あなたのそばにカビがいる

世界でいちばん“怖いカビ”は?

2014.06.14 SAT


コクシジオイデスが原因とわかるまで、現地では感染が局地的な地域に限られるため「渓谷熱」「砂漠リウマチ」と呼ぶしかない謎の風土病だったという。渡辺先生によると、今のところ原因不明となっている病気の原因がカビである可能性もあるという ※写真はコクシジオイデスの体内形態 画像提供:千葉大学真菌医学研究センター 渡辺哲
日本に住む限り、完全に縁を切るわけにはいかなそうなのがカビ。なかには吸いこむと脳炎に似た症状を起こすこともある恐ろしい奴がいるとか…。ところがカビによる感染症に詳しい、千葉大学真菌医学研究センターの渡辺哲先生によれば海外にはさらに怖いカビがいるようです。

「現在、海外の特定地域に生息するカビによる輸入真菌症という感染症が危険視されています。健康な人でもかかるのが特徴で、例えば国内で感染報告が増えている『ヒストプラズマ』はインフルエンザのような症状から内臓の病変などに進み、死亡に至るケースもある怖いカビ。これは南北アメリカや東南アジア、アフリカなどの洞窟にすむコウモリの糞に含まれていて、TV番組撮影のため南米の洞窟に入った日本の制作クルーが感染したこともあります」

めったにないとは思いますが、海外の冒険ツアー計画時には注意すべき話ですね。では専門家の立場から見てズバリ「一番怖いカビ」はなんですか?

「それは『コクシジオイデス』ですね。米国疾病管理センター(CDC)ではバイオテロに使用されうる危険な病原微生物としてリストアップされていますし、日本の感染症法でも真菌のなかで唯一『3種』に指定され、保管・移動が厳しく制限されるもっとも危険な真菌に分類されています。感染力がきわめて強く、元気な人がごく少量の菌を吸い込んだだけであっても感染の危険があります。吸い込むとまず肺に影響を及ぼし、さらに全身に播種した場合の死亡率は非常に高いといわれています。病原を特定するために、患者から取り出したカビを検査するのですが、その際の取り扱いも難しくとにかく怖いカビですね」

やはりジメジメとした地域で感染するんでしょうか?

「それがこのカビが生息するのは、カリフォルニアやアリゾナなど米西南部の比較的乾燥している土地なんです。なぜか白色人種はすぐ免疫ができるのか耐性があり、感染しても風邪程度、ひどくなっても死亡に至ることは少ないようです。しかし黄色人種を含めた有色人種にはかかりやすく、また感染すれば重症化、死亡の確率は白色人種にくらべて高いですね。日本ではこれまで70例近くの報告があり、そのほとんどが米国での感染と思われます。気付かない間に感染していたという例もありますので、それらの地域へ渡航した後には症状のあるなしにかかわらず、渡航地域を告げて検診を受けることをおすすめします」

このカビの感染者も国内で増加傾向にあるとのこと。ただ、我々が一般的な生活を営むうえでは、過度に心配する必要はないようです。渡辺先生によれば「人体の中ではこのカビはヒトに感染できる形になれませんから感染者から他人へうつることはありません」とのことですので。しかし、海外渡航時には日本に生息しないカビによる健康被害があるかもしれないということを、あらためて肝に銘じるべきかもしれません。

(宇都宮 雅之)

※この記事は2012年6月に取材・掲載した記事です

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