中国が時速1000kmのリニアを開発…で思う

乗り物の速度はどこまで速くなる?

2013.09.10 TUE


自動車では、速度制限なしのアウトバーンがあるドイツで高速を出せるタイプが製造されている。技術的には最高記録レベルまで可能だが、操作性と安全性を踏まえて最高時速250kmまでの制限がある。高速試験での記録は、乗り物そのものだけでなく、気温や湿度などすべての条件がそろった時のもの。安定性や操作性に問題があり、実用性には欠けているという
今年5月、中国が2020年をメドに時速1000kmで走行する真空リニアを開発すると発表した。時速1000kmということは、日本でいえば東京・新大阪間を約30分で走行する驚異的なスピード。思えば、新幹線も開業から40年で時速100kmも速くなった。科学の発展が続けば、ボクら人類は、もっと速く移動できるようになるのでは?

「真空状態で止まることが可能になれば、理論上はまだまだ速くなるでしょう。ただし、乗り物としての実用性を考えると話は別です」(東京大学生産技術研究所教授・須田義大さん)

では、実用的な乗り物の速度の限界はどうやって決まるんですか?

「速度の限界は、物理的限界・工学的限界の2つから決まります。物理的限界は、例えば空気抵抗に凌駕するだけのエネルギー供給の問題。工学的限界は、高速走行でいかに安定性を保つかということや、ブレーキ。いくら高速で走っても止まれなければ意味がないので、速度はブレーキ性能にも左右されるんです」

現在、我々が日常的に乗っている乗り物の最高速度は、自動車が時速約200km、鉄道が時速320km、飛行機が時速1000km前後。レース用の自動車や戦闘機ではもっと速いものもあるけれど、交通に供される乗り物としては、これが乗り物の速度の限界に近いというのだ。でも、先ほど挙げたような課題をクリアすればもっと速くなるのでは?

「もちろんありえます。真空リニアの発想は、空気抵抗をなくして物理的限界をクリアしようとするものだし、浮上式リニアも同様に摩擦という物理的限界に挑戦したもの。ですが、速度の限界がどこかという問題は科学的な要因以上に社会的・実用的な要因の方が大きく影響しているんですよ」

社会的な要因というのは、具体的にはどういうこと?

「騒音問題や環境問題、コストなどです。例えば、超音速の乗り物を実現する際には、音速以上で発生するソニックブームが問題になります。地上で超音速を出せば、周囲の建物などは破壊されてしまいますし、超音速旅客機のコンコルドは、ソニックブーム回避のために通常旅客機の2倍の高度を飛ばざるを得ず、非常に高価になった。こうしたことからすると、時速1000km以上の乗り物はあまり実用的ではないようです。また、自動車も速くなりすぎると人間がコントロールできなくなってしまうので、現在の速度が限界でしょう」

ちなみに、中国が開発する真空リニア、以前日本でも同じ発想があったが、必要コストが膨大になることもあり、実際の開発には至らなかった。こうした分野の研究は、実用性を踏まえて進められることが一般的。純粋に速度を追求するのは難しいようだ。さて、中国の真空リニア、この先どうなる?
(鼠入昌史/Office Ti+)

※この記事は2010年11月に取材・掲載した記事です

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