宇宙のナゾを解明するシリーズ

第2回 宇宙の端っこはどうなってるのか?

2009.10.20 TUE

宇宙のナゾを解明するシリーズ


観測可能な宇宙の広さは半径470億光年。その先には、さらに広大な宇宙が広がっていて、今なお膨張し続けているのです! Credit: NASA, ESA, and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration

宇宙よ、お前はどんだけ広いのか?



ビッグバンからこっち、宇宙はどうやら現在も膨張を続けているらしい。太陽系の直径が最大1光年(10兆km)で、我々の天の川銀河の直径は10万光年。銀河が集まると銀河団になって、銀河団が集まったのが超銀河団。銀河や銀河団、超銀河団が集まった宇宙の大規模構造になると、そのサイズは数億光年にもなるとか。広さ的にもう十分じゃね? とも思うわけですけど、とにかく宇宙は広がりたがり屋さんのようです。『宇宙 その始まりから終わりへ』の著者であり、名古屋大学大学院理科学研究科の杉山 直教授に話を伺いました。実際どんだけ広いんですかね、宇宙。

「まず、観測可能な宇宙と実際の宇宙を分けて考える必要があります。一般に我々が宇宙というときは、前者のことをいいます。この観測可能な宇宙(可視宇宙)は半径約470億光年といわれています」

ん? ちょっと待ってくださいよ。宇宙の誕生は137億年前ですよね。なんで137億光年じゃないんですか?470億光年ってことは、宇宙は光速を超えるスピードで膨張してるってことですか? 確かアインシュタイン的には光の速度を超えたくないな~とかなんとか言ってたような。

「物体の運動が光速を超えることはできませんが、空間そのものの膨張は光速を超えることができるんです。こう考えてください。立ち止まっているあなたに向かって恋人が歩いてきます。ところが彼女は動く歩道に乗っていて、その歩道は彼女の進行方向に対して逆方向に動いている。すると彼女の見た目の速度は、実際に歩いている速度よりも遅くなり、なかなかあなたにはたどり着きませんよね。場合によっては2人の距離は徐々に遠ざかっていくこともあるでしょう」

ダハーッ! どこ歩いてんだオレの彼女は! まぁ、考えてみたら彼女そのものがボクにはいませんけどね!

「宇宙でも同じことがいえるんです。宇宙は光を超える速度で膨張しています。すると光は見た目の距離よりもずっと時間をかけて移動することになる。現在地球で観測できる最も古い光は137億年前、宇宙誕生の38万年後に放たれたものです。しかし、当時の宇宙は今の1100分の1の大きさでした。当時にしたら、4300万光年の距離を旅しようとしたら、137億年もかかり、その間に距離が470億光年に拡大してしまったというわけです。つまり、この光が放たれた空間は宇宙の膨張によって、現在は470億光年も彼方にあるんです」

なるほど。いちばん古い光を放った天体がいま470億光年先にあるということは、宇宙の半径は470億光年ってことでファイナルアンサーですかね?

「この半径470億光年の球を観測可能な宇宙、球の表面を粒子的地平面と呼びます。この面の内側には数千億以上もの銀河があるんですよ。しかし、これはあくまでも我々の観測可能な宇宙の限界面にすぎず、その先にはまだまだ広大な空間が広がっていると考えられているんです」

う~ん、数千億以上ってもうどうでもよくなってきました。それにしても宇宙ってなんでそんなに広がりたがるんですかね? 必死すぎてちょっと引くんですけど。

「宇宙には膨張を加速させる何かがあふれていると考えられています。これをダークエネルギーと呼んでいます。宇宙の始まりにあったこのエネルギーがビッグバンを引き起こしたと考えられていますし、また、現在の宇宙の膨張を加速させていることも最近わかってきました」

あぁ、それならボクも知ってます。ダークサイドに引き込まれて、悪の道に染まるっていう例のエネルギーのことですね。コーホーっつって。

「違います。ダークエネルギーとは検出できないエネルギー、つまり未知のエネルギーという意味。残念ながら、その正体はまだよくわかっていないんです。どうも、真空自身がもつエネルギーではないかと疑われてはいますが。」

あの~素朴な疑問ですけど、いくらなんでもそんなに膨張しちゃって大丈夫なんスか? コンドームだって割れるときは割れますからね。

「宇宙の膨張が徐々に遅くなっている限りは大丈夫です。しかし、観測で現在の宇宙の膨張は刻一刻と速くなっていることがわかってきました。この状態をインフレーションと呼ぶのですが、これでも宇宙の空間が壊れることは普通はないと思っています。しかし、あくまで仮説ですが、加速がさらに加速する、いわばハイパーインフレーションといった状態になると、大変なことになります。この場合には、最終的には宇宙は膨張に耐えられなくなり、空間がバラバラに引き裂かれてしまいます。これをビッグリップと呼んでいます。もし、ビッグリップが起こると、銀河系や太陽系、地球はもちろん、我々の体も原子ごとバラバラになってしまうんです。ただし、あくまで可能性のひとつで、今のところ観測的な証拠はありませんけどね」

とにかく宇宙はとんでもないスピードでいまも膨張し続けてるということなんですね。それでもボクは知りたいんです。宇宙の果てになにがあるのかを!
実は、宇宙は象が支えていて、その端っこは滝のように流れ落ちているのかも知れない。ないか! イラスト/鈴木麻子

宇宙は確かに膨張しているしかし宇宙に果てはない?



観測可能な宇宙の広さは半径470億光年。しかも、その先にはまだまだ広大な宇宙が広がっていて、ダークエネルギーなる謎の力によって、いまもハンパない速さで速度を速めながら膨張し続けているとか。となるとやはり気になるのは「宇宙の端っこはどうなってるのか?」。なんとかそこらへん科学の力で解明してもらえませんかね? そこで、『宇宙 その始まりから終わりへ』の著者であり、名古屋大学大学院理科学研究科の杉山 直先生に話を伺いました。

「結論から言うと、私は宇宙に空間の断崖絶壁のような果てはないと考えています。現在の宇宙論は相対性理論をもとに考えますが、相対性理論で宇宙を考えるときには、宇宙はどこも同じ空間で、特別な場所は存在しないという宇宙原理を仮定します。あくまで仮定ですが、その結果導かれる宇宙のモデルは、現在の宇宙の様子をとてもうまく記述するものです。さて、宇宙原理を簡単に言うと、地球や他の天体がいま宇宙全体のなかでどの位置にあるのかを示すことはできない、つまり特別な場所は存在しないということ。当然、中心や端という特別な場所も存在しません。そこから2つの可能性が導き出されます。ひとつは宇宙が無限に広がっているという可能性、もうひとつは、宇宙空間は周期的、つまりループしているという可能性です」

宇宙が膨張していることはわかっているのに、そこに中心も果てもないってなんだか禅問答みたい。ループしてるってのはどういうことですか?

「地球を西にずっと歩いていけば、東から出てきて最後は元の場所にたどり着きますよね。これと同じようなことで、もし宇宙空間がループしていたら、ある場所から放たれた光が宇宙を一周して別の場所から現れる、ということです。この場合、一見異なる2つの天体が実は同じ天体の異なる時代の姿だった、という不思議なことも起こりえます」

するとこういうことですか? ワクワクしながら望遠鏡で宇宙の果てを覗いてみたら、そこには自分の間抜けな後ろ姿があってガックリ、みたいな? ソレ面白すぎるんですけど!

「残念ながら、観測では宇宙がループしている証拠はまだ見つかっていないので、もしループしているとしても、宇宙の1周は、少なくとも現在の宇宙の大きさ470億光年よりは長そうです。いずれにせよ、どちらの説でも、相対性理論では宇宙に果ては存在しないわけです。しかし、これはあくまで仮説です。実際には、本当に果てがないか、どうしても観測で確認する必要があります。しかし、残念ながら、現在の宇宙の膨張は加速しているために、地球から遠く離れた天体は、近くの天体より速く遠ざかっていて、ある範囲を超えると遠ざかる速度が光速を越えてしまい、地球まで光が届かなくなるために観測ができなくなります。この境界面をハッブル半径といいますが、もしも将来、宇宙の膨張速度がゆるやかになって光速を下回れば、ハッブル半径が広がって宇宙の果てについてもわかるようになるかもしれません」

ずいぶん先の話なんでしょうね。えぇ、わかります。

「また、宇宙の外側には我々の宇宙とは物理法則が異なる宇宙があるという、マルチバース説があります。この説では物理法則さえ異なる他宇宙間は互いに干渉することはなさそうですが、もし2つの宇宙が重なり合う空間があるとすれば、そこは想像を絶するおかしなことになっているでしょうね」

なんと! 異なる2つの宇宙がぶつかり合うと! そこにあるのはやはり互いの存在をかけた意地ですか!? やがて2つの宇宙はハイタッチしてひとつになりますか!?

「それは知りませんけど。こんなことを言っている研究者もいます。私たちの宇宙の空間は3次元です。時間を合わせて4次元なのですが、この4次元の宇宙が、さらに高い次元、たとえば5次元の時間・空間の中に浮かんでいると考えるのです。想像が難しければ、2次元に住む平らな生物を考えてください。この生物にとっては、2次元の平面がすべてです。でもこの平面が3次元の私たちから見れば、球の表面だったりするわけです。この5次元の世界には、私たちの空間以外にも、他の空間が浮かんでいるかもしれません。二つの空間の衝突が、宇宙の始まり、ビッグバンを引き起こすのでは、と想像している研究者もいるのです。SF顔負けですよね」

なんと! 僕らとは別の次元が存在するなんて! あのそっちに行けないんですかね?

「まだ、検出に成功はしていませんが、将来的には重力波という空間のさざ波を用いれば連絡できるとも考えられています」

はは~ん。物理学者は「宇宙に果てはない」なんて言っておきながら、実はコッソリ宇宙の果てに興味津々ってことですね! このあまのじゃく~! 過去の宇宙の姿から、宇宙の果てが解明されることを熱望します! 古代エジプト時代、人類が宇宙を観測し始めてからこっち、
宇宙の姿はずいぶんはっきりとわかってきているようです。
今回の取材で、少なくともこの宇宙が巨大な象に支えられてるわけでも、
端っこが滝になってるわけでもない、ということはわかりました。

ともあれ壮大すぎる宇宙の果てについては
いつの時代も人々の想像力をかき立ててきたんでしょうね。

これからも不思議すぎる宇宙のナゾに体当たりでぶつかります!
気になることや調査してほしいことがあったら、
いつでもお便りプリーズ!

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