同じものを食べてもお腹を壊したり壊さなかったり…

免疫力の差はどうやって決まる?

2014.09.11 THU


「幼稚園に通っていた子供は、小学校に入ってから感染症にかかりにくくなる傾向があります。たくさんの人がいる環境で育つことで病原体に触れる機会が増え、免疫能力の経験値を積めるわけです」(河本さん)とのこと。お子さんがいる人は要チェック! 写真提供/GettyImages
海外旅行で現地の飲食物を飲み食いし、お腹を壊したことがある人は少なくないだろう。しかし、現地の人は同じものを食べても平気な様子。身近なところでは、よく風邪をひく人もいれば、毎年冬でも元気に過ごす人もいる。この差はいったい…?

「それは、病原体に対する免疫能力の差です」と語るのは、理化学研究所の免疫発生研究チームのリーダー、河本宏さん。河本さんによれば、免疫能力の差を決める要因は大きく3つ。

「ひとつはリンパ球や白血球の数など、病原体を攻撃する細胞の数の差。これは先天的な個人差もありますし、ストレスや老化なども影響します」

リンパ球や白血球の数を増やすことは難しいが、食生活や生活習慣を整えることで極力下げないようにすることはできるという。

「2つめは後天的に獲得した抵抗力の差。一度、免疫でやっつけた病原体には、その後感染しにくくなりますし、予防接種でも抵抗力をつけられます。いわば免疫の経験値の差ですね」

海外旅行の例でいえば、現地の人はその地域特有の細菌やウイルスに対して抵抗力を持っていることが多い。そのため飲食物にそれらの病原体が混入していても、お腹を壊しにくい。逆に、旅行客にとっては未知の病原体なのでお腹を壊しやすいのだ。

「3つめは保有するMHC分子の種類による差。体内の細胞が何らかの病原体に感染するとリンパ球がそれに対し攻撃をしかけるのですが、その際、感染細胞に攻撃用の目印を設置するのがMHC分子です。このMHC分子は数百種類あり、種類ごとに対応できる病原体が異なります。さらに数百種の中から1人あたり12種類を保有するのですが、どの種類を持つかは遺伝によって個人差があります。これがリンパ球による攻撃のしやすさの差、つまり免疫能力の差として現れるのです」

このように、保有するMHC分子の種類に多様性があるため、人類全体が1種類の病原体にやられるような事態を避けられるのだそうだ。

では、リンパ球などを最大限に維持し、ワクチンなどでたくさんの病気に抵抗力をつけ、全種類のMHC分子を保有していれば、病原体に対して無敵になれる?

「それは難しいですね。数百種類のMHC分子を保有しても、リンパ球に伝える目印の情報が薄まり、かえって免疫力は落ちるでしょう。それに病原体側も進化するので、油断は禁物です」

やはり、そんなうまい話はないか。せめて免疫能力を下げないよう、日頃から規則正しい生活やバランスのよい食事を心がけたいものだ。
(糸数康文/Office Ti+)

※この記事は2011年11月に取材・掲載した記事です

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