家事イケメンのトリセツ

洗剤を知的に使い分けるポイントは?

2013.12.12 THU

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家の中の汚れと、洗剤成分の対応表。○よりも◎の方がより汚れ除去の効果が高く、—は効果がないことを示している。頑固な油汚れに効く洗剤の裏にアルカリ性と書いてあるのは、こういう理由があったのだ!

汚れに合わせた成分調整で、ピンポイントでピカピカに!



「“汚れ”といっても、いくつもの種類があって、場所によって内容が大きく異なるんですよ」と教えてくれたのは、花王で住居用洗剤の研究開発に携わる岡野哲也さんと伊藤将嗣さん。もう少し詳しく教えてもらえますか?

「キッチンは、焦げ付きや熱で変化したしつこい油汚れが中心。お風呂は石けんカスやカビなど、トイレはし尿・尿石などが汚れの主な成分です。リビングは手垢などの皮脂汚れが多いですね。洗剤が細分化しているのは、それぞれの汚れに合わせて成分が調整されているからなんです」(岡野さん)

例えば、焦げ付きには汚れを削り取る“研磨剤”。熱で変化した油(変性油)には、汚れを分解する力が強い“アルカリ剤”や、汚れを溶かす“溶剤”。また、石けんカスやし尿・尿石には、カルシウムやマグネシウムを溶かす“酸剤”や、結合を弱くする“キレート剤”というように、汚れによって得意な成分があるのだという。

「これらの成分で汚れを分解したり、浮き上がらせたりするのと同時に、“界面活性剤”を組み合わせることで、キレイに洗い流すんです」(伊藤さん)

実は、この界面活性剤こそが、汚れを落とす万能プレーヤー。住居用洗剤に限らず、洗濯用洗剤や食器用洗剤、はたまた、石けんやボディソープ、シャンプーなど、ありとあらゆる場所で「汚れ落とし」に威力を発揮しているのだ。

「界面活性剤とは、ひとつの分子の中に、水になじみやすい“親水性”と、油になじみやすい“親油性”の、相反する性質を併せ持った不思議な物質です。普通は、水と油を同じ容器に入れると分離しますよね。しかし、界面活性剤を入れると、混ざり合うんですよ。簡単に説明すると、水になじむ部分が水と握手、油になじむ部分が油と握手して、水と油のあいだを界面活性剤がつないでくれているんです。これを、乳化といいます」(伊藤さん)

ちなみに、マヨネーズをつくるとき、酢と油に卵黄を加えるが、この卵黄が界面活性剤の役割を果たして、水と油を混ぜ合わせているのだとか。ただし、食品では、界面活性剤とはいわずに、乳化剤というそうだ。しかし、油と水、両方になじみやすい性質が、なぜ汚れ落としの役に立つのだろうか?
マッチ棒のようなかたちをした界面活性剤の分子モデル。水の中では、黄色い部分が油にくっついて、青い部分が水となじむことで、油を取り囲むようなイメージ。これにより、水と油が混ざり合い(均一に分散する)、汚れを洗い流すことができるのだ
「非常に簡略化した説明ですが、汚れの主成分は油であることが多く、界面活性剤はその油と結びついて汚れを取り囲みます。そこに水をかけると、界面活性剤は水とも結びついて、汚れを取り囲んだまま水に流されていくという仕組みです」(岡野さん)

また、界面活性剤は、乳化作用以外に、湿潤作用や浸透作用、起泡作用、分散作用など、さまざまな効果を持っている。住居用や洗濯用、食器用の洗剤、ボディソープ、シャンプーなどに使われている界面活性剤は、汚れの特徴や使う場所に合わせて成分を細かく調整し、どの作用を最も際立たせるかが考えられているという。さらにいえば、住居用洗剤のなかでも、用途や場所によって界面活性剤の成分は異なり、際立たせる作用も異なるのだとか。

「海外では、どの場所もひとつの洗剤で掃除する製品が好まれます。これほど洗剤が細分化しているのは日本だけでしょう」と語る岡野さん。

実は、昔は花王も住宅用洗剤は数えるほどしかなかったのだが、「より汚れを落としてキレイにしたい」「汚れだけを落として素材を傷めないようしたい」と研究するうちに、場所や汚れによって洗剤を変えるのが最も合理的だという結論に至ったのだとか。結果、キレイ好きな国民性も相まって、細分化された洗剤のニーズは高まり、今に至るというわけだ。また、そのように別々の目的で作られた洗剤を混ぜて使うのは絶対にやめて欲しいとのこと。“まぜるな危険”など、製品に書いてある注意書きをよく読んで正しい使い方を心がけよう。

適材適所とは、洗剤のためにあるような言葉であることがわかり、実にスッキリ! 普段何気なく使っている洗剤に隠されていた、化学的アプローチ、というと大げさかもしれないが、汚れの性質を理解して、洗剤を使い分けてみると、ちょっと知的な感じがしないだろうか? でも、ウンチクだけ述べて、肝心の手を動かさないと、奥さんに叱られることになるのでご注意を!

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