満員電車の落とし穴

痴漢冤罪で仕事に影響…賠償は?

2013.07.12 FRI


都心では多くの路線で「女性専用車両」が導入されているとはいえ、この手のトラブルはいまだ多い 写真提供/PIXTA
電車通勤をするビジネスマンにとって、脅威となるのが「痴漢冤罪」。自分は何もやっていないのに痴漢呼ばわりされ、会社に知れ渡って職場での居心地が悪くなり、仕事もうまくいかなくなってしまった…。万が一そんな事態に巻き込まれてしまった場合、損害賠償を求めることは可能なのでしょうか? また、その場合は「どのような損害を」「誰を相手に」訴えればよいのでしょうか?

まず、何を損害とするか、については以下4つが考えられます。

(A)その場で間違えられたことによる精神的な損害
(B)仕事場での居心地が悪くなったことによる精神的損害
(C)精神的ストレスからくる仕事のミス等を原因とする減給処分等の補填
(D)退職せざるを得なくなった場合の逸失利益等

また、相手方の可能性としては以下3つが考えられます。

(1)痴漢だと間違えた女性
(2)痴漢の真犯人
(3)会社に対してその事実を触れ回った人物

では、以上のうち、誰に対してどのようなことを請求できるのでしょうか?

(1)痴漢だと間違えた女性に対して
その女性がわざと間違えたようなケースでもない限り、損害賠償を請求するのは困難です。満員電車ですから、間違えても仕方ないと判断される可能性が高いでしょう。それに、なんといっても被害者ですから。

(2)痴漢の真犯人
心情的には、「お前のせいだ!」と言いたいところですが、損害との関係でいうと、認められたとしても「(A)その場で間違えられたことによる精神的な損害」止まり…ではないかと思われます。
そもそも、損害賠償が認められるためには、「行為」と「損害」との因果関係を立証しなければなりません。つまり、真犯人の痴漢行為により、会社での居心地が悪くなって仕事がうまくいかなくなった…ということを証明しなければならないのです。しかし、すでに冤罪であることは明らかになっているわけですから、その因果関係の立証はなかなか難しいのではないかと思われます。

(3)会社に対してその事実を触れ回った人物
この人物を特定できるなら、B、C、Dを請求したいところです。ただ、Cの仕事のミスについては、結局ミスをしたのは自分ですから、責任をすべて押し付けることはできません。また、Dの退職についても、自発的な退職による逸失利益を全額賠償せよ…と求めるのは困難です。当人が噂話の範囲で話していただけなら、責任を追及するのは難しいでしょう。したがって、この場合も、Bの精神的損害が認められるかどうか、という話になります。

つまり痴漢に間違えられた場合、それによる損害を他人に賠償させるのは、きわめて難しいのが現実です。満員電車に乗った場合は、疑わしい行動をとらない、手を上に上げる…といった対策をとることをお勧めします。

それでも痴漢に間違えられてしまった場合は、どうするか? その場合は、名刺を置いてすぐに立ち去ることです。駅長室に連れて行かれ、そのまま逮捕・勾留ということになってしまうと、冤罪の危険性が非常に高まります。

痴漢事件は物証が乏しくなりがちなため、被害者の証言が非常に重視される傾向にあります。被害者が現場で「この人です!」と言っているとき、これを覆すのが難しいのは、皆さんも想像いただけるのではないでしょうか。とにもかくにも、相手のペースに巻き込まれないようにすることが大切です。(弁護士法人アディーレ法律事務所/刈谷龍太弁護士)

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