生還したければやってはいけないチェックリスト

冬山遭難時のNGポイント10項目

2014.12.07 SUN


ちなみに、「(冬山では)寝たら死ぬぞ」のセリフをよく聞くが、別に寝るから死ぬわけではない。怖いのは意識がなくなる(寝る)状態になってしまう低体温症の方 ※画像はイメージです 画像提供:MAS/PIXTA
いよいよスノーレジャーシーズンの到来。そこで気を付けたいのが、冬山での遭難事故。山スキーや冬山登山は危険と隣り合わせだし、ゲレンデで滑っていても、コースから外れて山中に迷い込んでしまった…なんて事故もまれにある。万が一、冬山で遭難したときのために「やってはいけないこと」のチェックリストをご紹介しよう。

〈冬山で遭難したら、やってはいけない10のこと〉
(監修:田村装備開発・長田賢治氏)

1□愚痴、不平をいう
2□食糧や水分をやたらに摂る
3□雪や山水を直接口にする
4□下ばかり見て歩く
5□歩くのが楽、という理由で分からない道を進む
6□木々や岩を同じ方向ばかりに避ける
7□日没以降に行動する
8□北側斜面を歩く
9□積雪時の稜線を歩く、またはその斜面下方で野営する
10□汗をかくほど厚着して歩く

〈解説〉
1□愚痴、不平をいう
遭難時は、すでにマイナスの状態。そこで愚痴や不平を口にすることはマイナス思考を進めてしまい、助かる望みを低下させる。絶対に助かると信じ、プラス思考で行動するのがサバイバル状況下の基本。

2□食糧や水分をやたらに摂る
遭難した際は、救助されるまでの日数が不明であり、また多大な精神的負荷にさらされていることから、生きるために「空腹を満たしたい」などの強い欲求に支配される場合があり、計画的に食糧・水分を摂取することより意識することが重要。無計画にお腹一杯に食べると食糧・水分を多く消費するだけでなく、内臓が多量のエネルギーを使用し、脳の活動に必要なエネルギーまで消費してしまう。そのため睡魔に襲われ本来必要な活動(移動や状況判断など)にも影響をきたすことから注意しなくてはならない。

3□雪や山水を直接口にする
雪や山水は必ずしも衛生的ではない。直接飲んだ場合、いっときの渇きは癒やせてもそこで腹を下せば脱水症状で余計に体の水分を失うことになる。また、雪を口にすると下がった体温をもどそうと体に蓄えたエネルギーを無駄に消費することになる。口にするなら、一度沸騰させてからにすること。

4□下ばかり見て歩く
足元への注意を怠ってはならないが、下ばかり見て歩くのはNG。けもの道の存在や、他の登山者が遭難防止のために付けた目印など重要な情報を見逃すことにもつながる。「つらいときこそ、上を向いて歩く」というのはただの精神論ではなく、遭難時に生還するための合理的な行動なのだ。

5□歩くのに楽、という理由で分からない道を歩く
裾野で迷っても、山頂で迷うことはない。山で遭難し、道を見失ったら下らずに頂上を目指して登るのが基本。登山道などに行き当たる可能性が高いからだ。ただし、冬山で山頂を目指すことは体力を著しく消耗するので、やみくもに登ることは必ずしも良いことではない。迷ったと思ったら、目印を置いて周囲50m程度を歩きまわり、できれば木に登るなどして視界を確保、自分の現在位置、目標物の存在など情報収集に努める。情報が得られなければ、その地点から標高の高い方へ進み、同様のことを繰り返す。

6□木々や岩を同じ方向ばかりに避ける
人には利き腕、利き足がある。道や目標物がなければ、本人が真っ直ぐ歩いているつもりでも、その影響でわずかずつだが進行方向がずれていく。また、立ち木や大きな岩、くぼみなどに出くわした場合も同じ方向にばかり避けて歩けば、一層のずれが生じる。進行方向を正しく維持するためには、目で見える目標を決め、前進方向を遮るものを迂回する場合は「左回りの次は右回り」といった要領で前進すること。

7□日没以降に行動する
冬山では太陽が沈み始めるとすぐ、急激に気温が低下する。気温の低下で身体の活動レベルも低下し、そのなかでの作業は余計に体力を消耗してしまう。ビバーク(野営)を行わなければならなくなった場合、その準備として風雨を避けられる場所の選定、仮小屋の設営、火起こしや食事などの時間がかかる。ビバークの決断は早めにすべき。

8□北側斜面を歩く
日本の冬は季節風が北西から吹くことから、北側斜面は気温が下がり、風が強くなる傾向がある。そのため、目的地が北の方角にない限り、太陽のあたる南斜面を移動するのが賢明。ただし、そのような場所は草木の生育がよく歩きにくいことも。体力の消耗度合も考慮した的確な判断が求められる。

9□積雪時の稜線を歩く、またはその斜面下方で野営する
風雪が稜線や頂上にぶつかると風下方向に雪庇=せっぴ(雪だまり)ができる。稜線や頂上を歩いている登山者がその場所が雪庇であるかどうかを判断することは難しく、雪庇が折れて落下するなどの事故に遭うケースがある。また雪庇が成長すると自重で崩れ、雪崩を発生させる原因にもなる。このため、積雪時の稜線の移動、雪庇の下方での野営は避けるべき。

10□汗をかくほど厚着して行動する
冬山の服装で着意すべき点は、衣類でどれだけ多くの空気の層を作るか、それをコントロールするかにある。厚着して行動すると身体の冷却能力が妨げられ、代謝量が高くなり汗を多量にかく。発汗は血中水分を低下させるため毛細血管に血液が行き渡りにくくなり、末端部分は酸欠状態になるので凍傷になりやすくなる。たとえ面倒でも、服はこまめに脱ぎ着して体温調整を行う必要がある。

遭難した際の実際の状況は様々であり、遭難者自らがその状況を十分に分析・理解し、生きていくために一番良いと思う方策を選択し続けることが肝心である。そのために以上の10項を覚えておくと良いだろう。
(文・構成:即応予備自営ライターU)

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