自分のせいの遅刻じゃないのに…

電車遅延で商談パー 損害賠償は?

2014.06.17 TUE


人身事故、混雑、車両トラブルなど、都市部の満員電車に遅延はつきものだが… 写真提供/PIXTA
車両故障で電車が遅延。まずい、遅刻する!――都市部のビジネスマンにはありがちな話でしょう。でも、会社に遅刻する程度ならまだしも、大事な商談の日に遅れてしまったら…。いかに電車の遅延が理由でも、「遅刻するような相手に仕事は任せられない」と、決まりかけていた商談がパーになってしまうこともあり得ますよね。万が一そんな不運に遭遇してしまったら、あなたはどう思うでしょう?

「商談がパーになったのは鉄道会社の責任。受注するはずだった仕事の利益分を損害賠償しろ!」――そんなふうに思う人もいるかもしれません。では、こうした訴えは裁判で認められるのでしょうか?

結論から言うと、電車の遅延による損害賠償は、原則として認められません。

そもそも「損害賠償」とは、法律上、契約の相手方が契約内容を守らない場合、それによって生じた損害を支払う必要がある、ということです。電車の場合に置き換えてみると、お客さんと鉄道会社の間では、切符を買った時点で「旅客運送契約」という契約が成立しています。この契約は、「ある地点からある地点までお客さんを運ぶこと」を内容とします。

しかしこの契約で、鉄道会社は原則として「目的地に到着する時間」までは保障していません。到着時間が遅くならないよう最善の努力をすれば、結果的に遅延しても契約違反にはならないのです。

「え!時間は保障していないの!?」と驚く人もいるかもしれませんが、大都市では少し電車が遅れただけで何万人にも影響が出ます。遅延するたびにすべての人の“損害”を鉄道会社が補償するなんて、現実的に不可能です。

そのため、鉄道会社が「わざと遅れた(まずあり得ませんが)」など特段の事情がない限り、損害賠償請求するのは困難です。過去、遅延によって鉄道会社や航空会社が訴えられたケースはありますが、鉄道会社や航空会社が責任を負ったケースはありません。

判例でも、「鉄道会社は不特定多数のお客さんを有料で輸送するのだから、もし鉄道会社が列車の遅延について責任を負えば、損害賠償として支払う額は、膨大な額になると考えられる。結果として、大量の旅客を安い価格で運送することが事業上困難となってしまうため、列車の遅延について、原則として鉄道会社は損害賠償責任を負わない」とされています。

やはり大事な商談がある日は、余裕をもって移動するのがビジネスマンの心得というべきでしょう。皆さん、くれぐれもお気をつけて。
(佐藤大和弁護士/弁護士法人 アディーレ法律事務所)

※この記事は2013年6月に取材・掲載した記事です

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