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LVMHがエルメス買収を断念か

2013.06.05 WED

世界最大のラグジュアリーブランド帝国LVMHは、株式約22%を保有する仏高級ブランドのエルメス株の売却の選択肢もあることが明らかになった。2010年秋から始まった買収合戦は現在はこう着状態で実質的に休戦中。しかし、注目された戦いは、「ブランドマフィア」LVMH側が、打つ手のないまま終戦する可能性も出てきた。

■複数の金融機関を使い悟られないように株取得

5月31日にAMF(金融市場庁)による株式取得の過程においての不正の有無についての調査が行われ、米WSJによると、LVMHの副社長ピエール・ゴード氏が、売却の可能性について「可能性として否定するものではない」と、短いながらも今後について語ったという。また、不正はまったくないと否定した。

仏では企業の株式を保有するにあたっては、5%、10%、15%と節目での保有事実の公表を求められている。

LVMHは2010年秋に、4.9%を保有した時点で、複数の仏投資銀行を使ってデリバティブ、オプションなどで株式を取得する手を使ったとされている。複数の金融機関を間に介在させることで、見えない攻撃をしかけてきたのだった。そして、現在は22%超保有するまでにいたっている。エルメスファミリーは73%のため、かなり買い進んでいることになる。

エルメスはこうした手法を非難し、AMFに告訴をしていた。一方のLVMH側も正式に抗議する声明を発表していた。ただ、AMFから罰金1000万ユーロを勧告されており、ブランドイメージにとっては、好ましくない結果を招きそうだ。

■ラガーフェルドなどアルノーアレルギー多数

実家の不動産・建設業を継いだアルノー氏だが、欧州のブランド業界に米国式の資本論理を持ち込んだことは今更説明するまでもない。カール・ラガーフェルド氏、トム・フォード氏ら大御所デザイナーをはじめ、ブランド業界には、アルノー氏の手法を嫌う人は多い。

クリスチャン・ディオールを皮切りに、次々と半ば力づくでブランドを傘下に納めていったのは周知のとおり。グッチを巡ってのPPRとの買収合戦では、アルノーだけには買わすまいとするPPRとグッチが共闘し、買収はならなかった。

ピアニストの妻を持ち、芸術への造詣が深いアルノー氏だが、ビジネスには厳しく恐れられている。店舗を訪れる際は事前通告なしで、定期的に訪問するのだというが、幹部、現場は常にそうした緊張を強いられているそうだ。

とにかくブランドのM&Aにこだわるのは、規模拡大というよりも、時間で醸成されたブランド価値を買うという側面が強い。ブランドにはそれだけの金銭的な価値があるということを世界一わかっている面もある。

あらゆる主要ブランドを収めたLVMHだけに、残る大物上場ブランドはエルメス、バーバリー。この2社が最後のターゲットだと見られていた。

■最後の大仕事?

2011年にはブルガリの買収には成功したが、それは両者の合意によるものだった。外堀を埋めれば、戦い慣れていないエルメスは降参すると考えていたのかもしれないが、皆が思いだしたのが、アルノーアレルギーだった。

エルメス株の大量保有が明らかになった際には、「フランス文化を守るため」と近付いて批判をかわそうとしたが、一部は崩したものの、エルメス一族の団結を呼んで買収は前に進んでいない。

今年64歳を迎えたアルノー氏。近年はすでに、長女デルフィン氏が傘下の各ブランドに目を光らせており、禅譲することは時間の問題とも見られている。一家の資産は290億ドルで、フランスではナンバー1だ。

最後の大仕事はエルメス買収か、バーバリー買収かとも言われたてきが、可能性は一つ狭まりそうだ。あるいは、新たなターゲットを物色するのだろうか。

記事提供元/YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア)

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