牛肉と鶏肉は「刺身」があるのに…

なぜ豚肉は生で食べてはいけない?

2014.10.19 SUN


「多頭飼育」の現場はこんな感じ。ザワザワとひしめき合っている豚さんたちには申し訳ないけれど、こうした飼育により、食肉として安く提供されているんですね 写真提供/gettyimages
ステーキはレアがうまいし、肉刺しと焼酎の組み合わせって最高!…という人、少なくないのでは? 筆者もナマ派なんですけど、ふと気になったのが豚肉の刺身がないこと。昔から「豚肉はよく火を通さなければいけない」というけれど、いったいなぜなんだろう?

その答えを探るべくお話を聞いたのは、畜産の衛生に詳しい、東京農業大学の村上覚史教授。さっそくですが、なぜ“豚肉はダメ”なんでしょう?

「現在はほとんど見られませんが、かつては、トキソプラズマという原虫に感染している豚が多く見られました。トキソプラズマは、妊娠中の女性が感染すると、胎児の健康状態に悪影響を与えたり、悪くすると流産に至る場合もあります。そのためとくに“ダメ”な印象を与えたのだと思います。しかし、そもそも保健所は牛肉や鶏肉も含め、すべての家畜の生食を避けるよう呼びかけていますよ」

え!? 他の肉も生で食べちゃダメなんですか?

「鶏の生肉はカンピロバクターやサルモネラなどに汚染されやすく、毎年、食中毒患者が出ています。牛肉は比較的安全という印象がありますが、特定の食肉処理場のものでなければ、生食はできません。食用となる家畜は多頭飼育が主流で、満員電車のように狭い空間で飼われています。ストレスの多い飼育環境のせいで病気になりやすくなっているんです。このことから家畜の健康を考え、“物”扱いせず“生き物”として扱おうという動きが始まっています」

最近では、母豚から帝王切開で取り出した子豚を清潔な環境で育てた「SPF豚」が人気ですけど、こちらなら生食できるのでは?

「いえ、日本SPF豚協会も“生で食べるべきではない”としています。“SPF豚=無菌豚”という誤解がありますが、豚の生食でサルモネラ、カンピロバクター、レンサ球菌、丹毒菌などの感染リスクを除くことはできません。“健康的に育てられた、美味しい豚肉”ととらえるべきですね」

ナマ派の筆者としてはやや残念なご指摘です…。肉を生食するなら、こういった注意点があることを知っておこう!
(安藤大智/blueprint)

※この記事は2011年01月に取材・掲載した記事です

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