あなたのそばにカビがいる!/第10回

カビを使ってかつお節が旨くなる?

2014.07.03 THU


1度目のカビ付け“一番カビ”の工程を終え、びっしりとカビに覆われたかつお節。このカビを一度払い落し、またカビをつける“二番カビ”の工程を経て「枯れ節」となる 画像提供:枕崎水産加工業協同組合
暑さで食欲が減退する夏。つるっと食べられるそうめんに助けられた覚えのある方も多いのではないでしょうか? 氷水でしめられた冷たい麺の食味もさることながら、おつゆから漂ってくるかつお節の豊潤な香りをかげば、下降曲線をたどっていた食欲も思わず急上昇しちゃいますよね。

そんな食欲刺激食品、かつお節作りには意外なことにカビが役立っているのだとか。かつお節生産量日本一、枕崎水産加工業協同組合の中釜章智さんに、まずは作り方から聞いてみました。

「かつお節を作る工程には大まかにいうとまず“煮る”、火であぶり乾かす“焙乾(ばいかん)”という工程があります。煮た状態のものは『なまり節』、2~3週間焙乾したものが『荒節』となり、この段階で形を整えたものが『裸節』として売られます。さらに、この裸節に2度カビ付けしたものが『枯れ節』になります。より多くの工程を経るため、裸節より枯れ節の方が当然値段も高くなります」

しかし、焙乾しただけでもかつお節になるのにわざわざカビさせるのはどういった理由からなのでしょうか?

「カビが『裸節』の中心部まで菌糸を伸ばし残っている水分を吸収するので、より乾燥が進み保存性が高まります。さらにこのカビには脂肪、たんぱく質を分解するという大事な役割もあるんですよ。脂肪を分解することでダシをとったときにアクや濁りがなくなり、たんぱく質の分解によって独特の芳香と旨みを作るんです。また、優良カビを生やすことで、不良カビの発生も防ぐ効果もあります。ちなみに4度のカビ付けを経たものが『本枯れ節』。世界一硬い食品ともいわれます」

日本が誇るダシ文化にもカビは大きく影響しているんですね。しかし、そもそも魚をカビさせるなんて発想はどこから生まれたんでしょう。

「かつお節の誕生については諸説あるので、代表的なものをひとつ紹介します。かつお節の発祥は紀州(和歌山)と言われており、初めは『裸節』の状態で流通していたようで、あるとき、たまたまカビが付いてしまったものからカビだけ取り除いて食べたらおいしかった、そんなことからはじまったというもの。西日本ではカビが付くまえに消費者の手に渡ったので、カビ付け前の『裸節』が多く使われ、東日本ではカビ付けされた『枯れ節』を使うという文化にその名残があると考えられています」

東西で好まれる味の違いに、カビが関係しているというのは興味深い話ですね。

かつお節を一本買うことはなかなかないだろうけれど、パックの削り節ならその機会も多いはず。その際の参考になるのが、『かつお削りぶし』は荒節を削ったもので、『かつおかれぶし削りぶし』は本枯れ節を使ったものであること。ちょっとの違いで大違い、これからは意識して選んでみようっと。

(宇都宮 雅之)

※この記事は2012年7月に取材・掲載した記事です

  • 4度目のカビ付けを終えた枯れ節は、「本枯れ節」と呼ばれる。カビは生き続けているため、保存状態が良ければさらに熟成が進むという。

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