身体にまつわる都市伝説 第182回

動体視力は鍛えることできるか?

2014.01.13 MON

身体にまつわる都市伝説


目の機能が“筋トレ”で鍛えられるのは事実。しかし、競技に合わせた動体視力のトレーニング法を考える必要がある 写真提供/PIXTA
昔、野球漫画『ドカベン』のなかで、急行電車の車窓から外を眺め、高速で通り過ぎる駅の名前を読み取るトレーニングが描かれたことがある。当時は多くの子供たちがこの真似をしたし、今でもスポーツ漫画からアイドルの歌にまで出てくる有名なトレーニング法だ。

動いているものを識別する「動体視力」は、球技や格闘技をはじめ、あらゆるスポーツで重要な力だ。でも、動体視力というのは、本当に漫画のように鍛えられるものなのだろうか? これまで多くのプロボクサーを育ててきた、北澤ボクシングジムの北澤公徳会長に聞いた。

「眼球を支える筋肉の機能を高めて、物体を認識しやすくするという意味であれば、トレーニングによって向上させたり、衰えを防いだりすることは可能でしょう。ただし、そのようなトレーニングを積むことが、たとえばボクサーのディフェンス技術向上に役立つかといえば、それは疑問です」

動体視力とひとくちにいっても、複数の種類がある。北澤氏によれば、たとえば自分に向かってまっすぐ飛んでくるパンチを認識する場合と、視界を横切るような動きを認識する場合では、眼球の運動はまったく異なるのだという。

「正面からまっすぐ向かってくるものをとらえる場合、眼球は動かず、いかに素早く焦点を合わせるかという運動になります。一方、上下左右の動きを捉える場合には、眼球自体を素早く動かす運動になります。ボクシングの場合は、両方の対応を複雑に迫られることになりますね。つまり、ボクシングの場合でいえば、電車のなかから看板を読み取る練習よりも、スパーリングと呼ばれる実戦練習を多く積んだ方が、目を鍛えるうえでは効率的といえます」

つまり、その競技の動作にいかに目を対応させるかが重要ということ。これは他の競技でも同様だろう。

「それに、ボクサーにしても、じつはパンチを目で見てかわしているのではありません。肩の動きなど、予備動作に反応してよけているケースがほとんどなんですよ」

目の筋肉を鍛えておくに越したことはないとも北澤氏は語るが、そのトレーニングによって漫画みたいにスポーツの能力が向上する望みは薄そうだ。
(友清 哲)

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