが持ち上げてテレビに向けてしまう。しかし、「おき楽リモコン」に慣れてしまうと、普通のリモコンも置いたまま操作をしようとしてテレビを操作できず、一瞬焦るようになるのだとか。人間って、一度楽をするとそれが当たり前になってしまうんですね

30年以上にわたりリモコンが赤外線を使い続けている理由とは



子どものころに祖父の家にあったテレビリモコン。手元でダイヤルをガチャガチャと回すタイプで、よく見るとテレビと長い線でつながってたな~。

そう、昭和30年代のリモコンは無線ではなく有線だったのだ。その後、昭和40年代半ばに少しの間だけ登場したのが超音波リモコン。なんだかカッコイイが、食器がぶつかる音や鍵を掛ける音などで誤作動を起こすことが多く、地味にフェードアウト。

そして、昭和50年代に現在でも主流の赤外線方式が登場する。これ以降、送信方式は赤外線が定着し、リモコンの進化はユーザーインターフェース向上へとシフトしていく。

とはいえ、普段から当たり前のように使っているので、形やボタンの位置などをじっくりと眺めることがなく、ユーザーインターフェースが向上しているといわれてもピンとこない。最新のリモコンのトレンドとはどのようなものなのだろう。ソニーでリモコン開発に携わる木原雅之さんに話を聞いた。

「ボタンが少なく、そして大きくなってきていますね。日常的に使うものなので、使いやすさを追求した結果だと思います。弊社で一番売れているものは、でかボタンシリーズと呼ばれるタイプ。ボタンが大きくて押しやすく、形は手にフィットして落としにくくなっています。高齢者が増えていることとも無関係ではないですね。あとは、ボタン面を裏側にして表面を金属の筒にしたような、一見リモコンに見えないスタイリッシュなものもラインアップに加えています。家電がスマートになっているのにあわせて、リモコンもカッコイイものを使いたいというお客さまがお買い求めになっていますね」

ほとんどのAV機器や家電にはリモコンが付属しているが、それは最大公約数を狙って開発されたもの。使いづらいと感じたり、デザイン性を求めたりする人は、別途リモコンを購入するらしい。

最高級モデルの別売りリモコンになると、テレビ、DVD、衛星放送など最大10台に対応。照明機器やエアコン類のリモコン信号を読み込ませて記憶させる学習機能まで付いている。

しかし、インターフェースは進化しているのに、なぜリモコンの赤外線だけは進化しないのか。無線LANやBluetoothなど障害物の影響を受けない無線方式があるのに。

「まず、世の中の機器類のほとんどが赤外線リモコンなので、別の規格にすると過去の製品との互換性が取れなくなるんです。別売りのリモコンだとこれは致命的です。あと、赤外線LEDは消費電力が少ないのもメリット。無線方式によっては消費電力が大きかったり、即時性に優れないものがあります。リモコンは乾電池を入れてせめて1年くらいは動かないとAV機器用のリモコンとしては失格です」

そんな中、赤外線を使わないリモコンのニュースが。それがブラビアの一部機種に採用されている「おき楽リモコン」。いったいどのようなリモコンなのか、ソニーでAV機器に付属するリモコンを開発している勝山明さんに話を聞いた。

「これは赤外線ではなく、IEEE 802.15.4という方式の電波を使ったリモコンなんです。テレビに方向を定めて操作する必要もないし、広範囲にわたって使用できるので離れた場所からも操作ができます。この方式は、Bluetoothや無線LANなどに比べて消費電力が少ないこともあり、リモコンに向いていたんです。さらに、電波を使うことで赤外線とは比べものにならない情報量を送信することができます。これによって、Edyを使った電子マネー決済ができるFeliCaポートを搭載することができました。これまで、映像配信サービスなどで有料コンテンツを視聴するためには、クレジットカード番号をテレビのリモコンで入力する必要がありました。おき楽リモコンなら、FeliCaポートにEdyをかざすだけで有料コンテンツを購入することができます」

電波方式のリモコンは30年来続いた赤外線リモコンとその機能や操作性を根底から変えてしまう可能性もあるんじゃないですか。

「場所や状況によっては大きく変わるのではないでしょうか。一般的な例え話ですが、キッチンだったら、両手がふさがっていてもチャンネルが変えられるように、音声認識などが便利だろうし、テレビの機能がさらに進化すれば、カーソルを操作できるようなポインティングデバイスが採用されるかもしれません」

もしかすると、未来は頭の中で念じるだけで、様々な機器類が操作できる世の中になるのかもしれません。ん、そうなるとチャンネル争いが、さながらエスパー同士の戦いのようになっちゃたりして。 デジタルギアを思いのままに操る、陰の実力者であるリモコン。
実はお国柄があるようで、ヨーロッパはデザインや機器類との一体感、
アメリカはボタンの多さや、頑丈さなどの質感、
そして日本は細かい使い勝手にこだわるのだとか。

確かに、ここ最近のリモコンは数多くのボタンを排して、代わりにカーソルキーを設置。
テレビ本体でさまざまなメニューを選べるようにしています。
ボタン数を減らすことで、使い勝手を向上させているのですね。

ボタンが少ないながらも、配置する場所には壮絶なる戦いが。
例えばソニーの場合は、右上が一等地で必ず電源ボタン、
使いやすい真ん中にカーソルキーを配置するなど、
メーカーごとにいろいろとこだわりがあるようです。

家にあるリモコンを並べてよーく見てみると、なかなか面白い法則を見つけられるかもしれません。

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