半径3メートルの身近なデジタル

第7回 医療×デジタルでもっと長生きできる?

2009.09.02 WED

半径3メートルの身近なデジタル


小腸は胃の下、大腸の上という位置にあり、これまでの内視鏡では小腸の奥まで届きにくかったため「体内の暗黒大陸」とも呼ばれていた。カプセル型内視鏡の開発で、小腸全体が手軽に観察できるようになった(※実際のカプセルにはロゴは入っていません)

リアル「ミクロの決死圏」が実現!?カプセル・カメラが腸内をすみずみまで撮影



仕事柄、新商品のプレスリリースのチェックを欠かさないようにしているのだが、ちょうど一年前の2008年9月10日にひときわ目を引いたものがあった。

オリンパスメディカルシステムズが、日本メーカーで初めて、国内での小腸用カプセル型内視鏡の製造販売承認を受けたというものだ。

カプセル型内視鏡とはその名の通り、カプセルタイプの内視鏡。外観は風邪薬やサプリなどのカプセル剤そのものだが、飲み込むだけで小腸の写真を撮ってくれるとのこと。

写真を撮るということは、当然カメラもライトもついているはず。でも、詳しい仕組みがよくわからない。ということでオリンパスへ実物を見せてもらいに行ってきた。

「大きさは外径11mm、長さ26mm。自動調光が可能な6つのLED照明に高解像度CCD、バッテリーと無線送信装置を搭載しています。動力はなく、蠕動(ぜんどう)運動を利用して小腸内を移動して撮影を行います。最大のメリットは、カプセルを飲み込むだけなので、管状の通常内視鏡を使うよりも、患者さんにとって体への負担が少ないということです。カプセルを飲み込んで1~2時間後には、普通に日常生活を送れますよ」(オリンパス 広報担当 村上晋一郎さん)

蠕動運動を利用って、それだと撮り逃してしまう個所が出てくるような。

「カメラの視野角が145度と超広角なんです。加えて、蠕動(ぜんどう)運動でカプセルがゆっくりと前進、後退を繰り返して移動しながら1秒間に2枚のスピードで撮影しています。ご使用いただいている先生方からは撮り逃しはほとんどないとのご評価を頂いています。最終的には、約8時間かけて約6万枚の写真を撮ることになりますね」

6万枚の画像って、この小さいカプセルの中に、そんな容量の記憶メモリが?

「いいえ、画像を記録するのはカプセルではありません。患者さんには受信装置を身につけてもらい、カプセル本体から無線で飛ばした画像データを蓄積させていきます。蓄積された画像データは、専用のソフトを使って専門医が解析します」
カプセルは外径11mm、長さ26mm。実際に手に取ってみると、ビタミン剤などのカプセル型サプリよりも少しだけ大きい印象を受ける
ちなみにこのソフト、約6万枚の写真を効率的に、かつ正確に見るために、前画像に対して違いが大きい画像だけを一覧表示したり、出血部の赤色を検知して表示するなどの機能があるのだとか。

「現在は患部を見つけるだけですが、将来的にはカプセル型内視鏡で治療までできるように研究をしています」

もしかすると、カプセルにアームがついて、そのアームが患部の切除を行うなんて、『ミクロの決死圏』的な医療を受けられる日も遠くないのかも。

最後に、みんな気になっているであろう事実を直撃。飲み込んだカプセル型内視鏡は、最終的には便とともに排泄されるのだが、再利用されるのだろうか?

「よく聞かれるのですが、カプセル型内視鏡は使い捨てです。回収キットがあるので、それを使いトイレで回収します。作り方によっては、部品交換や完全滅菌もできると思いますが、やはり次に飲む人の気持ちの問題もあるでしょうし」

なんだかもったいない気もするけれど、これで安心して検査が受けられそうだ。
東芝メディカルシステムズのArea Detector CT“Aquilion ONE”(アクイリオン ワン)は1回転で最大160mmの範囲を0.5mmスライス厚で、同時に320枚を撮影可能なX線CT装置

医療のIT・デジタル化は画像診断と電子カルテがキモ



以前、バイクで事故に巻き込まれて、病院でレントゲンを撮ったことがある。撮影後、診察室に呼ばれたのだが、そこには蛍光灯ボードではなく、液晶ディスプレイに映ったレントゲン写真が。聞くと、最近はレントゲンはデジタル撮影が一般的になっているのだとか。

これだけ、世の中にデジタルグッズがあふれているのだから、医療現場のデジタル化が進んでいても不思議ではないのだが、あまり病院に行かないだけに「レントゲンがデジタル!」とビックリした。

医療現場におけるIT・デジタルはどう進化しているのか。『日経メディカル』の千田敏之編集長に話を聞いた。

「実は、医療分野のデジタル化は、20年以上前から始まっています。医療機器には最先端の技術が導入されるので、比較的早かったんですよ。例えばCTは、体の周囲にX線を回転させながら照射して、それをコンピューターで計算して輪切り状の断面画像にします。これは1970年代後半から存在していますね。最近はX 線ではなく、核磁気共鳴現象を測定して画像化するMRIも断層撮影のもう一つの技術として一般化しています。CTもMRIもパソコンの処理速度も格段に上がったことで、心臓や大腸を瞬時に立体像として表示することができるようになりました」

この技術により、心臓カテーテルや大腸内視鏡のように直接体内に入れる器具を使わずとも、検査できるケースが出てきたとのこと。

「デジタル化の大きなメリットの一つは、患者の体に負担をかけずに病状を調べることができるようになったこと。もう一つは、デジタルデータにすることで、保存や共有が簡単になったことですね」

撮影したデジタルデータは、アナログ写真のようにかさばることもなければ、経年劣化もない(希にエラーによるデータ破損の可能性はある)。また、専門病院への転院などのときにも情報共有が簡単で、地域医療の充実にも一役買っているのだとか。
Area Detector CT“Aquilion ONE”(アクイリオン ワン)で撮影した心臓。一回転で撮影をして立体的に表示している
「撮影したデータを大きな病院にすぐに送って診断してもらうことができるので、遠隔地医療などでも役に立っています。これらの連携をさらに加速させるのが電子カルテです」

電子カルテとは、病状や経過などを記したカルテをパソコンで管理するシステム。撮影したデジタルデータのレントゲン写真やCT画像なども一緒に管理できる。

「まだ一般的ではありませんが、開示可能なデータをネットワーク上にアップして、患者本人が自宅などからアクセスして診療情報を見ることができるサービスを提供する医療機関も登場しています」

医療現場における2大IT・デジタルは、画像診断の進化と電子カルテによる地域・病院間での連携の進化とのこと。

将来的には、飲み込むときにオエッとなる胃カメラや、肛門からカメラを入れる大腸内視鏡を使わなくても検査ができて、そのデータを全国、全世界の病院ですぐに見ることができる世の中になるのかもしれないな。 普段、ちょっとした病気や健康診断などで病院に行かない筆者。
正直、バイク事故に遭わなければ、医療現場のデジタル化が
ここまで進んでいることを知らないままだっただろう。

調べてみると、様々な機器類がデジタル化されている。
音量コントロールや録音と再生ができるデジタル聴診器、
無線でデータが飛ばされていて、ナースステーションで
逐一モニターできる病室の心電図モニター。
さらに、レーザー技術を使ったメスや、脳から出る呼吸の指令を解析して、
最適な呼吸量を調整する人工呼吸機など。

AED(自動体外式除細動器)に至っては、音声で指示を出してくれるので、
起動から心拍計測、診断、電気ショックまでを素人でも行うことができる。

医療技術は日進月歩というけれど、コンピューターの進化にともない、
デジタル化も加速度的に進歩しているとのこと。
とはいえ、病気にはなりたくないけれどね。

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト