写真はもはや“証拠”にならず…?

「画像修整」を見抜くソフトの威力

2013.01.04 FRI


写真の「証拠能力」は低下し、もはや「絵」のようなものと思ったほうが良いのかも
「証拠写真」という言葉があるように、写真は真実を写し取るメディアとして信頼されてきた。しかし昨今、その信頼は揺らいでいる。デジカメ写真なら、加工も修整も自由自在にできるからだ。

もちろん写真の加工や修整は今に始まったことではない。モデルの全身写真に著名人の首から上だけを重ねて体型をよく見せるような合成は、19世紀の昔から政治やジャーナリズムの世界で繰り返されてきた。

だが、フィルムからデジタルになって決定的に変わったのは、画像処理ソフトひとつあれば、アマチュアでも高度な加工・修整ができてしまうこと。クルマのドアにあるへこみを消すことも、目尻のシワを目立たなくすることも朝飯前で、そうした偽造を見抜くことは素人目にはほぼ不可能だ。

無論、たいていの画像加工・修整は取るに足らないものである。我々の生活に悪影響を及ぼすわけではないし、問題視するほどの話でもない。だが、「写真=真実を写し取ったもの」という“刷り込み”が我々にある以上、それを逆手にとって悪用する輩が出てこないとも限らない。

そんな「写真の信憑性」をめぐる問題に取り組んでいる企業がアメリカにある。Fourandsix Technologiesというスタートアップ(ベンチャー企業)で、この9月に製品第1弾となるFourMatchをリリースした。これはAdobe Photoshop用の拡張機能ソフトで、jpeg画像に加工の痕跡があるかどうかを判別できるという。

判定の仕組みはこうだ。jpegファイルには、撮影したデジカメのシグネチャー(メーカー名/型番)が付されている。しかし、ソフトウェアで何らかの修正がなされると、シグネチャーが変更される。それを基準に加工の有無を診断するわけだ。FourMatchにはデジカメ製品と画像処理ソフトについての7万件以上ものデータベースが組み込まれており、画像サイズ、圧縮、サムネイル、メタデータの4項目についてオリジナルとの差異を判定し、加工や修整に使われた可能性のあるソフト名を表示してくれる。

従来、写真の合成を見抜くには、影の向きの不自然さに着目するなど専門的知識が不可欠だった。が、FourMatchなら専門家の判断に頼らずとも、自動的にソフトが判定してくれる。これは大きい。

ただし問題は、サイトの掲載スペースに合わせたトリミングなど、悪意のない加工まで“疑わしいもの”と判定されてしまうことだ。当然のことながら、ソフトは「画像加工・修整の有無」は判別できても、その狙いまで判断することはできない。画像加工があったとして、悪意ある“ねつ造”なのか、取るに足らない“お化粧”なのか、判断できるのは人間だけだ。

さらに、画像加工・修整の有無を見極めたいというニーズは、そもそもどんな場面なのか?…問題の本質は、このソフトがどんな場面で威力を発揮するのか、使い道が想定しにくい点にある。Fourandsix社は「法廷での証拠写真の鑑定」を想定用途の第一に挙げているが、現状で価値を見いだせるのは、確かにそれくらいかもしれない。

おまけにFourMatchは890ドルもするし、Photoshop(こちらも高いことで有名)がなければ使えない。当面はプロユースが中心になるだろう。

しかし、FourMatchはあくまで第1弾だ。実際、Fourandsix社はさらなる開発に取り組んでいる。共同創立者で大学教授でもあるハニー・ファリド氏には、人物写真に特化して被写体の肌つやや輪郭がPhotoshopで修整されたことを8割の精度で突き止めるソフトを開発するなどの実績もある。そうしたノウハウも取り入れることで、今後の製品はどんどん賢くなっていくだろう。今後の進展に期待したい。
(待兼 音二郎)

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