過去の汚点をネットから消せる?

ネット上で「忘れられる権利」とは

2014.07.09 WED


“オープンであること”はインターネットの重要な特性だが、「一度でも間違ったことをすれば、その記録がネット上に一生残り続ける」という状況は、よく考えるとかなり恐ろしいのかもしれない
今年1月、欧州委員会がインターネット上における個人情報保護のために、「忘れられる権利」という新しい概念を盛り込んだ法案をまとめたことが話題になった。これは簡単に言えば、ユーザーがネット事業者に対して、自分のプライバシーに関する情報の削除を要求できる権利のことだ。たとえば、酔った勢いでアップした自分の「ハメを外しすぎた写真」を別の人物がダウンロードし、別のサーバーに再アップロードした場合、本人には削除する術がない。そこで「忘れられる権利」を行使することで、そのサーバーを管理しているネット事業者に直接削除を要求できるようにしようというわけだ。

「人間は失敗をする生き物である以上、誰だって今更知られたくない過去のひとつやふたつはあるものです。友人は昔話を忘れてくれますが、コンピュータは絶対に忘れません。現実的な問題として、過去のプライバシーがネット上に残り続けていることで苦しんでいる人、社会的にネガティブな影響を受けている人は多数存在しています。現在の法律はこうした状況に対応しきれておらず、出るべくして出た法案だと言えますね」

と語るのは、名誉毀損やプライバシー侵害などの問題に詳しい弁護士の落合洋司氏だ。

「とはいえ、実際に運用するにあたっては削除の正当性が求められるはず。どんなケースでも個人のプライバシーが最優先されるわけではなく、たとえば何らかの事件性があったり、報道目的で掲載されている情報など、削除しない方が公共の利益にかなうと判断されるような事例もありえます。その線引きをどうするかが問われるでしょうね」

たとえば社会的影響力がある“公人”と無名の市民では、保護されるべきプライバシーの範囲にも差が出てくる。どこまでを“忘れられる権利”の対象とするかは難しい問題だ。ところでこの法案、日本のネット社会にどんな影響を与えるだろうか?

「法制度は国によって変わりますが、ネットは国を越えてつながっている以上、影響を受けることは必至です。昔から欧州には“個人の権利は最大限に尊重するべき”という風土があり、今の日本における個人情報保護の考え方も、そもそもは欧州から輸入してきたもの。ネット上におけるプライバシーについても、今後ますます議論が進められるでしょう」

欧州では2年後から「忘れられる権利」を含む法案が施行される見込みだ。その実効性や運用法などについては不明点もあるが、GoogleやFacebookといった巨大Webサービスが目指してきた“すべての情報をあまさずネットで網羅する”という方向性と真っ向から対立することになるのは間違いなさそうだ。
(呉 琢磨)

※この記事は2012年7月に取材・掲載した記事です

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