「ねじれの発想力」で差をつけろ! 第9回

スマホをケータイに「戻す」アプリ

2014.04.18 FRI


「Android au」の専用アプリ「かんたんメニュー」の表示画面。左が最初に現れるトップ画面、右が「便利」をタップすると切り替わる次の画面 写真提供:KDDI
「スマートフォンは確かに便利。でも本音を言うと、長年慣れ親しんできた以前のケータイ(フィーチャーフォン)の方がやっぱり使いやすい」

「おもしろがっていろんなアプリを次々とダウンロードしていったら、いつのまにか画面はゴチャゴチャ、もうわけわかんない混乱状態。どうにかして!」

「しょっちゅう使うアプリって案外限られているよね。結局のところ、普段は電話とメールとカメラ、後はせいぜいナビやワンセグがあれば十分じゃない?」

周囲の人たちに後れを取るまいとスマホに買い換えたものの、「なかなか使いこなせない」と内心焦っている方、結構いるんじゃないだろうか。実は、オヤジ世代の筆者もその1人なんですが……。そんなスマホ初心者やシニア層にお勧めしたい優れモノのアプリがある。KDDIがauのAndroid搭載機種用に提供している「かんたんメニュー」という無料アプリだ。

設定は至って簡単。「au Market」 からこのアプリをダウンロードして「常にこの操作で使用する」にチェックを入れ、「かんたんメニュー」をタップすると瞬時にホーム画面が切り替わる。現れるのは「電話」「メール」「カメラ」「インターネット」「便利」「地図・ナビ」の計6個のどでかいアイコン。要するに、一番よく使う機能に絞って、その操作ボタンを画面いっぱいに大きく表示するようにしたのだ。この後の操作は通常のスマホ画面と同じで、使いたいアイコンをタップすればよい。

6つの“巨大アイコン”の下には、1、2、3の丸数字が並ぶ。これがもう1つの売り。これはNTTドコモの「らくらくフォン」やauの「かんたんケータイ」などのシニア向けケータイに採用されているワンタッチキーと同様の機能をスマホに取り入れたもの。例えば「1」には自宅、「2」には会社といった具合に、それぞれの丸数字によく連絡する相手先を登録しておけば、数字をタップするだけで電話やメールができる仕掛けだ。

「いくらなんでも、他にも使いたい機能があるぞ」という人も心配ご無用。右側2段目の「便利」アイコンをタップすると、“2ページ目”の画面に切り替わって、「電話帳」「テレビ」「電卓」「赤外線」など、8つのアイコンが現れる。これまた、ケータイにもあったおなじみの機能ばかりだ。

さらに、「他のアプリが使いたい」「新しいアプリを取り込みたい」という場合は、2ページ目の「その他」アイコンをタップすればよい。すると、3ページ目に切り替わって「アプリの追加」や「アプリを使う」というアイコンが表示される。筆者が特に「こいつは便利だ!」と思ったのは、「アプリを使う」。これをタップすると、ダウンロード済みのアプリの名称がアイウエオ順・ABC順にそれぞれのアイコンとともに大きな文字で縦一列に一覧表示されるのだ。アプリの数が増えれば増えるほど、画面をきちんと整理しておかないと「あのアプリ、どこにあったっけ?」とイライラする場面が多くなる。その点、一覧表示なら名前をスクロールして探せばよいので、「かえってこの方が見つけやすい」と感じた(欲を言えば、ショートカットを作ったホームページも一覧表示されるとより嬉しいんだけど……)。

この「かんたんメニュー」アプリ、「ねじれの発想力」のお手本のような秀逸なアイデアと感心するばかり。なにしろ、アプリという最もスマホらしい最新の機能を使って、わざわざ“昔に戻す”というか、旧式のケータイに近い使い勝手を実現しちゃったんだから!

「一番腐心したのは、操作の導線をいかに整理するかでした」と、KDDIパーソナルプロダクト企画部の天野太郎課長補佐は開発のポイントを説明してくれた。「TVゲームで遊んできた若い世代と違って、シニア層にITが苦手な人が多いのは、自分がした操作と画面に現れる操作結果がうまく結びつかないからなんです。実は、フィーチャーフォンでは液晶画面と操作ボタンが離れていることが使いにくさの最大の原因になっていて、とりわけ『十字キーがわかりにくい』というお客様が多いんですよ」。その点、スマホのタッチパネル操作は、画面を直接操作でき、その結果も同じところに現れるので、むしろ「シニア層には操作しやすい」という調査結果が出ているそうだ。一般に「シニアはタッチパネル操作が苦手」と思われがちだが、実はそうでもないのだ。

以上の分析から大胆に言い切れば、シニアがスマホに後ずさりするのは「初めて体験するタッチパネル操作が難しいから」ではなく、「アレコレやってくれる機能が多過ぎて、どこをどう操作したらよいのか、こんがらがってしまうから」ということになる。そこで、KDDIは考えた。「スマホの多機能性を訴えることはとりあえず後回しにして、タッチパネル操作の便利さ・快適さをより前面に出す工夫をすれば、シニア層にも喜んでもらえるはず」。こうして、大きなアイコンによって操作手順をわかりやすく“交通整理”してあげる「かんたんメニュー」が生まれたのだ。

で、このアプリ、シニア層だけでなく、IT慣れしているはずのR25世代にも結構ダウンロードされているとか。シニアにわかりやすい機能はどの世代にもわかりやすいはずだから、便利に活用している若者が多いとしても不思議ではない。でも実際には、飲み会や合コンの場で「こんなアプリもあるんだよ」と会話のネタとして“活用”している人も多いんじゃないかしら……。かくいう筆者も取材先とか、夜の街とか、同窓会とか、いろんなところで話題づくりに使っているので、あまりエラソーなことは言えないけど。
(高嶋健夫)

※「ねじれの発想力」とは…
難題への対応を迫られる場面で、一見すると無関係に思われる事象を結びつけ“あさっての方向”から解決策を考え出す発想力のこと。「ねじれの位置」にある2本の直線が最接近する1点で、高速道路のジャンクションで路線を乗り換えるように、大胆かつ柔軟に発想を切り替えるのが成功のコツ。

※この記事は2012年4月に取材・掲載した記事です

  • 著者プロフィール

    高嶋健夫(たかしま・たけお) 本屋のせがれに生まれ、新聞記者、雑誌記者兼編集者、書籍編集者をひと渡り経験して、現在はビジネス分野を専門とするフリージャーナリスト。R25・35世代と比較しながら団塊世代の攻略法を説いた『R60マーケティング』(日本経済新聞出版社)など著書多数

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